【アナリスト水田雅展の銘柄分析】ラクーンは中期成長力を評価して13年11月高値目指す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 企業間電子商取引(EC)サイト運営のラクーン<3031>(東マ)の株価は3月17日に836円まで上伸した。その後は利益確定売りで一旦反落する場面があったが素早く切り返しの動きを強めている。15年4月期の大幅増益見通しや自己株式取得を好感する流れに変化はなく、中期成長力も評価して14年1月の905円、さらに13年11月の高値993円を目指す展開だろう。

 アパレル・雑貨分野の企業間ECサイト「スーパーデリバリー」の運営を主力として、クラウド受発注ツール「COREC(コレック)」事業、BtoB掛売り・請求書決済代行サービス「Paid(ペイド)」事業、売掛債権保証事業など周辺分野にも事業領域を広げている。14年12月にはアパレル大手のワールドが企業間ECサイト「スーパーデリバリー」に出展した。

 14年11月には子会社トラスト&グロースがスタンドファームと業務提携した。スタンドファームのクラウド請求書管理サービス「Misoca」登録業者に対して売掛保証サービスを提供する。12月には子会社トラスト&グロースがトラボックスと業務提携した。荷物を運んで欲しい人とトラック運送業者を結ぶオンライン物流サービス「トラボックス」登録会員に対して運賃全額保証サービスを提供する。

 15年2月には「Paid」事業の売掛債権流動化を、りそな銀行と信託受益権方式で3月から実施すると発表した。事業規模の拡大を加速するには、ある程度余裕のある運転資金が必要なためとしている。

 3月6日には「Paid」加盟企業数が1200社を突破したと発表した。11年10月に開始したサービスで当初はアパレルや雑貨の卸メーカーがメインの加盟企業だったが、サービス改良によって業種・業態を問わず、あらゆるBtoB向けサービスに導入できるようになった。

 そして4月1日開始の三菱自動車工業<7211>の新サービス「三菱自動車 電動車両サポート」に「Paid」サービスが導入され、3月19日にはグラフィックが運営する「印刷の通販グラフィック」(15年1月現在、27万件の法人・個人会員登録)へのサービス提供開始、3月31日にはGMOコマースが運営するO2O事業へのサービス提供開始を発表した。

 なお企業間ECサイト「スーパーデリバリー」流通に係る売上高に関して、従来は出展企業と会員小売店が「スーパーデリバリー」を通じて取引した金額を売上高計上(総額表示)し、商品仕入高も売上原価に計上していたが、15年4月期から、商品仕入高を売上高と相殺して表示する方法(純額表示)に変更した。この変更によって「スーパーデリバリー」流通に係る売上高は出展企業から徴収するシステム利用料売上となる。従来の総額表示に比べて見掛け上の売上高は減少するが利益に変更はない。

 今期(15年4月期)の連結業績見通し(1月15日に増額)は売上高が前期比6.1%増の20億50百万円、営業利益が同31.6%増の3億25百万円、経常利益が同33.1%増の3億30百万円、純利益が同62.6%増の2億円、配当予想(1月15日に増額)が同2円55銭増配の年間6円80銭(期末一括)としている。

 企業間ECサイト「スーパーデリバリー」での取引量が拡大し、売掛債権保証事業の保証残高も順調に増加する。利益面では「スーパーデリバリー」運営におけるコスト構造改革が順調に進展し、売掛債権保証事業で保証履行が抑制されていることも原価押し下げ要因となる。また「Paid」事業も加盟企業数増加に伴って収益改善が進展する。

 第3四半期累計(5月~1月)は前年同期比5.9%増収、同38.3%営業増益、同39.8%経常増益、同50.2%最終増益だった。EC事業「スーパーデリバリー」流通額が同3.6%増と好調に推移し、売掛債権保証事業も順調に拡大した。また「Paid」事業の赤字縮小も寄与した。

 15年1月末時点のECサイト「スーパーデリバリー」会員小売店数は14年4月期末比2957店舗増加の4万3398店舗、出展企業数は同109社増加の1057社、商材掲載数は同1115点減少の45万2000点、そしてクラウド受発注ツール「COREC」ユーザー数は1620社となった。

 なお四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(5月~7月)4億90百万円、第2四半期(8月~10月)5億06百万円、第3四半期(11月~1月)5億22百万円、営業利益は第1四半期57百万円、第2四半期93百万円、第3四半期1億04百万円と拡大基調である。

 そして通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が74.0%、営業利益が78.2%、経常利益が77.6%、純利益が79.5%と順調な水準である。ストック型の収益構造であることを考慮すれば通期業績は再増額の可能性があるだろう。

 来期(16年4月期)もECサイト「スーパーデリバリー」流通額が増加基調であり、14年9月ビジネスプラン課金開始したクラウド受発注ツール「COREC」事業の寄与も本格化する。そして売掛債権保証事業や「Paid」事業の収益改善も本格化する。ストック型の収益構造であり、中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお2月25日発表の自己株式取得(取得株式総数の上限28万株、取得価額総額の上限2億円、取得期間15年2月26日~4月30日)については、3月31日時点累計で取得株式総数が21万6400株、取得価額総額が1億6503万9000円となっている。

 株価の動きを見ると、1月下旬に500円近辺でのモミ合いから上放れ、強基調の展開となって3月17日の836円まで上伸した。その後は利益確定売りで3月26日に706円まで反落する場面があったが、素早く切り返しの動きを強めている。15年4月期の大幅増益見通しや自己株式取得を好感する流れに変化はないだろう。

 4月1日の終値816円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS34円17銭で算出)は23~24倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間6円80銭で算出)は0.8%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS264円17銭で算出)は3.1倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。中期成長力も評価して14年1月の905円、さらに13年11月高値993円を目指す展開だろう。

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