【小倉正男の経済コラム】RIZAPグループ:譲れないところを譲って構造改革宣言

小倉正男の経済コラム

■構造改革=M&A凍結宣言

 RIZAPグループの第2四半期は異例尽くめといえるものだった。

 11月14日夜の決算説明会は3時間を費やして行うというので覚悟して出席した。決算説明会の壇上には、瀬戸健社長と松本晃構造改革担当のふたりの代表取締役が登場した。

 RIZAPグループの第2四半期は大幅赤字決算になり、無配転落が発表された。
それだけではない。瀬戸健社長からM&Aを凍結、構造改革を加速するという宣言が打ち出された。
 瀬戸健社長はほとんど涙目という状況だった。

 「成長の手段としてM&Aをしてきた。1社1社再生してからM&Aをすべきだった。見通しが甘かった。1社1社見直しをして、構造改革を実施する。構造改革が終わるまで、新たなM&Aは行わない・・・」

■このまま進んでいけば奈落の深み

 RIZAPグループは、16年3月期23社だったものが、17年3月期51社、18年3月期75社と急膨張を促進してきた。19年3月期の途中にある現在は85社、16年3月期から62社の増加となっている。M&Aラッシュで膨張を続けてきたわけである。

 それが180度転換して、M&A凍結、構造改革に踏み込むというのである。
「事業の選択と集中を行って集中すべきものに集中する。売却・撤収も行う。収益が出ている事業と出ていない事業、どこをやめるべきか。収益を上げられないものをやめる」

 瀬戸健社長としては、「自信と確信を持ってやってきた経営路線」であり、それを全面否定した。いわば、自分を全否定したようなものである。

 メディアからは厳しい批判があった。「つい3ヶ月前には、優秀な経営者を付ければ会社はよくなると発言していたではないか」

 しかし、経営というものも進むのは楽だが、退くのは大変だ。痛みや出血も伴う。このまま進んでいけば、奈落の底というか後戻りはできない深みに陥った可能性が否定できない。
 辛くてもここで覚悟を決めて退けば、先々復活できるチャンスを持ちうるかもしれない。

■松本晃構造改革担当の助言

 RIZAPグループがなんとか踏みとどまったのは、松本晃構造改革担当の存在が小さくない。ベテランの「プロ経営者」から見たら、おそらくRIZAPグループは問題だらけだったに違いない。

 「マイナスのインパクトの大きい会社、あるいはマイナスの大きい会社、優先順位を決めて構造改善、体質を変える。“ワンダー体質”を変えればやっていけるかもしれない。マイナスのインパクトの大きい会社と向き合うしかない。新しいM&Aはやめるべきだ」

 瀬戸健社長は、松本晃構造改革担当の助言を受け入れて、経営路線は180度転換されることになった。

 瀬戸健社長は、「自信と確信を持ってやってきた」というのだから、普通なら受け入れられないところだ。その譲れないところを譲ることになった。

 こうした経営路線の転換は、そうあるものではない。大体、問題先送りで既定路線を変えないで進んでいくのが通例である。
レアケースの経営路線転換が何をもたらすのか。しばし、眺めていけば、兆しはほの見えるのかもしれない。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)

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