【アナリスト水田雅展の銘柄分析】MRTは底打ち確認して出直り本格化、中期成長力を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 医師プラットフォームを運営するMRT<6034>(東マ)の株価は、安値圏2000円近辺で底打ちを確認して出直りの動きが本格化している。15年3月期業績は増額の可能性が高く、中期成長力を評価してIPO直後の高値圏(1月高値4685円)を目指す展開だろう。

 14年12月東証マザーズ市場に新規上場した。インターネットを活用した医師プラットフォームを提供し、医師を中心とする医療人材紹介事業を主力としている。東京大学医学部附属病院の医師互助組織を母体としているため、医師視点のサービスや医師を中心とする医療分野の人材ネットワークが強みだ。

 主要サービスは、非常勤医師を紹介する外勤紹介サービス「Gaikin」、常勤医師を紹介する転職紹介サービス「career」、医局向けサービス「ネット医局」などで、13年5月には医師紹介実績が累計50万件を突破している。

 医局は教授を中心とした医師同士の相互扶助組織として存在し、各医局には数人から数百人の医師が存在している。医局は大学・診療科ごとに存在し、大学医局だけでも全国で2000以上存在している。そして医局は医師の人事業務も統制し、大学病院以外の医療機関の多くは医局の人事によって医師が供給(派遣)され運営が成り立っている。また大学病院で勤務している医師が大学病院以外で勤務することを医師間では「外勤」と呼び、医師は大学医局の指示のもとで「外勤」を行っている。

 外勤紹介サービス「Gaikin」は、非常勤を希望する医師会員と医療機関との間で、インターネット技術を活用した当社の人材紹介システムを利用して、反復継続的に自動マッチングを行うサービスだ。

 転職紹介サービス「career」は、常勤医師紹介専任スタッフが直接面談を行い、会員医師の要望を把握したうえで、求人側の医療機関と転職(常勤医師)希望の医師をマッチングするサービスだ。

 医局向けサービス「ネット医局」は、医局管理業務を支援するグループウェアを提供している。医局管理業務の効率化を推進し、当社にとっても医局単位で医師をカバーして全国的に医師会員数を増やすことが可能となる。また「Gaikin」と「ネット医局」を組み合わせることで、市中病院への医師供給という医局機能を補完する。

 国内の医師需要については、高齢化社会の進展に伴って医療ニーズが増加する一方で医師の供給不足が深刻化し、中期的に医師の売り手市場が予想されている。また医師の地域偏在という地域間格差問題が存在する一方で、医師流動化が活発になることも予想されている。このため医師紹介市場においては、インターネットの活用や、医局との関係による競争優位性の確保が重要になる。

 こうした事業環境に対して、医師会員向けに提供する情報・サービスの付加価値を高めるとともに利便性も向上させて、医師と医療機関を繋ぐ強力なネットワークを構築していることが特徴だ。

 そして中期成長戦略として、1都3県から全国へネットワークを展開し、全国大学医局へのサービス導入を目指している。またアライアンス戦略も活用してシェア拡大を推進するとともに、コンシューマー向けサービスなどの新規事業も検討している。

 15年2月には日本最大級の税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」を運営する弁護士ドットコム<6027>と業務提携した。会員登録している医師や医療機関に対して「税理士ドットコム」会員登録している税理士を紹介することでサービスを拡充する。また3月には全国展開への第一歩として、東海地区に名古屋営業所を開設した。

 今期(15年3月期)の業績(非連結)見通し(12月26日公表)は売上高が前期比14.0%増の8億30百万円、営業利益が同3.0倍の1億66百万円、経常利益が同2.2倍の1億50百万円、純利益が95百万円(前期は6百万円)としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は売上高が6億70百万円、営業利益が1億91百万円、経常利益が1億77百万円、純利益が1億12百万円だった。前年同期との比較はできないが好調に推移しているようだ。

 事業別売上高は、医師ネット紹介(非常勤医師紹介および常勤医師紹介)が6億35百万円、その他(看護師や薬剤師などの転職・アルバイト情報サイト「コメディカル」ネット紹介など)が35百万円だった。学会への参加や医師会員向けキャンペーンの効果、さらに営業増員や社内インフラ整備の効果も寄与して、医師登録件数および非常勤医師紹介件数が順調に増加している。

 そして通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高80.7%、営業利益115.1%、経常利益118.0%、純利益117.9%で、各利益は通期見通しを超過達成している。中期成長に向けた先行投資などを考慮して会社見通しを据え置いているが、通期増額の可能性が高いだろう。

 また4月1日勤務開始案件分から、外勤紹介サービス「Gaikin」の医師紹介手数料を改定(10%から20%に値上げ)する。紹介案件数増加や手数料改定効果などで来期(16年3月期)も収益拡大基調だろう。

 株価の動き(14年12月公開価格800円、初値3275円)を見ると、2月安値1988円から切り返して出直りの動きが本格化している。3月19日は2767円、20日は2920円まで急伸する場面があった。IPO後の利益確定売りが一巡し、15年3月期業績増額の可能性や16年3月期の収益拡大を評価する動きだろう。

 3月20日の終値2697円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS50円19銭で算出)は54倍近辺、実績PBR(第3四半期累計実績のBPS311円40銭で算出)は8.7倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線を突破して大幅に上伸した。安値圏2000円近辺での底打ちを確認した形だ。15年3月期業績は増額の可能性が高く、中期成長力を評価してIPO直後の高値圏(1月高値4685円)を目指す展開だろう。

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