Jトラストは売り一巡して反発の動き、19年3月期大幅増益予想

 Jトラスト<8508>(東2)は、銀行業を中心とする持続的な利益拡大へのステージアップを目指して事業基盤を強化している。19年3月期は国内および東南アジアの金融事業が伸長して大幅増益予想である。株価は水準を切り下げる展開だったが、売り一巡して反発の動きを強めている。出直りを期待したい。

■日本、韓国、インドネシア中心に金融事業を展開

 日本、韓国、およびインドネシアを中心とする東南アジアで、金融事業(銀行、信用保証、債権回収、クレジット・信販、その他の金融)を展開している。銀行業を中心に持続的な利益拡大へのステージアップを目指し、M&Aや債権承継などを積極活用して事業基盤を強化している。

 18年3月期のセグメント別営業収益構成比は、国内金融事業12%、韓国金融事業47%、東南アジア金融事業18%、総合エンターテインメント事業3%、不動産事業9%、投資事業10%、その他事業3%だった。

 なお19年3月期から事業セグメントを変更し、日本金融事業、韓国およびモンゴル金融事業、東南アジア金融事業、投資事業、総合エンターテインメント事業、不動産事業、その他事業とした。

 日本金融事業は日本保証、Jトラストカード、パルティール債権回収など、韓国金融事業はJT親愛貯蓄銀行、JT貯蓄銀行、JTキャピタル、TA資産管理など、東南アジアは金融事業をJトラスト銀行インドネシア、投資事業をJトラストアジアが展開している。

 18年4月JトラストアジアによるOMF社(インドネシア)の株式取得および第三者割当増資引き受け(合計出資比率60.0%)を発表、18年5月JトラストアジアによるCCI社(モンゴルのファイナンス事業会社CCI)の子会社化完了、ANZR社(カンボジア)の株式取得(出資比率55.0%)を発表した。

 OMF社(インドネシア)の株式取得に関しては18年7月、インドネシア金融庁の承認取得に時間を要しているため、当事者間で新たに締結する期限延長合意書に基づき、早期に株式取得を目指すとリリースした。また18年8月には、インドネシア金融当局による承認プロセスにおいて、既にJトラストアジアのOMF社の株主としての資格にかかる承認を取得したので、本件株式譲渡にかかる承認を残すのみとなっているとリリースした。

 なおJトラストアジアは、東南アジアにおけるリテール分野への進出を企図して販売金融事業のタイGL社に出資するとともに、タイGL社と共同でインドネシアに割賦販売金融事業のGLFI社(出資比率20%)を設立したが、17年10月タイGL社CEOである此下益司氏がタイSECから偽計および不正行為で刑事告発されたため、現在はタイGL社、此下益司氏およびGLの関連取締役に対して、刑事告発手続き、会社更生法申し立て・補償請求・賠償請求などの訴訟を提起している。

 総合エンターテインメント事業と不動産事業は子会社のKeyHolder<4712>が展開している。KeyHolderは18年3月、子会社アドアーズの全株式をワイドレジャーに譲渡してアミューズメント施設運営から撤退し、ライブ・エンターテインメント事業で新たな収益柱の構築を目指している。

■収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで変動

 収益はM&A・事業再編・不良債権処理などで大幅に変動する可能性がある。利益配分については、将来の経営環境や業界動向を総合的に勘案しながら、積極的な利益還元を図ることを基本方針としている。

■19年3月期大幅増益予想

 19年3月期連結業績(IFRS)予想は、営業収益が18年3月期比9.3%増の833億78百万円、営業利益が3.0倍の70億73百万円、親会社所有者帰属当期利益が53億18百万円(18年3月期は7億31百万円の赤字)としている。配当予想は18年3月期と同額の年間12円(第2四半期末6円、期末6円)としている。予想配当性向は23.2%となる。

 第1四半期は、営業収益が前年同期比1.0%増の178億34百万円、営業利益が75.9%減の5億93百万円、親会社所有者帰属当期利益が16.1%減の14億92百万円だった。日本および韓国が牽引して増収だが、貸倒引当金繰入額の増加や支払手数料の増加などで減益だった。

 通期は国内や東南アジアの金融事業が伸長して大幅増益予想である。韓国金融事業はIFRS第9号適用に伴う貸倒引当金繰り入れや韓国当局の規制強化等の影響で減益見込みだが、国内金融事業が堅調に推移し、東南アジア金融事業の収益も一段と改善する。投資事業におけるタイGL社関連の損失計上一巡も寄与する。

 なお9月3日には、アパート施工・管理を手掛ける不動産会社における預金データ改ざん問題の一部報道に関して、連結子会社の日本保証が展開する信用保証事業に、報道されている不動産会社の取扱物件に対する保証が含まれているが、これまでアパートローン保証の貸倒実績は皆無であり、実際に保証を履行した実績はなく、現時点で業績への影響はないとリリースしている。

 また9月25日には、事業の選択と集中の観点から、遊戯機器等の開発・製造・販売を展開する連結子会社(孫会社)ハイライツ・エンタテインメント(HE)の全株式、およびHEに対して保有する貸付債権の全額を、サイ・パートナーズに譲渡すると発表した。これに伴って非継続事業に損失24億28百万円を計上する。

■中期的に銀行業の収益拡大期待

 中期ビジョンとして、国内金融事業では不良債権の買取回収と信用保証事業の拡大を推進する。韓国金融事業ではグループ内の相互連携を通じて各事業を有機的に連携させ、債権残高積み増しと収益拡大に取り組む。東南アジア金融事業では、Jトラストインドネシア銀行のアセット拡大と、不良債権回収事業の収益強化に取り組むとともに、インドネシア以外の東南アジア地域においても、さらなるM&Aを推進する方針だ。

 中期成長に向けて、M&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、M&A・事業再編および事業構造改革に伴う一時的利益・費用の計上で収益が大幅に変動する可能性もあるが、中期的に韓国金融事業の収益改善、東南アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で銀行業の収益拡大が期待される。なお16年5月には東証1部への申請に向けた検討を開始したと発表している。

■株主優待制度は6月末と12月末の株主対象

 株主優待制度は、毎年6月末または12月末時点の3単元(300株)以上保有株主を対象として、2500ポイント分の楽天ポイントギフトコードを贈呈する。18年6月末対象の株主から導入した。

■株価は売り一巡して反発の動き

 株価は6月の戻り高値1006円から反落して水準を切り下げる展開だったが、売り一巡して反発の動きを強めている。9月12日の直近安値645円から切り返して9月21日と25日には718円まで上伸した。

 9月25日の終値は708円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS51円64銭で算出)は約14倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間12円で算出)は約1.7%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1401円64銭で算出)は約0.5倍、時価総額は約798億円である。出直りを期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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