【どう見るこの相場】逆手の「麦わら帽子は夏に買え」セオリーで冬支度銘柄に網を張り「掉尾の〇.五振」期待も一考余地

どう見るこの相場

 年末相場にサプライズはあるのか?「掉尾の一振」は望めるのか?――――すべての市場参加者が、交錯させている期待と不安であると推察される。なぜなら日経平均株価も、ニューヨーク工業株30種平均も、いずれもが昨年2017年の大納会終値を下回り、1年間の投資パフォ-マンスがマイナスとなる「全員負け相場」となっているのは間違いないからで、マーケットを引っ掻き回し、上手く立ち回ったようにみえた海外ヘッジファンドさえ、年末を前に解約に怯えているらしいという情報が漏れ聞こえてくる。

 とにかく難題難問続きなのである。景気減速懸念は、中国経済だけかと思っていたら、「一人勝ち」していた米国経済まで雲行きが怪しくなってきたと観測され、アップルなどの米国の主力ハイテク株が揃って値を崩してきた。しかもカントリーリスクは、イタリアだけのはずが、サウジアラビア、英国と拡散し、東京市場も、ソフトバンクグループ<9984>(東1)の携帯電話子会社の大型新規株式公開を控え、来年の統一地方選挙、参議院議員選挙、消費税引き上げへの警戒モードも高まりつつあるようで、マーケットの下押し材料は、両手の10本の指を使っても数え切れない。

 こうした相場環境で、水浸し状態をプラスに変えて年を越せるかは、2018年相場の残り1カ月のパフォーマンス次第となってくる。となれば当然、サプライズの「掉尾の一振」を期待したくなるもので、「掉尾の一振」をリードする第一候補といえば、大きく突っ込んだ半導体関連株を含むハイテク株が大きく戻すリーターン・リバーサルだろう。しかしハイテク株は、何せ米国市場次第であり、感謝祭の連休開けからサンタ・ラリーがスタートするかは不確かで、上値期待も下値懸念も大きく激しく、忙しい師走相場となることは目に見える。そこで「掉尾の一振」まで至らなくとも「掉尾の〇.五振」、「〇.三振」程度で辛抱して、もう少しゆっくりしたリズムで「オレ流」の師走相場に臨みたいという投資家も少なくないはずだ。そうした投資家に一考してもらいたい銘柄が「冬支度銘柄」だ。冬支度銘柄とは、冬場に需要期を迎えるシーズン・ストックである。

 株式投資のセオリーでは、米国の相場格言の「麦わら帽子は冬に買え」が教えるように、冬のシーズン・ストック買いは、株価の先行特性からすれば買い場は、オフシーズンの半年前の夏で、オンシーズンの冬到来となれば材料出尽くしでむしろは売り上がり場面となる。しかし今年の夏は、長引く猛暑で関連株買いが幅広く継続し、また昨今は、こたつに入る時期にアイスクリームが売れるなど季節感は消滅の一途を辿りつつある。折から日米の消費市場では、感謝祭開けからブラックフライデー、サイバーマンデーと恒例の消費喚起イベントが続く。ここは相場格言とは逆手のセオリーで「麦わら帽子は夏に買え」と居直って、冬本番だからこそと冬支度銘柄に狙いを定めてみたい。

■「治療より予防」で除菌剤・診断薬、「アスレジャー」ブームでアウトドアウエア関連株

 「冬支度銘柄」の最右翼銘柄は、何といってもインフルエンザ関連株である。流行期を前に「治療より予防」で大幸薬品<4574>(東1)の主力製品のウイルス・菌除去剤の「クレベリン」とミズホメディー<4595>(JQS)の体外診断薬は、早期に需要期を迎え、インフルエンザが猛威を振るう治療段階となれば塩野義製薬<4507>(東1)の抗インフルエンザ薬「ゾフルーザ」と中外製薬<4519>(東1)の「タミフル」の販売が拡大する展開が想定される。

 次いで注目は、冬物衣料関連株である。アスレティック(運動競技)とレジャー(余暇)を組み合わせた造語アスレジャー関連のファアッション・ブームでスポーツウエア、アウトドアウエアが売り上げを伸ばしており、今年11月6日に今2019年3月期業績の上方修正と増配を発表したゴールドウイン<8111>(東1)のほかスノーピーク<7816>(東1)、デサント<8114>(東1)、ワークウエアからアウトドアウエアに進出したワークマン<7564>(JQS)などがターゲットとなる。

 食品株では冬場に需要期を迎える関連株が浮上し、鍋物料理関連のホクト<1379>(東1)、ダイショー<2816>(東2)、エバラ食品工業<2819>(東1)、ニイタカ<4465>(東1)、あんまん・肉まんの中村屋<2204>(東1)、井村屋グループ<2209>(東1)、包装餅のサトウ食品工業<2923>(東2)、セルフうどん店のトリドール<3397>(東1)などが浮上する。時節柄の新年会・忘年会の二次会・三次会需要では、カラオケチェーン店の鉄人化計画<2404>(東2)、コシダカホールディングス<2157>(東1)、第一興商<7458>(東1)、冬休みでプレー回数の増加が期待されるボウリングのラウンドワン<4680>(東1)、「ゲーセン」の共和コーポレーション<6570>(東2)も外せない。

■豪雪被害発生に備えて復旧・復興関連株やホームセンター株、タイヤ株にも先回り買い

 不幸にも厳冬で豪雪被害が続発する場合に備えて、復旧・復興関連株にも網を張って置きたい。ショベルの浅香工業<5962>(東2)の株価即効性は毎回、目を見張るほどで、建機レンタルのワキタ<8125>(東1)、サコス<9641>(JQS)、カナモト<9678>(東1)、西尾レントオール<9699>(東1)まで関連株買いが広がりそうだ。次いで除雪用具に買い物客が殺到して品切れ続出となる店舗風景がテレビ・ニュースで大写しされるようならホームセンター株にも出番が回り、低PER水準にあるLIXILビバ<3564>(東1)、コーナン商事<7516>(東1)、コメリ<8218>(東1)などを中心に買い進まれることになりそうだ。

 またこのところ業績の下方修正が相次いだブリヂストン<5108>(東1)などのタイヤ株のほか、タイヤ販売チェーン店のフジ・コーポレーション<7605>(東1)、G-7ホールディングス<7508>(東1)、オートバックスセブン<9832>(東1)、イエローハット<9882>(東1)などが冬用タイヤの需要期入りとなり、浮上の可能性がある。もちろん逆に大雪歓迎の日本スキー場開発<6040>(東マ)は、月次の来場者数を伸ばし、株式分割の権利落ち後安値からの底上げをサポートすることになりそうだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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