マーキュリアインベストメントは売られ過ぎ感、18年12月期減益予想だが上振れ余地

 マーキュリアインベストメント<7190>(東1)はファンド運用と自己投資を展開している。収益は成功報酬などで変動する特性が強い。18年12月期は計画超だった17年12月期の反動で減収減益予想だが、上振れ余地がありそうだ。株価は地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。反発を期待したい。

■ファンド運用と自己投資を展開

 国内外投資家の資金を投資事業組合等のファンドを通じて運用するファンド運用事業、および自己資金を運用する自己投資事業を展開している。

 05年10月あすかDBJ投資事業有限責任組合(1号ファンド)を組成、13年8月ADC Fund 2013(2号ファンド)を組成、16年8月マーキュリア日本産業成長支援投資事業有限責任組合(3号ファンド)を組成した。

 投資先発掘に関しては国内外で広いネットワークを有し、主要株主でもある日本政策投資銀行、伊藤忠商事、三井住友信託銀行とのアライアンスで多様な収益機会を捕捉している。18年3月にはタイ現地法人(バンコク子会社)を設立した。

 事業承継マッチングプラットフォーム「BIZMA」を展開する子会社ビジネスマーケットは、18年9月福岡銀行と業務提携、きらやかコンサルティング&パートナーズと業務提携した。また10月25日には子会社ビジネスマーケットとインソース<6200>との資本業務提携を発表した。

 香港の子会社Spring Asset Management Limited(SAML)が運用するSpring REIT(13年12月香港証券取引所に上場)は18年9月、中国恵州のショッピングモール「Huamao Place」の取得手続きに入った。

 なお9月27日、Spring REITに対する公開買付の通知を、RE STRATEGIC INVESTMENTSから受領したと発表している。この公開買付に関してSpring REITの運営を行っている子会社SAMLが10月14日に回答書類を発表した。一般投資主に対して本公開買付を拒否するよう全会一致で推奨したとしている。

■クロスボーダーを基本コンセプトとして成長分野中心に投資・運用

 投資先の企業価値向上を通じて投資家に対するリターンの最大化を実現するべく取り組んでいるが、決して短期的な利益を追求せず、クロスボーダーを基本コンセプトとして成長性や収益性に着目し、世界に広がる成長分野での有望な投資対象の発掘や成長可能性に対する投資を中心に、成長投資戦略、バリュー投資戦略、バイアウト・承継投資戦略、不動産投資戦略、キャッシュ・フロー投資戦略などに基づく運用を行っている。

 成長投資戦略、バリュー投資戦略、バイアウト・承継投資戦略は、成長ステージや承継ステージに位置する企業などのエクイティ・ホルダーとなり、経営陣とともに事業成長や将来を考えた企業価値向上を図ることで、投資家のリターンを高める。

 不動産、航空機リース、インフラファンドなどのキャッシュ・フロー投資戦略は、物が使用される対価として支払われるキャッシュ・フローに着目し、それを確実に受け取ることができる金融商品とすることで、投資家に安定的なリターンを提供する。

■既存ファンドExitや新規投資・新ファンド立ち上げを推進

 今後の戦略として、既存ファンドにおける投資案件のExit、新規投資・新ファンド立ち上げで成功報酬の最大化を推進する。

 新ファンドでは航空機リースファンドが18年春運用ステージに入った。またタイ・バンコク不動産開発プロジェクトへの不動産メザニン投資、再生可能エネルギー施設に対する投資、人工衛星のライドシェアビジネスを目指す米LO社に対する投資などを推進する。

 18年8月には、航空機リースファンドが第1号案件としてボーイング787型機の買い付けに関する覚書を締結した。また東京証券取引所インフラファンド市場への上場に向けて、投資法人「エネクス・インフラ投資法人」を設立した。

 また10月18日には、中国でフィンテックを駆使した総合金融サービスを展開する中科金社への投資を目的としたファンドChina Fintechの組成を発表した。

■収益はファンド運用事業の成功報酬によって変動する特性

 ファンド運用事業の収益は、ファンド管理運営業務の対価として運用資産残高と報酬料率に応じて受け取る管理報酬、および運用実績の良否によって変動する成功報酬である。自己投資事業の収益は、当社が管理運営を行うファンドへの自己投資に伴う持分損益の取り込み、および直接投資対象からの配当金・売却益である。

 したがって営業収益および利益は、ファンド運用事業の成功報酬や自己投資事業の売却益の発生によって変動する特性が強い。

 利益還元については配当性向30%程度を目安とするが、成功報酬等による損益への影響が大きいため、単年度損益の影響を抑制し、配当の安定性を高めるために、当面は対象利益指標を修正当期純利益(5年平均の親会社株主に帰属する当期純利益、13年12月期以前は未監査のため除く)を目安とする。そして当期純利益の成長を通して配当水準を引き上げることを目指すとしている。

■18年12月期減益予想だが上振れ余地

 18年12月期連結業績予想は、営業収益が17年12月期比5.3%減の40億円、営業利益が10.3%減の20億円、経常利益が9.4%減の20億円、純利益が9.4%減の13億50百万円としている。計画超だった17年12月期の反動で減収減益予想としている。配当予想は1円増配の年間18円(期末一括)で、予想配当性向は23.0%となる。

 第2四半期累計は、営業収益が前年同期比1.9%減の26億75百万円、営業利益が5.8%減の14億34百万円、経常利益が6.7%減の14億12百万円、純利益が9.9%減の9億48百万円だった。営業収益の内訳はファンド運用管理報酬11億01百万円、ファンド運用成功報酬14億45百万円、自己投資・その他1億29百万円だった。

 通期予想に対する第2四半期累計の進捗率営業収益67%、営業利益72%と順調である。また10月1日には3号ファンドにおける泉精器製作所の株式譲渡が完了した。通期予想に上振れ余地がありそうだ。

■株価は売られ過ぎ感

 株価は10月26日に755円まで下押した。地合い悪化も影響して年初来安値を更新する展開だが、売られ過ぎ感を強めている。

 10月26日の終値は775円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS78円33銭で算出)は約10倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は約2.3%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS605円13銭で算出)は約1.3倍、時価総額は約135億円である。反発を期待したい。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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