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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本マニュファクチャリングサービスは収益改善基調を再評価
- 2015/3/30 07:03
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
製造請負大手の日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)の株価は、15年3月期配当予想の増額修正を好感して3月20日に416円まで上伸する場面があった。やや戻りの鈍い展開だが390円近辺が下値支持線の形であり、収益改善基調を再評価して反発のタイミングだろう。
製造請負・派遣のIS(インラインソリューション)事業、修理・検査受託のCS(カスタマーサービス)事業、技術者派遣のGE(グローバルエンジニアリング)事業、子会社の志摩グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)事業を展開している。今期(15年3月期)からIS、CS、GEを総称してHS(ヒューマンソリューション)事業にセグメント区分を変更した。
基本コンセプトとして、日本、中国、アセアン諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。製造アウトソーシング企業NO.1を目指すとともに、サービスの一段の高付加価値化に向けて開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。
13年10月にはTKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)の電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県奥州市)を取得した。14年10月にはパナソニック<6752>から車載向けを除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社のパワーサプライテクノロジー(PST)が新たに操業を開始した。パナソニックから引き継いだ取引社数は海外111社、国内90社であり、今後は営業・開発・技術機能を強化する。
日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、電源関連事業を当社グループのキーテクノロジー分野として、LED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進し、EMS事業の高付加価値化も推進する方針だ。14年9月には子会社TKRが検査工程の自動化・省力化装置のカスタマイズ受託生産を本格的に開始している。
14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野のサービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。
中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、5月には当社と子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。
アジアへの展開では14年9月に子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。さらに10月には子会社nmsベトナムがNMSIRと事業提携し、ベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。12月には子会社nmsタイランドが、カンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。
今期(15年3月期)の連結業績見通し(5月15日公表)は売上高が前期比16.5%増の488億円、営業利益が4億90百万円(前期は6億43百万円の赤字)、経常利益が5億10百万円(同1億75百万円の赤字)、純利益が負ののれん発生益一巡で同50.7%減の3億20百万円としている。
なおパナソニックから譲り受けた電源・電源関連部品事業については、パワーサプライ事業(PS事業)として第4四半期(1月~3月)から新規連結する。これに伴う今期の業績見通しに対する影響については明らかになりしだい公表するとしている。
EMS事業における既存案件の増産効果、中国における人件費上昇の一巡、TKR香港におけるオペレーション改善効果、日立MEから譲り受けた案件の本格稼働、第4四半期から新規連結するPS事業が寄与して収益改善が本格化する見通しだ。
配当予想については3月19日に増額修正を発表した。前回予想(5月15日公表)に対して、期末に創業30周年記念配当2円を増額して、前期比2円増配の年間5円(期末一括=普通配当3円+記念配当2円)とした。
第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比12.1%増収で、営業利益と経常利益が黒字化した。純利益はTKR株式追加取得に伴う負ののれん発生益が一巡して同95.3%減益だが、EMS事業の収益改善が寄与して営業損益が大幅に改善した。
セグメント別に見ると、HS事業はISにおける事業投資コスト発生やCSにおける新規事業の採算悪化などで赤字幅がやや拡大したが、EMS事業は増収効果などで日本の赤字幅が縮小し、中国拠点が黒字化した。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)116億30百万円、第2四半期(7月~9月)121億57百万円、第3四半期(10月~12月)108億15百万円、営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期1億49百万円、第3四半期1億10百万円の赤字である。
通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が70.9%、営業利益が25.7%、経常利益が37.1%、純利益が12.5%である。利益進捗率が低水準だが、第4四半期のPS事業の新規連結も寄与して挽回が期待される。そして来期(16年3月期)はPS事業が通期寄与して収益改善基調だろう。
株価の動きを見ると、15年3月期配当予想の増額修正を好感し、安値圏の390円~400円近辺から反発して3月20日に416円まで上伸する場面があったが、その後の買いが続かずやや戻りの鈍い展開だ。ただし390円近辺は下値支持線の形だ。
3月27日の終値398円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円50銭で算出)は11~12倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は1.3%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS451円79銭で算出)は0.9倍近辺である。
週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んで調整局面だが、日足チャートで見ると15年3月期配当予想の増額修正を好感して25日移動平均線を突破した。390円近辺が下値支持線の形であり、収益改善基調を再評価して反発のタイミングだろう。