LIFULLは急反発、18年9月期予想を減額修正だが増収増益基調に変化なし

 LIFULL<2120>(東1)は、不動産・住宅情報総合サイト「LIFULL HOME‘S」運営など不動産情報サービス事業を主力として、生活関連領域への事業展開を加速している。そしてMitula買収で成長加速を目指す。18年9月期業績予想を減額修正したが、増収増益基調に変化はなく19年9月期も収益拡大が期待される。株価は減額修正に対して一旦はネガティブ反応で年初来安値を更新したが、その後は売り一巡して急反発の展開となった。出直りを期待したい。

■不動産情報サービスが主力、生活関連領域への事業展開を加速

 17年4月ネクストがLIFULLに社名変更し、ブランド名も変更した。LIFULLは、世界中のあらゆるLIFE(暮らし、人生)をFULL(満たす)という意味の造語である。

 日本最大級の掲載件数を誇る不動産・住宅情報総合サイト「LIFULL HOME‘S」運営が主力のHOME‘S関連事業、14年買収したスペインのTrovitが展開する世界最大級のアグリケーションサイト「Trovit」運営などの海外事業、その他事業(LIFULL介護、LIFULL引越しなどの運営)を展開している。なお収益面では、不動産情報サービス事業を主力としているため、1~3月が繁忙期となる季節要因がある。

■世界一のライフデータベース&ソリューション・カンパニーを目指す

 スローガンに「世界一のライフデータベース&ソリューション・カンパニー」を掲げ、LIFULL HOME‘SやTrovitを通じて世界の不動産や暮らしに関するデータを蓄積し、先端技術を活用することで中期的な成長を目指している。

 18年1月中国最大級の不動産仲介会社HO melinkと国際不動産投資分野で業務提携、18年3月家具ベンチャーのKAMARQ(シンガポール)と業務提携、ブロックチェーン技術を活用した不動産投資プラットフォーム運営のBitOfProperty(シンガポール)に出資した。
 
 18年5月にはMitula(Mitula Group Limited)を完全子会社化するための友好的買収手続き開始合意を発表した。18年9月株式取得完了予定である。TrovitとMitulaはスペインを主要拠点としてアグリゲーションサイトを運営しているため、両社の強みを活かせる新しい組織を構築して成長を加速させる方針だ。

 18年6月には、不動産情報共有におけるブロックチェーン技術を活用したプラットフォーム商用化に向けて、全保連、ゼンリン、ネットプロテクションズ、NTTデータ経営研究所、NTTデータ・グローバル・テクノロジー・サービス・ジャパンとの共同検討開始を発表した。7月9日には台湾有数の不動産仲介会社である台湾房屋と、国際不動産投資分野における業務提携を発表した。

 なおリソース集中戦略を進めるため不採算事業のLIFULL HOME‘Sリフォームを18年9月末終了予定、LIFULL Remodelを18年終了予定、海外事業のリソースをTrovitとMitulaに集中するためLIFULL豪州とLIFULLドイツを撤退予定としている。

 また中期経営計画の定量目標(売上収益500億円台、EBITDA率20%前後)について、決算期変更に伴ってターゲットを20年3月期から20年9月期に変更した。Mitula買収に伴う業績および中期経営計画への影響は適時開示予定としている。

■国内中古住宅市場活性化への取り組みも加速

 国内では中古住宅市場活性化への取り組みも加速している。17年1月JGマーケティング(現LIFULL Social Funding)を子会社化し、不動産投融資型クラウドファンディング事業を展開している。

 民泊関連では17年6月、楽天<4755>と共同で楽天LIFULL STAYを設立、17年12月楽天LIFULL STAYが世界最大のオンライン宿泊予約サイト運営のBooking B.V.と業務提携、18年3月楽天LIFULL STAYが韓国で宿泊施設予約プラットフォームを提供するYanolja社と業務提携した。なお楽天LIFULL STAYは18年6月、民泊サイト「Vacation STAY」を開設し、予約受付を開始した。

 空き家の活用では、国土交通省の全国版空き地・空き家バンク構築運営に関するモデル事業「LIFULL HOME‘S 空き家バンク」によって、全国の空き家バンクのプラットフォーム化を目指している。また楽天LIFULL STAYと共同で空き家活用を通じた地域活性化連携協定を、17年12月岩手県釜石市、18年3月宮崎県日南市、岡山県総社市と締結している。18年6月には楽天LIFULL STAYが、世界最大級のバケーションレンタルサイト運営の米ホームアウェイ、および一般社団法人全国古民家再生協会と、古民家の認知・価値拡大、地域活性化を目指して業務提携した。

■18年9月期(12ヶ月決算)予想を減額修正だが増収増益基調に変化なし

 18年9月期(17年10月~18年9月の12ヶ月決算、IFRS、17年9月期は6ヶ月決算)連結業績予想は7月26日に減額修正した。売上収益は70億円減額して340億円、EBITDA(償却前営業利益)は8億26百万円減額して51億90百万円、営業利益は10億円減額して40億円、親会社所有者帰属純利益は6億78百万円減額して28円とした。

 Googleの検索アルゴリズム変更の影響で検索エンジン経由の集客が期初計画を下回っていることに加えて、不採算分野だったリフォーム分野の事業撤退も影響して売上収益が計画を下回る。利益についてはコスト削減効果で営業費、人件費、広告宣伝費などが期初計画を下回るが、売上収益の計画未達が影響する。

 ただし修正後の通期予想を前年同期間(16年10月~17年9月)との比較で見ると、売上収益は5.9%増収、EBITDAは32.9%増益予想となる。通期予想を減額修正したが、増益を維持する形だ。Mitula買収に伴う影響は織り込んでいない。配当予想は未定だが、配当性向20%を基準に実施する予定だ。

 なお第3四半期累計は売上収益が260億15百万円、EBITDAが44億39百万円、営業利益が36億35百万円、親会社所有者帰属純利益が22億74百万円だった。前年同期間との比較で売上収益が8.6%増収、EBITDAが56.9%増益、親会社所有者帰属純利益が2.0倍%増益だった。

 HOME‘S関連事業は顧客数の順調な増加で8.6%増収、海外事業はLIFULL Tech Vietnamの新規連結も寄与して13.1%増収、その他事業はLIFULL seniorやLIFULL SPACEの好調で13.4%増収と順調だった。

 18年9月期予想を減額修正したが増収増益基調に変化はない。そして19年9月期も収益拡大が期待される。

■株価は売り一巡して急反発

 株価は減額修正に対して一旦はネガティブ反応となり、7月27日に年初来安値を更新して614円まで下押したが、その後は売り一巡して急反発の展開となった。8月1日には758円まで上伸した。

 8月1日の終値755円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS23円59銭で算出)は約32倍、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS161円96銭で算出)は約4.7倍、時価総額は約897億円である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線を突破して基調転換の動きを強めている。出直りを期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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