アイリッジは底打ちのタイミング、電子地域通貨事業など事業領域拡大加速して中期成長期待

 アイリッジ<3917>(東マ)はO2Oソリューション事業をベースとして、電子地域通貨事業など事業領域拡大戦略を加速している。19年3月期(連結決算に移行して8ヶ月決算)は、月額報酬の伸長やM&Aの効果で実質増収増益予想である。中期経営計画では目標値に21年3月期営業利益4~5億円(18年7月期実績49百万円)を掲げた。中期成長が期待される。株価は地合い悪も影響して上場来安値圏だが、底打ちのタイミングだろう。

■O2Oソリューション事業が主力

 位置情報連動型プッシュ通知popinfo提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を主力としている。

 09年サービス開始したpopinfoはスマホアプリに組み込み、アプリユーザーに伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報を、プッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。実店舗への誘導・集客や販売促進に高い効果を発揮する。O2Oマーケティングやオムニチャネル化の進展も背景として、業種を問わず大企業のアプリ中心に採用されている。

 導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調で、導入アプリ数は300超に達している。popinfo利用ユーザー数は18年7月末時点で8781万となった。なおiOS12の仕様変更で利用ユーザー数の取得が困難になったため、新たな指標としてpopinfo ID発行数を公表する。ID数は18年7月時点で1億2005万、18年10月時点で1億2979万となった。

■O2O事業の進化と事業領域拡大目指す

 中期成長戦略としてO2O事業の進化、および新規事業・サービスによる事業領域拡大を加速している。18年6月にはロケーションデータ(位置情報)を活用した広告配信を展開するクロスロケーションズと業務提携し、同社株式の一部を取得した。ロケーションビジネス領域における広告ソリューションの提供を推進する。

 また18年5月にはデジタルガレージ<4819>と資本業務提携し、デジタルガレージが当社の第2位株主となった。そして18年8月デジタルガレージからセールスプロモーション主力のDGマーケティングデザインの株式80%を取得(連結子会社化)した。

 O2Oマーケティングの「効果を創出する」プロダクトとしてpopinfoのアプリデータマーケティング機能を一段と強化するとともに、DGマーケティングデザインとの連携によってフィジカルマーケティング領域に展開し、オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~SRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。

■電子地域通貨事業の展開加速

 電子地域通貨事業は18年8月子会社フィノバレーを設立し、パートナー企業4社から出資(合計11.5%)を受け入れて、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースに展開を加速している。

 電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」は、電子通貨運営会社が短期間で安価に開始できるプラットフォームである。支払方法としてQRコード読取方式を採用し、スマホアプリを使ってチャージから決済まで可能にしている。popinfoと組み合わせてマーケティング機能を融合した決済基盤を構築できる。

 飛騨信用組合「さるぼぼコイン」は17年12月商用利用を開始した。18年2月には伊予銀行「IYOGIN CO-in」の実証実験を開始、18年7月には小田急電鉄「新宿シネバルコイン」の実証実験に採用された。18年10月には木更津市役所・君津信用組合「アクアコイン」が商用利用を開始した。また九州全域のキャッシュレス決済インフラ整備を目的とした九州キャッシュレス観光アイランド推進コンソーシアムに参画した。

■新規事業も展開

 新規事業では18年8月、デジタルガレージの子会社で分譲マンションのチラシ制作など、不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して、不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。

 18年9月にはスマートスピーカー(AIスピーカー)向けアプリ開発プラットフォーム「NOID」を提供開始した。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。18年12月には「NOID」を使ってノンプログラミングで作られたAlexaスキルの延べ利用ユーザー数が5000を突破、延べ発話数が3万3000を突破した。

■ストック型収益の構成比上昇、事業領域拡大効果も期待

 収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。月額報酬はpopinfo利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型収益である。

 現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期(2月~4月)の構成比が高い特性がある。また案件の大型化に伴ってアプリ開発・コンサル等の売上が変動しやすい特性がある。ただしpopinfo ID数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇と事業領域拡大効果が期待される。

■19年3月期(連結決算に移行して8ヶ月決算)増収増益予想

 19年3月期(連結決算に移行、決算期変更で18年8月~19年3月の8ヶ月決算)の連結業績予想は、売上高が32億円~34億円、営業利益が65百万円~1億05百万円、経常利益が65百万円~1億05百万円、純利益が20百万円~45百万円のレンジ予想としている。月額報酬の伸長やM&Aの効果で実質増収増益予想である。

 第1四半期は売上高が10億04百万円、営業利益が41百万円の赤字、経常利益が39百万円の赤字、純利益が43百万円の赤字だった。連結子会社は会社分割で設立した電子地域通貨事業のフィノバレー、デジタルガレージから取得したセールスプロモーションのDGマーケティングデザインである。

 売上高はDGマーケティングデザインの新規連結も寄与して前年同期の単体実績比大幅増収だったが、販管費の増加などで営業利益、EBITDAは減益だった。ただし概ね計画水準としている。

 通期予想(8ヶ月決算)に対する進捗率は低水準の形だが、親会社アイリッジ、および連結子会社DGマーケティングデザインとも、3月を含む第3四半期の売上構成比が大きいという季節要因があるため、ネガティブ要因とはならない。通期ベースで好業績を期待したい。

■中期経営計画で21年3月期営業利益4~5億円目標

 18年5月以降の複数の資本業務提携に伴って連結決算に移行したため、新たに中期経営計画を策定した。目標値には21年3月期売上高65億円、営業利益4~5億円、EBITDA5~6億円を掲げた。なお18年7月期の単体実績は売上高15億40百万円、営業利益49百万円、EBITDA1億14百万円だった。

 基本戦略として、企業・ユーザー間のコミュニケーション&エンゲージメントを高めるソリューションにフォーカスし、トータル・エンゲージメント・ソリューションを推進する。3つの事業領域(O2Oマーケティングなどのデジタル・フィジカルマーケティング領域、電子地域通貨などのフィンテック領域、不動産テックなどのライフデザイン領域)において、各々の成長を進めるとともに、有機的な事業融合によってシナジーや新規事業の創出も推進する。中期成長が期待される。

■株価は底打ちのタイミング

 株価は12月20日に700円まで下押した。地合い悪も影響して上場来安値圏だが、底打ちのタイミングだろう。12月20日の終値は716円、時価総額は約47億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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