【アナリスト水田雅展の銘柄分析】巴工業は15年10月期の営業損益改善や低PBRを評価して水準切り上げ

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 遠心分離機械や化学工業製品の巴工業<6309>(東1)の株価は、4日の第1四半期(11月~1月)業績発表後に乱高下したが、足元では目先的な売りが一巡して出直りの動きを強めている。15年10月期の営業損益改善見通しや0.7倍近辺の低PBRを評価して水準切り上げの展開だろう。

 遠心分離機械を中心とする機械製造販売事業、合成樹脂や化学工業薬品などを中心とする化学工業製品販売事業を2本柱として、中国・深圳ではコンパウンド加工事業も展開している。

 13年11月には、中国の連結子会社・星科工程塑料に対するテクノポリマーおよび日本カラリングの出資持分をすべて譲り受け、両社との資本・業務提携を解消して当社主導で収益立て直しを進めている。

 3月4日に発表した今期(15年10月期)第1四半期(11月~1月)の連結業績は、売上高が前年同期比5.1%増の95億72百万円、営業利益が同2.4倍の2億87百万円、経常利益が同69.2%増の4億81百万円、純利益が同45.5%増の3億83百万円だった。北米向け機械販売の好調が牽引し、営業外での為替差益計上も寄与して大幅増益だった。

 セグメント別の動向を見ると、機械製造販売事業は売上高が同26.2%増の19億48百万円で、営業利益が56百万円(前年同期は1億37百万円の赤字)だった。国内民需向け機械が減少したが、北米を中心に海外向け機械が好調に推移した。化学工業製品販売事業は売上高が同0.8%増の76億23百万円、営業利益が同10.4%減の2億30百万円だった。合成樹脂分野と化成品分野の減収、中国・深圳のコンパウンド事業の販売数量減少などで減益だった。

 通期の連結業績見通しは前回予想(12月11日公表)を据え置いて売上高が前期比4.9%増の427億円、営業利益が同43.7%増の18億30百万円、経常利益が同13.5%増の18億50百万円、純利益が同4.3%増の11億50百万円、配当予想が前期と同額の年間45円(第2四半期末22円50銭、期末22円50銭)としている。注文キャンセルによる棚卸資産評価損計上などで前期低調だった機械製造販売事業の営業損益が大幅に回復する見通しだ。

 セグメント別の計画を見ると、機械製造販売事業は北南米地域での拡販が牽引して売上高が同8.5%増の110億70百万円、営業利益が同4.1倍の6億50百万円、化学工業製品販売事業は新規市場・商材開拓などで売上高が同3.7%増の316億30百万円、営業利益が同5.8%増の11億80百万円としている。

 通期見通しに対する第1四半期の進捗率は売上高が22.4%、営業利益が15.7%、経常利益が26.0%、純利益が33.3%である。設備投資関連は第2四半期(2月~4月)と第4四半期(8月~10月)の構成比が高い収益構造を考慮すれば順調な水準と言えるだろう。円安進行メリットも寄与して経常利益と純利益は増額の可能性がありそうだ。

 13年12月に策定した中期経営計画「Target2016」では、経営目標値として16年10月期売上高475億円、営業利益25億80百万円、経常利益26億円、純利益16億円、ROE6.3%、ROA4.4%を掲げている。重点戦略としては、北米市場、南米市場、東南アジア市場を中心とする海外売上高の拡大に加えて、機械事業ではエネルギー分野への参入、化学品事業では二次電池やパワー半導体向け商材の開拓に取り組む方針だ。

 株主優待制度については、毎年10月31日現在の1単元(100株)以上保有株主に対してワイン(当社関連会社取扱商品)1本を贈呈する。

 株価の動きを見ると、第1四半期の大幅増益を好感して3月5日に1890円まで急伸する場面があったが、利益確定売りなどで急反落した。ただし足元では目先的な売りが一巡して水準切り上げの動きを強めている。

 3月24日の終値1775円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS115円25銭で算出)は15~16倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間45円で算出)は2.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS2399円53銭で算出)は0.7倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると26週移動平均線を突破した。強基調に転換した形であり、15年10月期の営業損益改善見通しや0.7倍近辺の低PBRを評価して水準切り上げの展開だろう。

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