【どう見るこの相場】自民党総裁選挙のバランス感覚を参考に小型株、材料株、テーマ株への資金配分も一考余地

どう見るこの相場

 かつて兜町では、場味と需給で投資判断をするのが一般的であった。相場が底打ちした時などは「コツンと音がした」と感覚的に表現したことなどが典型である。調査マンが作成したリポートなどは、「理論家は、理路整然と曲がる」などと笑い飛ばしたものだ。しかし変われば変わるものである。いつの頃からか、その調査マンの呼び方が、アナリスト、ストラテジスト、エコノミストなどとカタカナ表記に変わり、作成するリポートも、海外投資家の投資資金を呼び込んだり、個別銘柄の株高を誘発するケースも増えているから隔世の感が強い。

 ただその理論家筋も、3連休を挟んだ前週の日経平均株価の6日続伸については、相場コメントの作成にやや手間取った印象が強い。米トランプ政権が、中国向けに制裁関税の第3弾を発動することは分かっていたし、実際に第3弾が発表された3連休最終日の17日には、トランプ大統領は、中国が報復関税に動けば中国からの輸入品の全額に制裁関税をかけるとブラフ(脅し)をかけた。米中貿易戦争のチキンレースが、ヒートアップしたからだ。株高加速を横目に、ようやくまとめられた相場コメントは、9月14日のSQ値(特別清算指数値)算出や9月中間期末が絡んだ需給要因と、9月20日に予定されていた自由民主党の総裁選挙への期待ということでほぼ落ち着いたようであった。

 今週も、前週と同様に3連休明けの火曜日から商いがスタートし、月替わりとなる10月相場に向け内外で重要イベントが目白押しとなっている。連休最終日24日の日米の閣僚級貿易協議(FFR)、26日の日米首脳会談、30日の沖縄県知事選挙、10月1日の内閣改造と続く政治日程に加え、9月24日の米中の制裁関税第3弾発動、9月25日、26日のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)を皮切りにニュージーランド、メキシコ、インドなど各国の中央銀行の金融政策決定会合も相次ぐ。米国とカナダの北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉期限は、9月末にも迫っている。
 FFRでは、自動車への追加関税は回避できるのか、日米首脳会談では、安倍晋三首相を前にトランプ大統領の不規則発言があるのかないのか、FOMCでは今年3回目の利上げが決定されて長期金利が上昇し、日米金利差拡大で円安・ドル高がさらに進むのか、何とも予測し難い。また、株式需給的には、銀行株、保険株の大幅高を演出した中間配当の権利取りが26日に終わり、9月末のお化粧買いや配当の再投資も一巡することになる。しかも週明け24日の米国市場は、ニューヨーク工業株30種平均が前週同様に反落、最高値から181ドル安してスタートした。またまた理論家筋が、相場コメントの作成に手間取ることになるかもしれないのである。

 そこで投資スタンスの参考にしたいのが、自民党の総裁選挙である。総裁選挙では、安倍晋三候補の圧勝観測が有力であったが、蓋を開けてみると、安倍候補が総裁に3選されたものの、石破茂候補も、地方票では獲得数が安倍候補を上回る県が出るなど健闘した。この「善戦」の要因は、メディアや政治評論家などのコメントによれば、「安倍一強」を敬遠し「非安倍」の必要性を訴えた党員・党友の「バランス感覚」が働いた結果と分析された。一極集中の危うさを感じ取ってより多極化、多様性(ダイバーシティ)を求めるせめてもの抵抗であった。兜町も、ここ何カ月も先物主導で日経平均株価への寄与度の高い超値がさ株一辺倒の投資スタイルで推移してきた。いわば「超値がさ株一強」である。それを総裁選挙のバランス感覚を参考に「非超値がさ株」へのアプローチも一考余地があるということである。

 現に前週の日経平均株価の6日続伸では、超値がさ株も買い物を集めたが、それ以上に株価上昇が目立ったのがメガバンクなどのバリュー株(割安株)であった。「超値がさ株一強」からの変化が兆したとも受け取れ、中間配当の権利を落としたあとに物色銘柄のバラエティが多角化する多様性相場の展開にはあと一押しである。ここでの6日続伸で一回転も二回転もした個人投資家は、それなりに元気が出てきたはずである。バリュー株以上にこのところ人気が離散していた個人投資家好みの小型株、材料株、テーマ株に出番が回ってくる可能性もあり、先取りも一考余地がありそうだ。投資資金の配分も、やはり自民党総裁選挙の安倍主流派、石破反主流派の得票比率を参考にして、主力株70%、小型株・材料株・テーマ株30%のウエートあたりからトライしてみてはどうだろうか。

