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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】TACは15年3月期下振れ懸念の織り込み完了、16年3月期の収益改善期待
- 2015/3/27 07:28
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
「資格の学校」を運営するTAC<4319>(東1)の株価は下げ渋り感を強めている。15年3月期業績下振れ懸念の織り込みが完了して調整のほぼ最終局面のようだ。16年3月期の収益改善期待で反発のタイミングだろう。
財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営し、法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。
財務・会計、経営・税務、法律など既存領域の市場が縮小傾向のため、中期成長に向けてオンライン教育(Webなどの通信系講座)の活用や、教員、医療、介護、語学など新領域への事業展開を強化している。
13年12月に増進会出版社(子会社のZ会が通信教育事業などを展開)と資本業務提携し、当社の教室運営ノウハウや資格系コンテンツ開発力と、増進会出版社の通信教育ノウハウや教養系コンテンツ開発力を融合させたソリューションの提供を目指している。14年8月には増進会出版社が第2位株主となって資本関係を強化した。
14年6月には、レセプト点検・整理業務を中心に医療機関事務分野の人材サービスを展開するクボ医療(兵庫県加古郡)と、医療事務に関する労働者派遣事業・レセプト作成請負業務を展開する医療事務スタッフ関西(兵庫県神戸市)を子会社化した。そして11月には関西の4校舎で「医療事務講座」を開講し、12月には子会社TAC医療事務スタッフを設立した。クボ医療および医療事務スタッフ関西を子会社化し、自ら育成した医療機関系人材を幅広い医療機関に提供することが可能になったため、関東エリアでも医療事務スタッフ派遣事業や診療報酬請求事務請負事業を展開する。
また14年11月には、トーハン・コンサルティングとの業務提携と介護系資格取得支援事業の開始を発表した。そしてトーハン・コンサルティングが展開する介護系資格取得教室を、当社の主要校舎において「介護教室ケアマイスター TAC教室」の名称で15年1月に開講した。
15年1月には「相続アドバイザー講座」の開講を発表した。銀行業務検定のうち相続アドバイザー3級は14年3月から実施された新しい試験で、15年から相続税および贈与税の税制改正が行われたため、初回試験の受験者が約1万人に達する注目度が高い試験だ。
3月3日には、一般社団法人日本オープンオンライン教育推進協議会(JMOOC)公認で、日本初の大規模公開オンライン講座提供サイト「gacco(ガッコ)」に対して、無料の実務・資格講座を提供すると発表した。人気の高い簿記3級、行政書士、宅建士、基本情報技術者、ファイナンシャル・プランナーなどの入門講座を無料で開講する。
なお当社の四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係で季節変動の特徴がある。公認会計士・税理士講座は第2四半期(7月~9月)と第3四半期(10月~12月)が翌年受験のための申込時期となるため、第2四半期と第3四半期は現金売上および売掛金計上が増加する。しかし受講期間に応じて前受金に振り替えられる一方で、経費は毎四半期一定額が計上されるため売上総利益率が低下する。そして第4四半期(1月~3月)と第1四半期(4月~6月)は、前受金が各月の売上高に振り替えられるため売上総利益率が上昇する傾向が強い収益構造としている。
今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は売上高が前期比1.1%減の203億円、営業利益が同1.5%増の10億50百万円、経常利益が同16.9%減の10億80百万円、純利益が同24.7%減の6億15百万円、配当予想が前期と同額の年間1円(期末一括)としている。消費増税前駆け込み申込の反動影響で減収見通し、投資有価証券運用益一巡なども影響して経常利益と純利益は減益見通しとしている。
第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比5.2%減収、同71.2%営業減益、同59.8%経常減益、同61.0%最終減益だった。受講者数減少や販管費増加などで減収減益だった。受講者数は個人受講者数が同6.1%減の10万7194人、法人受講者数が同0.8%増の5万2841人、合計が同3.9%減の16万35人だった。法人受講者は通信受講形態が好調のようだ。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)54億04百万円、第2四半期(7月~9月)49億56百万円、第3四半期(10月~12月)43億91百万円で、売上総利益率は第1四半期44.4%、第2四半期39.4%、第3四半期31.1%だった。営業利益は第1四半期5億75百万円、第2四半期2億12百万円、第3四半期は季節要因も影響して4億28百万円の赤字だった。
なお損益計算書に計上される発生ベース売上高は同5.2%減収だったが、当社が経営管理上で重視している現金ベース売上高は同0.5%減収にとどまった。第2四半期累計(4月~9月)の同9.6%減収に比べて、第3四半期(10月~12月)は同0.5%減収とほぼ前年並みに大幅改善した。
通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が72.7%、営業利益が34.2%、経常利益が55.6%、純利益が59.2%である。利益進捗率が低水準のため通期下振れに注意が必要だが、景気回復に伴って財務・会計系の求人ニーズが高まっていること、第3四半期の現金ベース売上高が第2四半期累計に比べて大幅改善していること、そして第4四半期(1月~3月)の売上総利益率が上昇しやすい収益構造を考慮すれば挽回の可能性があるだろう。
今後の重点取り組みとして、新講座(教員試験対策講座、建築士講座など)の開発と収益化、医療・介護系分野の講座や人材ビジネスへの進出と拡大、増進会出版社との共同事業の推進、連結子会社オンラインスクールによる新たな資格学習者層の開拓・囲い込み、事業構造改善やコスト削減の継続的実施を推進する方針だ。
来期(16年3月期)は増進会出版社との提携効果、そして医療事務講座や医療事務に係る人材ビジネスも本格寄与する。本社ビル取得によって年間1億70百万円程度の営業損益改善効果が見込まれることもプラス要因であり、収益改善が期待される。
株価の動きを見ると、水準を切り下げて軟調展開だったが、2月の直近安値208円を割り込むことなく210円~220円近辺で下げ渋り感を強めている。15年3月期業績下振れ懸念の織り込みが完了して調整のほぼ最終局面のようだ。
3月26日の終値216円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS33円24銭で算出)は6~7倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間1円で算出)は0.5%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS224円46銭で算出)は1.0倍近辺である。
週足チャートで見ると、26週移動平均線が抵抗線となって水準を切り下げたが200円近辺が下値支持線のようだ。15年3月期業績下振れ懸念の織り込みが完了して調整のほぼ最終局面と考えられ、16年3月期の収益改善期待で反発のタイミングだろう。