【どう見るこの相場】平成最後の大納会を前に「昭和は遠くなりにけり」の感慨とともに見直し余地のある「昭和銘柄」に浮上も期待
- 2018/12/17 08:15
- どう見るこの相場
平成最後の師走相場だというのに、国内市場、海外相市場とも値動きの荒い株価推移が続く。急上昇もするが急降下もするまるで高速エレベーター相場である。無理もない。アップサイドの好材料は露程にも見当たらず、ダウンサイドのリスク材料ばかりが目白押しだからだ。この師走相場の平成最後の大納会が大引けしたあと、平成相場のそれぞれのシーンを思い起こし30年間のパフォーマンスの心穏やかでない総括を迫られる投資家は少なくないはずだ。
俳人の中村草田男は、「降る雪や 明治は 遠くなりにけり」と吟じた。人口に膾炙した名句で、昭和6年の作という。今年は、元号が慶応から明治に改元されて150年、さらに大正を経て、昭和と改元されてから92年となる。中村草田男の名句は、明治から20年余が経過した昭和早々に明治を述懐して詠まれたものだ。平成最後の師走相場は、その昭和が平成に改元され、30年が経過することになる。来年5月に新元号に改元されるのを前に中村草田男に倣って「昭和は遠くなりにけり」と吟ずる余裕が市場に果たしてあるだろうか?あるとしたらどんな感慨になるだろうか?
結局、株式相場にとって東証再開後の「昭和」は、暴騰も暴落も、数知れないショック安もバブルもあったが、1989年にバブル相場がはじけるまで株価は結果として右肩上がりであった。「バイ アンド ホールド」で買った株を保有していればそこそこのリターンは期待できたのである。その昭和の儲けをすべて吐き出さされたのが平成だった。株価は、底割れに続く底割れで、平均的な投資家は、塩漬けにした保有株を戻りで外す「やれやれの売り」を続けてきた30年ではなかったと推察する。そうした投資家は、来年5月の改元でスタートする新時代が、ハッピーな相場展開になってくれることを願わずにはいられないはずだ。
そんなに懐かしい「昭和」の思い出とともに、現在只今、見直し余地のある「昭和」もある。社名に「昭和」を冠した銘柄である。ザッと13社あって、設立は古いところで昭和8年、戦後設立の会社も3社含まれていて、株式上場は、2社が平成12年と遅いがそれ以外は、昭和の代で株式上場を実現している。この「昭和」銘柄に見直し余地があるというのは、この10月、11月に業績の上方修正する銘柄もあって、業績はそこそこに推移し、にもかかわらず年初来安値まで売られ、低PERに放置されている銘柄が多いからである。「掉尾の一振」と「掉尾の三振」が混ぜこぜとなる内外市場の乱高下にはフォローできずに、大納会では、「昭和は遠くなりにけり」と感慨を抱きそうな向きは、見直し余地のある「昭和銘柄」に浮上を期待してみるのも一法となりそうだ。
■上方修正の2銘柄をリード役に「昭和銘柄」12銘柄は低PER・PBR修正へ
見直し余地のある「昭和銘柄」の代表は、昭和産業<2004>(東1)とショーワ<7274>(東1)である。昭和産業は、製品価格の値上げ浸透と積極的なM&A効果で今3月期第2四半期累計業績が好調に推移して3月通期業績を上方修正して増益率を伸ばした。ショーワは、今3月期業績の上方修正で前期の過去最高をさらに伸ばし、中間配当を増配した。両社の株価とも、この上方修正も全般波乱相場との綱引きで反応は限定的で、昭和産業は、PER14倍台、PBR1.1倍、ショーワは、PER5倍台、PBR1倍割れと割り負けている。
このほか割り負けが目立つ「昭和銘柄」を上げると、コード番号順に昭和パックス<3954>(JQS)、昭和電工<4004>(東1)、昭和システムエンジニアリング<4752>(JQS)、昭和化学工業<4990>(東2)、昭和シェル石油<5002>(東1)、昭和電線ホールディングス<5805>(東1)、昭和鉄工<5953>(福)、昭和真空<6384>(JQS)、昭和飛行機工業<7404>(東2)、昭光通商<8090>(東1)である。
このうち昭和電工、昭和シェルの2社は、早い段階で今期の業績を上方修正し秋相場で年初来高値をつけたが、その後はこの上方修正値を据え置いたことで材料出尽くしとして年末相場で年初来安値まで売られるなど低迷した。昭和シェルは、来年4月の出光興産<5019>(東1)との経営統合とともにトレードネームとして「出光昭和シェル」は残るものの、商号は出光興産に変更予定であり、「昭和」の思い出作りとしての期末の大幅増配の権利取りは一考余地がある。また昭和飛行機のPER評価は、割高なものの、その保有する土地含み益が株高の根拠となって、あの昭和の最後の地価バブル相場の面影を色濃く残しており、見直し材料となる可能性もある。
■日本最古の松井建設を筆頭に老舗企業トップ20位銘柄にも割り負け訂正余地
見直し余地のあるのは、「昭和銘柄」だけでないという声も聞こえてきそうだ。なかでも創業が400年、300年以上前に遡る老舗企業は、明治、大正、昭和、平成どころか幾多の改元を乗り越えなお企業体をキープしている。例えば上場企業で最古の歴史を誇る松井建設<1810>(東1)の創業は、天正14年(1586年)で、松井角右衛門が、加賀百万石の第2代目藩主前田利長の命を請け越中守山城の普請に従事したのが始まりで、豊臣秀吉が天下を取った直後であり、天下分け目の関ケ原の合戦、大坂冬の陣、大坂夏の陣さえ経験し、社寺建築で技術を磨き一般建設に進出している。その松井建設の株価は、年初来安値に迫るわずか3ケタで、PERは7倍ソコソコ、PBRは0.6倍と建設セクターのなかでも割り負けている。
松井建設のほか老舗企業ランキングのトップ20位にランクインする銘柄で割り負けが目立つのは、創業が1590年で住友グループのルーツ会社の住友金属鉱山<5713>(東1)、1658年創業の大木ヘルスケアホールディングス<3417>(JQS)、1665年創業のマミーマート<9823>(JQS)、1666年創業のユアサ商事<8074>(東1)、1669年創業の岡谷鋼機<7485>(名1)、1691年創業の住友林業<1911>(東1)、1804年創業の清水建設<1803>(東1)、同じく1804年創業のテクノアソシエ<8249>(東2)などとなる。住友金鉱は、今3月期業績の下方修正と減配を発表して年初来安値まで急落し、インドネシアでのニッケル鉱石加工の製錬所建設に2000億円を投資する一部報道で300円幅の底上げをしており、今後の金属価格の動向次第で再底上げの展開も想定される。(本紙編集長・浅妻昭治)