【どう見るこの相場】難敵相手に背後のスペースを狙うインド関連株へのロングパスでW杯的な「ジャイキリ」を期待

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どう見るこの相場

 過日、7月15日に閉幕したサッカーのワールドカップ(W杯)は、番狂わせ、弱小国が強豪国を下剋上する「ジャイアント・キリング」が、続出した。優勝候補筆頭のドイツが、予選リーグの最下位で姿を消し、アルゼンチン、ポルトガル、ブラジルなどの絶対的なエースを擁する強豪国も、決勝トーナメントの早い段階で涙を飲んだ。この「ジャイキリ」の多くは、弱小国が採った徹底した「堅守速攻(ショートカウンター)」戦術がよく機能したためと分析されている。守るときにはバックスを5人以上も隙間なく配置して相手攻撃陣のペナリティ・エリア内への侵入を許さず、いったん相手ボールをカットして奪取した途端に、相手バックスの背後のスペースを狙ってロングパスをフィード(供給)して、全員が快足を飛ばして一目散に相手ゴールに迫ってフィニッシュに結び付けた結果だ。

 こんなことを書き出すと、たかがサッカーが株式投資にどんな関係があるかとお叱りを受けそうだ。ご批判は重々弁えているが、とにかく現在、東京市場が相手にしているのは、難敵、強敵なのである。株式投資でも、「ジャイキリ」が不可欠だから、W杯の「ショートカンター」戦術は大いに参考になるはずなのだ。難敵、強敵とは、もちろん不規則発言がどうにも止まらない米国のトランプ大統領である。この週末も、お膝元のFRB(連邦準備制度理事会)の政策金利引き上げにクレームをつけ、中国、EU(欧州連合)を為替操作国と非難するとともに、中国からの総輸入額の5000億ドルすべてに追加制裁関税を発動することまで言及した。

 貿易戦争に加えて、為替切り下げ戦争を宣戦布告するような強硬姿勢で、半年ぶりに1ドル=113円台の円安・ドル高となった為替相場は、再度、アッという間に1ドル=111円台の円高水準へ揺り戻された。週明け後も、7月22日まで2日間の日程で終わったG20(20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議)の共同声明や、25日開催予定のトランプ大統領とEUのユンケル欧州委員長との首脳会談などを前に、どのような不規則発言が飛び出すか、それとも軟化姿勢をチラつかせる手練手管を繰り出すか、マーケットにプラスとなるかマイナスとなるかは予断を許さない。

 マーケット自体も、足元では主力銘柄の四半期決算の発表が本格化する。貿易戦争、為替戦争のプレッシャーを前に、どのような業績進捗率、業績ガイダンスが開示されるかなお不確かだ。ここはやはりW杯と同様に慎重に守りから入る方が賢明だ。ただし、チャンスとみたら、一気にロングパスをフィードしてショートカウンターに転ずることを忘れてはならない。このロングパスの候補に浮上するのが、業界的には二番手、三番手の位置付けだが、株価的には一番人気が見込めるインド関連株である。米中貿易戦争の圏外に位置し人口が13億人を超える巨大市場を誇る同国で経済プレゼンスを高めるインド関連株にシュートして「ジャイキリ」相場を期待したい。

■インド国内シェア首位のスズキをリード役に関西ペなど候補株が続々

 インド関連の本命株は、スズキ<7269>(東1)だろう。同社は、子会社のマルチ・スズキが、インド国内のシェアの過半を占める自動車業界のトップに位置するが、米国での四輪車の製造販売事業から完全撤退して追加制裁完全とは無縁で、インドでは相次いで新工場を建設するなどインドシフトを進めている。足元でも今年7月5日に国内で新発売した新型四駆軽自動車「ジムニー」の受注が、好調な立ち上がりをみせて、今年8月2日に発表予定の今2019年3月期第1四半期(2018年4月~6月期、1Q)決算への期待を高めている。これに続くのが、同じく同国の塗料市場でトップ・シェアを握る関西ペイント<4613>(東1)で、総売上高、経常利益のうち、地域別にインド向けがそれぞれ2割、4割を占める国内に続くドル箱市場となっているが、さらに建築用塗料の増産のために建設する2つ新工場のうち、第1弾の新工場が今年中に稼働を予定している。

 このほか建設機械では、インドでのプレゼンスが比較優位にある日立建機<6305>(東1)、現地仕様のトラクターを手掛けているクボタ<6326>(東1)、「ヤクルト・レディ」が同国でも活躍しているヤクルト本社<2267>(東1)、二輪車生産台数で同国トップのホンダ<7267>(東1)、同じくデジタル一眼レフカメラ一番手のニコン<7731>(東1)、同国でバトミントンラケットの製造拠点を展開しその同国でバトミントン人気が高まっているヨネックス<7906>(東2)なども注目される。

■後発薬大国関連で医薬品株、高速鉄道プロジェクトの建設株なども浮上

 さらにインドが、世界的なジェネリック医薬品大国と呼ばれていることから医薬品株もターゲット銘柄に浮上する。明治ホールディングス<2269>(東1)、大塚ホールディング<4578>(東1)に続き、貿易事業の一環で同国から後発医薬品の原薬を輸入販売している綿半ホールディングス<3199>(東1)も該当する。同国の医薬品のEコマース大手と資本・業務提携をしたロート製薬<4527>(東1)や、医療機器の製造拠点を展開の日本光電<6849>(東1)も、見逃せない。(本紙編集長・浅妻昭治)

 もちろん、日本にとって「パッケージ型インフラ輸出」として新幹線分野で初となる高速鉄道プロジェクトに関連する銘柄も要注目となる。用地取得の遅れが報じられているが、昨年9月に開催された起工式には、安倍晋三首相も出席しており、ライバルの中国に競り勝ち総事業費が約1兆7000億円にも達するだけに、国家プロジェクトとして進展が期待される。すでに研修施設を共同事業体で受注した日本工営<1954>(東1)や、同プロジェクトの終点アーメダルート駅工区を受注した大林組<1802>(東1)に加え、日立製作所<6501>(東1)、川崎重工業<7012>(東1)、JR東日本<9020>(東1)などが、関連してくる。

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