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【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アスラポート・ダイニングは中期成長力を評価して上値試す
- 2015/3/31 06:44
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
外食FC事業や食品製造販売事業などを展開するアスラポート・ダイニング<3069>(JQS)の株価は、メキシカン・ファーストフードブランド「Taco Bell」のFC契約締結を好感して08年6月以来の400円台に乗せる場面があった。その後一旦反落したが急伸前水準まで戻ることなく切り返しの動きを強めている。中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。
外食FC事業や食品製造販売事業を展開する持株会社である。傘下の事業会社に、焼肉店「牛角」エリアFC本部運営や釜飯・串焼の居酒屋「とりでん」FC総本部運営などのプライム・リンク、鶏料理専門居酒屋「とり鉄」FC総本部運営などのとり鉄、たこ焼きや洋菓子「GOKOKU」事業(13年12月事業譲受)のフードスタンドインターナショナル、業務用乳製品加工の弘乳舎(13年9月子会社化)を置き、14年9月には焼鳥居酒屋「ぢどり亭」「浪花屋鳥造」を関西中心に展開しているレゾナンスダイニングを子会社化した。
14年9月末の店舗数は焼肉「牛角」172店舗(直営6、FC166)、居酒屋「とりでん」69店舗(直営4、FC65)、居酒屋「おだいどこ」20店舗(直営7、FC13)、居酒屋「とり鉄」60店舗(直営11、FC49)など合計343店舗(直営43、FC300)で、レゾナンスダイニングを加えるとグループ総合計431店舗である。なお焼肉「牛角」のエリアは東北、北関東、北陸、東海、近畿、九州(大分・熊本を除く)、および沖縄の27府県である。
FCによる外食ブランド展開、持株会社制による効率的運営とポートフォリオ管理、六次産業への展開を促す事業基盤がビジネスモデルの特徴だ。中期成長戦略として既存ブランドの競争力強化と成長、ブランド・ポートフォリオの多様化、海外市場への進出、食品生産事業と六次産業化への取り組みを推進している。
従来の外食FC運営の枠にとどまらず、重点戦略を連動させて生産から流通・飲食・小売までを包括し、多層的に協業することでシナジー効果を発揮する「食のバリューチェーン」企業を目指す戦略だ。
既存ブランドの競争力強化と成長では、関西エリアにおける焼肉「牛角」の都市型大型店舗の成功事例をベースとして積極出店を推進する。ブランド・ポートフォリオの多様化では、M&Aを活用した新業態の獲得や他社ブランド業態をFCパッケージに育成する戦略を推進する。製造分野では外食とも協業して新商品開発を推進し、弘乳舎から大手外食チェーンへの商品供給も拡大する方針だ。
海外事業は14年9月、英国3社(水産物加工卸売のT&S社、食材輸出入のS.K.Y.社、寿司店および水産物小売店運営のAtari-Ya社)を持分法適用会社化した。欧米における日本食ブームも追い風であり、14年4月設立のアスラポート・フランスとともに欧州市場への進出を加速する。
2月26日には米Taco Bell社と、世界的なメキシカン・ファーストフードブランドである「Taco Bell」の日本国内でのFC契約の締結を発表した。そして3月30日には「Taco Bell」1号店を東京・渋谷に4月21日オープンすると発表した。
また3月2日にはラーメン店などを展開するワイエスフード<3358>との資本業務提携を発表した。相互に株式を継続保有する。ワイエスフードが持つブランド店舗の海外出店加速や、国内での原材料共同購入によるコスト削減や物流拠点最適化などのシナジー効果が期待できるとしている。
今期(15年3月期)の連結業績見通し(レゾナンスダイニング子会社化に伴って9月19日に売上高、利益を増額修正)は売上高が前期比17.3%増の110億26百万円、営業利益が同23.8%増の6億96百万円、経常利益が同35.4%増の6億23百万円、純利益が同18.3%増の3億55百万円としている。
関西都市部への「牛角」大型店舗出店、CMなどを活用した販促・集客、ポートフォリオ多様化戦略に沿ったアライアンス事業拡大、居酒屋業態の不採算店舗閉店や業態転換による収益力改善、洋菓子「GOKOKU」事業や弘乳舎の通期寄与、FC加盟店からのロイヤリティ収入およびFC加盟店への食材売上の増加が寄与して大幅増収増益の見通しだ。
第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比24.6%増収、89.8%営業増益、92.1%経常増益、2.5倍最終増益だった。主力の「牛角」が牽引して、グループ全体の既存店売上高は前年比100.1%と好調に推移した。弘乳舎の乳製品販売やデザート受託製造も好調に推移している。
四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)26億73百万円、第2四半期(7月~9月)24億89百万円、第3四半期(10月~12月)30億05百万円で、営業利益は第1四半期2億66百万円、第2四半期85百万円、第3四半期1億51百万円である。
通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.1%、営業利益が72.1%、経常利益が72.2%、純利益が107.9%である。足元では2月の既存店売上が好調に推移している。食材の集中購買による調達コスト低下なども寄与して通期見通しに再増額の可能性があるだろう。
ブランド別既存店売上の状況(直営店+FC店、前年比速報値)を見ると、15年2月は主力の「牛角」が109.8%で7ヶ月連続の前年比プラスとなり、客単価もプラスを継続している。「とりでん」は102.2%で3ヶ月ぶりのプラス、「おだいどこ」は100.3%で4ヶ月ぶりのプラス、「とり鉄」は101.8%で4ヶ月ぶりのプラスだった。レゾナンスダイニングは「ぢどり亭」が107.1%、「浪花屋鳥造」が104.1%と好調に推移した。
また14年4月~15年2月累計でも主力の「牛角」は102.2%と好調に推移している。「とりでん」は98.2%、「おだいどこ」は96.4%、「とり鉄」は99.4%だった。
来期(16年3月期)については「牛角」の好調に加えて、メキシカン・ファーストフード「Taco Bell」の日本国内でのFC展開本格化も寄与して増収増益基調が期待される。
中期経営計画(15年3月期~17年3月期)では、目標数値として17年3月期売上高112億71百万円、営業利益7億89百万円、売上高営業利益率7.0%、ROE20.0%、D/Eレシオ1.2倍を掲げている。ブランド・ポートフォリオの多様化戦略が進展し、海外展開なども寄与して中期的に収益拡大基調だろう。
株主優待制度は毎年3月末および9月末時点の500株以上所有株主を対象として実施している。所有株式数500株以上~1000株未満所有株主に対して「お食事券」または「商品」の中から1点(3000円相当)、1000株以上所有株主に対して「お食事券」または「商品」の中から2点(6000円相当)を贈呈する。
株価の動きを見ると「Taco Bell」とのFC契約締結を好感して動意づき、2月25日終値332円から3月2日には443円まで急伸する場面があった。13年5月の398円を突破して08年6月以来の400円台だ。その後は一旦反落したが急伸前水準まで戻ることなく、340円近辺から切り返しの動きを強めている。
3月30日の終値367円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS19円13銭で算出)は19~20倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS94円64銭で算出)は3.9倍近辺である。
週足チャートで見ると3月高値で長い上ヒゲをつけたが、13週移動平均線がサポートラインとなって水準を切り上げている。強基調の形だ。中期成長力を評価して上値を試す展開だろう。