【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本エンタープライズは調整の最終局面、16年5月期の営業損益改善期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 コンテンツ制作・配信の日本エンタープライズ<4829>(東1)の株価は、27日に直近安値となる346円まで調整してモミ合い下放れの動きとなった。ただし全般地合い悪化の影響も受けた形だ。調整の最終局面であり16年5月期の営業損益改善期待で反発のタイミングだろう。

 コンテンツ配信などのコンテンツサービス事業と、店頭アフィリエイト(広告販売)や企業向けソリューション(システム受託開発)などのソリューション事業を展開し、中国ではチャイナテレコムの携帯電話販売店運営と電子コミック配信サービスを手掛けている。

 配信コンテンツを自社制作して「権利を自社保有する」ビジネスモデルを基本戦略として、ネイティブアプリ事業を新たな収益柱に育成している。ネイティブアプリの開発力強化、ゲームコンテンツ市場への本格参入、法人向け業務支援サービスの早期収益化に向けて、13年3月に音声通信関連ソフトウェア開発のandOneを子会社化、14年4月に子会社HighLabを設立、14年11月にアプリ開発の会津ラボを子会社化した。

 中国・上海の携帯電話販売事業については、キャリアの販売施策変更に影響されない収益構造の構築を目指し、大口法人への営業強化、付属品販売強化、徹底的なコスト削減などの収益改善策を推進している。

 コンテンツ配信のグローバル展開では14年6月、インドネシア大手移動体通信キャリアのXL Axiata社が運営するアプリストア内のアプリ取り放題サービス向けに、スマートフォンアプリの提供を開始した。ローカライズした自社アプリを世界の各種プラットフォームに配信し、自社コンテンツ資産の2次利用を推進する戦略だ。

 法人向け事業では14年8月、スマートフォンを活用して企業の内線電話網を構築するアプリケーション「AplosOneソフトフォン」を開発した。従業員のデスク上のビジネスフォン(固定電話)が不要となり、スマートフォンを内線電話として使用できるアプリケーションだ。また10月にはビジネス専用メッセンジャーアプリ「BizTalk」を発表した。

 なお子会社のHighLabは今春、3ゲームタイトルのリリースを予定している。そして3月17日に第一弾のパズルゲーム「ハニープラス」、23日に第二弾の旦那育成ゲーム「ウチの旦那はイケてない」の配信を開始した。

 今期(15年5月期)の連結業績見通し(11月28日に売上高と利益を減額、1月9日に税金費用減少で純利益を増額)は、売上高が前期比13.8%増の51億30百万円、営業利益が同34.4%減の2億20百万円、経常利益が同32.4%減の2億30百万円、純利益が同58.8%減の1億80百万円で、配当予想(7月9日公表)は前期と同額だが普通配当で年間3円(期末一括)としている。

 新サービスの企業向け通話アプリ「AplosOneソフトフォン」の開発遅延に伴って売上高が期初計画を下回り、子会社HighLabのネイティブアプリ「Fivetoak」および「ひっぱれ!ネコPingプラネット」のプロモーション費用など先行投資負担が影響して減益見通しとしている。ただしソリューション事業の店頭アフィリエイト広告が回復基調であることも寄与して2桁増収見通しだ。

 第2四半期累計(6月~11月)は前年同期比15.7%増収ながら、広告宣伝費の増加などが影響して同60.9%営業減益、同58.3%経常減益だった。純利益は投資有価証券売却益が寄与して同20.3%増益だった。四半期別に見ると、売上高は第1四半期(6月~8月)13億16百万円、第2四半期(9月~11月)11億98百万円、営業利益は第1四半期52百万円、第2四半期10百万円だった。

 通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高49.0%、営業利益28.2%、経常利益30.4%、純利益88.3%である。営業利益と経常利益は低進捗率のため通期下振れに注意が必要だが、売上面で見るとコンテンツサービス事業は交通情報が牽引し、ソリューション事業は店頭アフィリエイト広告が大幅伸長して増収基調だ。3月に配信開始したゲーム新タイトルも寄与して下期の営業利益と経常利益の挽回が期待される。

 また来期(16年5月期)は、交通情報や店頭アフィリエイト広告の好調に加えて、ゲーム新タイトルも本格寄与して営業損益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、3月27日に直近安値となる346円まで調整した。360円~410円近辺でのモミ合いから下放れの動きとなったが、全般地合い悪化の影響も受けた形であり、調整のほぼ最終局面だろう。

 3月27日の終値349円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS4円63銭で算出)は75倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間3円で算出)は0.9%近辺、前期実績PBR(前期実績に増資を考慮した連結BPS107円70銭で算出)は3.2倍近辺である。

 週足チャートで見ると、13週移動平均線が戻りを押さえる形となって調整局面だが、52週移動平均線が支えて調整のほぼ最終局面だろう。16年5月期の営業損益改善期待で反発のタイミングだろう。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■グローバルモデルに匹敵する日本語対応の高性能生成AIを4月から順次提供  ELYZAとKDDI<…
  2. ■優勝への軌跡と名将の言葉  学研ホールディングス<9470>(東証プライム)は3月14日、阪神タ…
  3. ■新たな映画プロジェクトを発表  任天堂は3月10日、イルミネーション(本社:米国カリフォルニア州…
2024年4月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

ピックアップ記事

  1. ■海運株と防衛関連株、原油価格の動向に注目集まる  地政学リスクによる市場の不安定さが増す中、安全…
  2. ■中東緊張と市場動向:投資家の選択は?  「遠い戦争は買い」とするのが、投資セオリーとされてきた。…
  3. ■節約志向が市場を動かす?  日本の消費者は、節約志向と低価格志向を持続しており、これが市場に影響…
  4. ■投資家の心理を揺さぶる相場の波  日米の高速エレベーター相場は、日替わりで上り下りと忙しい。とく…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る