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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】東京個別指導学院は利益確定売りで一旦反落だが、16年2月期の収益拡大を評価して上値試す
- 2015/3/31 06:53
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
小中高校生向け個別指導学習塾を展開する東京個別指導学院<4745>(東1)の株価は、350円近辺のモミ合いから上放れて3月19日の764円まで急伸した。信用取組が大幅売り長だったため踏み上げ相場の様相を呈した。その後は利益確定売りで一旦反落したが、16年2月期の一段の収益拡大を評価して上値を試す展開だろう。
ベネッセホールディングス<9783>グループで、小中高校生向けの個別指導学習塾などを展開している。14年2月期末時点の教室数(1対2形式の個別指導教室)は首都圏158教室、関西地区37教室、東海地区8教室、九州地区5教室の合計208教室で、14年2月期の小中高校生合計の期中平均在籍人数は13年2月期比8.6%増の2万3790人だった。
14年4月に中期経営計画「Shining☆2015」のローリングプランを発表し、目標数値として16年2月期の売上高169億円以上、営業利益23億円以上、教室数219教室、生徒数(4月末)2万4500人以上を掲げている。
重点戦略は「品質強化による受験対応力強化」「小中学生比率の改善」「新教室の開校」「既存教室生徒数の増加」「マーケティング改革」として、Webマーケティングの積極活用、テレビCMの実施、ベネッセコーポレーションとの連携強化、自社コールセンターの強化、新規教室の開校、顧客の利便性や収益性の改善を目指した教室移転・リニューアル・増床、iPadを活用した映像学習の全教室導入、目的別・学力別・性格別完全オーダーメイド個別指導の強化などで新規入会者・在籍生徒数の増加を推進している。
14年4月には、通信教育と個別指導を連携した「進研ゼミ個別サポート教室」を全教室で実施し、ベネッセコーポレーションから「Benesseサイエンス教室」と「Benesse文章表現教室」を譲り受けた。8月にはインターネットによる個別指導「東京個別指導学院ネット教室」を開始した。なお3月9日に「東京個別指導学院ネット教室」の名称を「CCDnet」に変更して、本格的な全国展開に向けてプロモーション活動を展開すると発表した。
ベネッセコーポレーションの進研ゼミと当社の教室運営・個別指導のノウハウを融合させた新業態「クラスベネッセ」については、14年12月に「クラスベネッセ仙川」を開校した。進研ゼミ会員の小学1年~中学3年を対象に、進研ゼミの教材を活用して1人の先生(コーチ)が生徒4人を指導する個別フォロー型学習サービスだ。現事業モデルでは出店拡大が難しい地域にも展開して市場シェアを拡大することを狙いとしているため、今後の展開については直営とFCで全国規模の展開を目指すとしている。
なお14年11月オリコン発表「オリコン顧客満足度ランキング2015高校受験個別指導部門(首都圏)総合部門」で2年連続1位となり、12月にはイードの教育情報サイト「リセマム」が実施した学習塾に関する顧客満足度調査「イード塾アワード2014高校生・大学受験生/個別指導」で3年連続の最優秀賞を受賞している。
前期(15年2月期)の業績(非連結)見通し(4月9日公表)は売上高が前期比10.1%増の157億72百万円、営業利益が同25.9%増の16億02百万円、経常利益が同25.6%増の16億05百万円、そして純利益が同23.4%増の9億10百万円としている。配当予想は同2円増配の年間8円(第2四半期末4円、期末4円)としている。
第3四半期累計(3月~11月)は、授業料売上が好調に推移して前年同期比9.7%増収、コストの効率化・適性化も寄与して同53.8%営業増益、同53.5%経常増益、同59.1%最終増益と収益が大幅に改善した。新規教室開校、既存教室リニューアル、テレビCMなどのマーケティング戦略の効果で入会者数は同2.5%増の1万6372人、14年11月末時点の在籍生徒数は13年11月末に比べて5.1%増の2万7885人となった。
通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高69.1%、営業利益32.2%、経常利益32.4%、純利益32.9%である。低水準の形だが第1四半期(3月~5月)は卒業などで一時的に在籍生徒数が減少するのに対して、夏期講習なども寄与して第2四半期(6月~8月)以降の利益構成比が高い収益構造である。
四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)28億70百万円、第2四半期(6月~8月)44億84百万円、第3四半期(9月~11月)35億40百万円、営業利益は第1四半期8億52百万円の赤字、第2四半期9億33百万円の黒字、第3四半期4億34百万円の黒字である。
3月9日に発表した15年2月期の新規入会者数は14年2月期比2.6%増の2万120人、15年2月末時点の在籍生徒数は14年2月末比3.2%増の2万1473人となった。新規入会者、在籍生徒数とも好調に推移しており、通期ベースでも好業績が期待される。
なお前期の新規教室開校については7教室の計画としていたが、15年2月に麻生十番教室(東京都港区)と葛西教室(東京都江戸川区)を新規開校して合計10教室(新業態「クラスベネッセ」を含めると11教室)となった。
また15年3月に個別指導教室として川崎西口教室(神奈川県川崎市)を新規開校した。これによって個別指導教室数は219教室となり、中期経営計画で16年12月期末の目標としていた教室数を早々に達成することになった。中期経営計画の施策が着実に実行され、来期(16年2月期)の一段の収益拡大が期待される。
少子化による学齢人口縮小で業界再編・淘汰の動きも活発化しているが、政府が打ち出している教育改革に伴う教育環境変化への不安・関心の高まりも背景として、個別指導学習塾への期待感は一段と高まっている。祖父母から孫への教育資金贈与非課税制度など国の政策も追い風だろう。
株価の動きを見ると、350円近辺でのモミ合いから上放れの形となり、3月19日の764円まで急伸した。上場来高値(株式分割修正後)更新の展開だ。好業績見通しを評価する動きに加えて、信用取組が大幅売り長だったため踏み上げ相場の様相を呈した。その後は利益確定売りで一旦反落して500円近辺まで調整している。
3月30日の終値530円を指標面で見ると、前期推定PER(会社予想のEPS16円77銭で算出)は31~32倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間8円で算出)は1.5%近辺、前々期実績PBR(前々期実績のBPS128円21銭で算出)は4.1倍近辺である。
週足チャートで見ると高値圏で長い上ヒゲをつけて一旦反落したが、日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して過熱感が解消した。強基調に転換した形であり、信用取組は依然として売り長である。13週移動平均線の接近を待って再動意も期待され、16年2月期の一段の収益拡大を評価して上値を試す展開だろう。