■生理学・医学賞、化学賞など受賞者発表が相次ぐノーベル賞関連株をまず先取り

 多様性相場の小型株、材料株、テーマ株でまず注目したいのが、ノーベル賞関連株である。ノーベル賞は、10月1日の生理学・医学賞に始まって物理学賞、化学賞と科学系の受賞者が決定され年末12月の授賞式を迎え、株式市場では、受賞者や受賞テーマに関連する銘柄が動意付くのが恒例イベントとなっている。今年も日本人受賞者の下馬評が種々伝えられており、この関連株の先取りである。

 生理学・医学賞では、今年もプログラム細胞死の経路を解明した本庶佑京都大学名誉教授の受賞が有力視されており、同教授と従来の抗がん剤とはまったくメカニズムの異なった免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ」を開発、共同特許を取得した小野薬品工業<4528>(東1)に再脚光が当たりそうだ。また化学賞では、肝臓でのコレストロールの合成を抑制する「スタチン」の主成分を発見した遠藤章東京農工大学栄誉教授も、共同研究をした海外研究者2名が、既にノーベル賞を受賞したこともあり、候補にあがっている。コレストロール低下薬を販売しているアステラス製薬<4503>(東1)、塩野義製薬<4507>(東1)、田辺三菱製薬<4508>(東1)、第一三共<4568>(東1)が浮上することになる。

 同じく化学賞では、カーボンナノチューブを発見した飯島澄男名城大学終身教授も、下馬評にのぼっており、世界で初めてカーボンナノチューブを商品化した大陽日酸<4091>(東1)が浮上する。酸化チタン・光触媒開発で有力視されている藤嶋昭東京理科大学学長関連では、光触媒で高実績のアイシン精機<7259>(東1)に加えテイカ<4027>(東1)、石原産業<4028>(東1)、チタン工業<4098>(東1)の酸化チタン株も関連する。また受賞テーマの一つには、量子テレポーテーションが予測されており、これに関連して量子コンピューター関連株の人気再燃も想定される。このところ株価上昇が目立つブレインパット<3655>(東1)、エヌエフ回路設計<6864>(JQS)のほか、YKT<2693>(JQS)、フィックスターズ<3687>(東1)、ユビキタス<3858>(JQS)、日本ラッド<4736>(JQS)、富士通<6702>(東1)などの常連株の上値を刺激することになろう。

■内閣改造で菅関連株の格安スマホ株と国際展示会開催のEV関連株にも出番

 ノーベル賞関連株に続くのが、菅義偉官房長官関連株である。10月1日の内閣改造では、同長官の留任がほぼ間違いないと新聞辞令が出ており、同長官が、今年8月以来、再三言及している大手通信会社へのスマートフォンの通信料金引き下げが重みを増すことになる。関連して格安スマホ関連株では、仮想移動体通信事業者(MVNO)のインターネットイニシアティブ<3774>(東1)、フリービット<3843>(東1)、ベネフィットジャパン<3934>(東1)、楽天<4755>(東1)、エレコム<6750>(東1)、日本通信<9424>(東1)、日本テレホン<9425>(JQS)、スマホ向けソフトのネオス<3627>(東1)、メディアシーク<4824>(東マ)、関連部品・資材のメイコー<6787>(JQS)、NISSHA<7915>(東1)なども再び出番が回ってきそうだ。

 電気自動車(EV)関連株も、9月30日から10月3日まで世界最大級の国際電気自動車シンポジウム・展示会が、12年ぶりに日本で開催され、世界各国から200社以上が出展する予定で、FFRへの不安を乗り越えて人気化するか試してみたい。同シンポジウム・展示会に出展するメーカー本体の日産自動車<7201>(東1)、日野自動車<7205>(東1)、三菱自動車<7211>(東1)に加え、関連システムの平河ヒューテック<5821>(東1)、モリテック スチール<5986>(東1)、明電舎<6508>(東1)、日東工業<6651>(東1)、パナソニック<6752>(東1)、新電元工業<6844>(東1)、日置電機<6866>(東1)、デンソー<6902>(東1)、ニチコン<6996>(東1)などがまず注目である。

 次いで部品・部材関連のニッポン高度紙工業<3891>(JQS)、セントラル硝子<4044>(東1)、関東電化工業<4047>(東1)、田中化学研究所<4080>(JQS)、戸田工業<4100>(東1)、大泉製作所<6618>(東マ)、ダブル・スコープ<6619>(東1)、双信電機<6938>(東1)、三井ハイテック<6966>(東1)などにも出番が回ってきそうだ。さらにこの物色が、自動運転関連株、人工知能(AI)関連株まで循環するようになれば、投資資金配分のウエート・アップも考慮しなくてはならなくなりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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