【編集長の視点】加賀電子は続落も1Q減益転換業績を織り込み成長戦略のM&Aと中間配当の権利取りをテコに押し目買い好機
- 2018/9/11 08:15
- 編集長の視点
加賀電子<8154>(東1)は、前日10日に5円安の2106円と3営業日続落して引けた。同社株は、今年8月21日につけた年初来安値1967円から250円幅の底上げをして全般軟調相場のなかで逆行高したが、25日移動平均線を回復した目先の達成感から利益を確定する売り物が続いた。ただこの底上げは、今年8月7日に発表した今2019年3月期第1四期(2018年4月~6月期、1Q)業績の減益転換や、今期第2四半期(2018年4月~9月期、2Q)累計業績、3月通期業績の予想をなお未定としたことは織り込み済みとのコンセンサスが形成されて売られ過ぎ修正買いが続いたことによるもので、3日続落は、一時的なスピード調整にとどまり、底上げの再発進が期待できそうだ。1Q決算発表後の8月15日には、中期経営計画の成長戦略の一環としている新事業領域開拓のベンチャービジネス(VB)投資の一環として保育クラウドサービス「hugmo」を展開しているhugmo(東京都港区)への出資を発表しており、また9月相場入りとともに、今3月期配当を前期に続き年間70円と予定し、配当利回りが市場平均を上回る3%超となっていることから、中間配当の権利取りも本格化することも、支援材料となる。さらにこのM&Aでは、前日大引け後に富士通エレクトロニクス(横浜市港北区)の株式を約205億円で取得する子会社化も発表しており、成長戦略への見直しが強まろう。
――――今年11月中旬の2Q累計決算開示時に新中期計画と3月通期業績予想を同時発表――――
同社の今3月期1Q業績は、前年同期比1.2%減収、28.7%営業減益、23.8%経常減益、34.4%純益減益と減収減益転換して着地した。売り上げは、電子機器向けのEMS(生産受託)ビジネスが牽引してほぼ前年同期並みをキープしたが、同ビジネスで主要顧客の製品切り替えによる生産調整や、立ち上げ中の海外工場への先行費用などが響き減益転換した。ただ、四半期別の業績推移では、経常利益は16億7900万円と前期第4四半期(2018年1月~3月期、4Q)業績実績の16億4700万円を上回り、純利益も、同じく11億4800万円と同9億8000万円をオーバーしてプラス転換した。
今2019年3月期2Q累計・3月通期予想業績は、エレクトロニクス業界の事業環境の変化が激しく不確定要素が大きく予想業績を合理的に算定することは困難としてなお未定としたが、今年11月中旬に予定している今期2Q累計決算の開示と同時に現在、策定中の次期中期経営計画とともに通期業績予想を発表する予定である。今期通期業績については、今期を最終年度とする現中期経営計画の目標数値の売り上げ2900億円(前期比22.9%増)、経常利益100億円(同14.4%増)を達成するとしており、経常利益は、13期ぶりに過去最高を更新した前期に続く過去最高となる。
なお同社は、現中期経営計画で成長戦略の新事業領域開拓のために3年間で50億円のVB投資を推進中で、これまで医療、ヘルスケア、素材などでの出資を続けてきたが、今回は、ソフトバンクグループ<9984>(東1)が、従業員からアイデアを募集して事業化を行う新規事業提案制度で設立したhugmoに出資した。同社は、保育園や幼稚園などの保育者と家庭をつなぐコミュニケーションアプリ「hugmo」をメインサービスとして展開、厚生労働省が推進中の「保育園等におけるICT化推進等事業」の政策目標を実現することを目指している。同社への出資により加賀電子は、hugmoに各種センサーなどの提供を通じて市場創出をサポートする。
一方、2021年12月28日に100%の株式を取得する富士通エレクトロニクスの子会社化は、富士通エレクトロニクスの取扱商材や国内外の販売チャンネルを相互補完させて加賀電子の電子部品・半導体ビジネスのシェアを拡大し、加賀電子のEMS拠点網に富士通エレクトロニクスの広範な顧客網を共有してEMSビジネスの事業規模拡大などを目的しており、現在の年商の倍となる売上高5000億円級の企業グループを形成する。
――――中間配当の権利取りでまず1株純資産水準を回復させ富士通エレ子会社化がオンして年初来高値を早期奪回へ――――
株価は、2回も上方修正された前期業績や2回も増配された前期配当を歓迎して昨年10月に上場来高値3780円をつけ、今年に入っても3000円大台での堅調な推移を続けたが、相次ぐ世界同時株安に巻き込まれて下値を探り、今期予想業績を未定としたことで2500円台へ下ぶれ、今期1Qの減益転換業績発表では全般相場急落も重なり年初来安値1967円へ再調整した。同安値は、前期実績ベースのPERでは8倍台、PBRは0.7倍、配当利回りは3.55%と売られ過ぎとして米国を震源地とする貿易摩擦激化を懸念する全般軟調相場のなかで逆行高、250円幅の底上げをして25日移動平均線をクリアし、スピード調整をした。中間配当の権利取りの高まりとともにまず1株純資産(2571円)水準を回復、さらに前日大引け後に発表した富士通エレクトロニクス子会社化もオンして年初来高値3160円奪回を早めよう。(本紙編集長・浅妻昭治)