【社長インタビュー】Eストアーの石村賢一社長に現況と今後の展望を聞く
- 2018/12/11 10:30
- IRインタビュー
Eストアー 代表取締役・石村賢一社長
時代の要請に合わせ、ネットショップへの「EC総合支援サービス」を積極拡大
Eストアー<4304>(JQS)は、EC総合支援ソリューションを展開している。同社は、アマゾンや楽天市場といったECモール店ではなく、企業のEC本店(専門店)向けを中心に販売システムを提供。現在は、ネットショップに「売れるノウハウ」マーケティングの提供を強化し、総合的に支援する「EC総合支援サービス」を拡充している。また、この8月には電子認証事業にも進出した。「ネットショップの信用力も高める」と話す代表取締役・石村賢一社長に、当面の展望などを聞いてみた。
マーケティングサービス事業の売上高は10億円に届き、収益の柱に育つ
――今期の業績予想は増収減益の計画としていますが、主な要因を教えて下さい。
【石村】 ひとことで言えば今は転換期ということであり、「踊り場」にあるためだ。当社は、独自ドメインネットショップの「カート」(買い物かご)を15年程前に国内で初めて導入した。そのEC販売システム「ショップサーブ」を中心に拡大してきたが、時代の要請に合わせ、数年前から、EC事業者を対象に総合的な支援を行う会社を目指して事業構造を切り替えている。そのための投資を積極的に行っている。
というのは、ITやAIが急速な進歩を遂げ、IoTの時代が本格的に到来してきた現在、単なるソフトやITシステムは真似ること、コピーすることが容易になってきたことがある。EC販売システムの分野も次第に差別化がなくなりはじめている。ここ数年はEC販売システムを生業とする業者が増え、競争が激化してきた。
こうした動きは、ある意味、当然のことで、小売りEC事業者も増えており、今後はECで「買われるためのノウハウ」「売れるノウハウ」へのニーズが高まってくるだろう。こうしたことを予想していたので、今後必要になってくる武器…つまり「調査・分析」や「企画・クリエイティブ」、そして「課題発掘」などのマーケティング力を強化し、これらを含むEC総合支援会社へとシフトするために切り替えを図っているところだ。
具体的には、ECコンサルティングやホームページ制作代行、人を集めるための広告宣伝代行といった業務になる。こうした業務は機械ではなくヒトが得意とするサービスであり、当社が今まで培ってきた専門店ECの取引経験やデータの蓄積が活きてくる。冒頭で挙げたような真似、コピーに浸食されにくい分野になる。
すでに、マーケティングサービス事業の売上高は10億円に届き、収益の柱に育ってきた。今期の連結売上高の見通しは56億円。引き続き強化している時期だ。また、マーケティング領域の中でも、機械が得意とするものについては、先行してシステム化を進めている最中だ。
最初に「踊り場」といったが、抜け出るために投資は継続する。もちろん利益内で行う。
EC市場はアマゾン型の消費財を中心とした拡大から専門店型優位の拡大へ移行
――EC市場が成長を続ける中で、モール店、自社本店の現状と展望をお願いします。
【石村】 EC市場は2017年度で市場規模が16.5兆円に達し、まさに右肩上がりで成長を続けている。2023年には26兆円との試算があり、今後も成長は続くだろう。ただ、現在までの成長は、「モール」と言われる、アマゾンなどが得意とする消費財を中心とした商材による成長であり、この先は次第に伸びが鈍化するとみている。
なぜかというと、高齢化が進むにつれてモノ、消費財の購入は縮小していくだろう。あのアマゾンもリアル店舗でのビジネスに舵を切り出して注目されたが、それが見えていることの裏付けだと思う。ただし、コト軸消費は伸びてくると予想する。
高齢化とはいっても、現代は、生活年齢の若い方、元気な方が増え、可処分所得にも余裕のある世代だ。若い時にはできなかったコトや手が出せなくて買えなかったモノなど、趣味・嗜好品、お友達との時間、特に女性向けの美容、理容品などコト軸消費が買われ出す傾向になる。こうしたこだわりのモノは、アマゾンのようなモールよりも専門店が優位だ。なので、専門店のECは今の数倍は伸びてくると予測している。当社の顧客、当社にとっても、これから伸びる「伸びしろ」のある市場だと見ている。
電子認証事業にも進出しネットショッピングサイトの信用力を高める
――子会社を設立した経緯を教えてください。
【石村】 今年、2018年8月に電子認証事業(注・サイト証明書や企業証明書の登録・発行事業)、を買収し、子会社化した。この背景は、ブラウザベンダーによる「危険サイト表示」を防止し、ネットショッピングサイトの信用力を高めること、ひいては売り上げの低下といった弊害から保護することだ。
「危険サイト表示」は、ホームページのアドレスの横に鍵(カギ)のマークとともに出てくる「保護されていない通信」あるいは「保護された通信」という表示のことで、今年9月からベンダー各社が表示している。これは、フィッシングサイト詐欺などから消費者(アクセス者)を守るために、グーグル(クローム)を筆頭に、アップル(サファリ)など、SSL証明書がインストールされていないサイトを対象に「危険表示」を出すというものだ。
この対策として、当社の「ショップサーブ」を利用する店舗については、すべてに対して無料でSSL証明書を提供し、完全実装させた。9月末日段階で100%を達成した(いろいろな理由で辞退される顧客を除く)。ここまでは当社にとってコストになるが、申し上げた通り、「ショップサーブ」利用店舗の信用力向上や売り上げ低下防止などにつながっている。
現在は、サイトの実在を証明する「DV証明書」、企業の実在を証明する「OV証明書」、それがより強化された「EV証明書」などがあるが、今後は、外販を強化するほか、より消費者保護のセキュリティが高まるので、取引証明書や信用証明書、これらを利用したエスクローサービス(注・預り金の商品受け取り後の支払い)などの次世代証明書によって収益化を進める計画だ。
――11月初旬に第1回の転換社債型新株予約権付社債を発行しました。
【石村】 少々ひねった答えになるかもしれないが、主目的は「外部からの経営視点の導入」だ。外部目線を経営に取り入れることにより、社内からでは見えない盲点をあぶりだせる経営体制にし、当社を次のステージに上げるスピードを加速させるためだ。また単に外部から人材を登用するよりも、資本を共有する人材のほうが真剣に取り組んでくれるという期待もある。そして、転換社債という形式をとった性質上、同時に10億円近い資金も得られるため、当社のボトルネックとして、人材リソースにかかわる育成、採用や労働環境の整備、電子認証事業の拡大などに活用する計画だ。
――最後に、貴社の株価水準(12月3日は900円前後)についてご感想を。
【石村】 経営者なら誰でも自社の株価の先行きに自信を持っていると思う。当社はいま、EC総合支援会社へとシフトするための「踊り場」にあるため、多少先を展望すると、踊り場を経て再び拡大基調に移行するとともに今年8月や2年ほど前の高値水準を回復し、その後は、これらの高値水準の2倍、3倍に評価してもらえる時期が来ると思う。
――ありがとうございました。