【話題】米中貿易戦争が日本に与える影響

米中の貿易戦争激化

米中の貿易戦争激化のタイムリミッドは米国が中国に宣告した19年2月末。トランプ米政権は、18年12月の米中首脳会談で中国に対し対米貿易黒字の大幅削減、知財侵害などに変化がなかった場合、18年に課した2000億ドル相当の中国輸入品に対する10%の追加関税を3月2日から25%に引き上げ、さらに中国からの全輸入品に追加関税を課す用意もあると明言した。米通商代表部(USTR)は18年11月28日、中国の輸入車に課している現行27・5%の関税を40%への引き上げを示唆する声明を発表。

さらにトランプ政権は、18年8月に成立した「2019年度米国防権限法」により、安全保障上の理由で19年8月13日以降、中国通信機器メーカー5社(ZTE、ファーウェイ、ハイクビジョン、ダーファ・テクノロジー、ハイテラ)は、製品を米政府関連機関に納入できないし、部品でさえ他社経由で納入できない。さらに20年8月13日以降は同5社の製品を社内で使用している企業は、政府関連機関と一切取引ができなくなる。すでに昨年、中国半導体大手(JHICC)に対して、米国企業への輸出を規制した。

中国は19年1月1日から700品目余りの輸入関税を引き下げ、一部品目は関税なしとなる。1月(日時未定)の米中首脳会談に備えた動きである。トランプ政権の「中国製造2025」を警戒した政策では、日本の半導体製造装置や電子部品メーカーも「対岸に家事」ではない。

「世界の工場」中国では、この5社の製品に搭載される日本製電子部品、5社製品を使用した台湾や日本メーカーの家電や通信機器の部品・製品、19年8月以降は米国の使用規制強化による世界サプライチェーンの混乱が避けられない。ハイテク機器も「米国第一」の覇権は侵させないというトランプ政権の意思表示である。18年12月にはトランプ政権発足時の主要閣僚はペンス副大統領を除いて、すべて辞職、罷免され、もう「米国第一のイエスマン」、トランプ氏への忠誠を誓う閣僚しかいない。

対日赤字削減で注目は

交渉上手のビジネスマン、トランプ氏は、中国への強硬策を日欧に見せつけ暗に恫喝だ。米国際貿易委員会(ITC)は、18年12月、19年1月14日以降に開始される日米物品貿易協定(TAG)交渉を前に公聴会を開催、自動車産業労組は日本政府が為替を円安に誘導することで米国自動車生産者が不利になっていると主張し、通貨安誘導を禁止する「為替条項」の導入を求めた。ITCは貿易に関する報告書を、19年1月下旬をめどに通商代表部(USTR)に提出する。USTRも18年12月中に対日貿易に関する公聴会を開き、産業界から意見を聞き、12月21日に対日交渉の基本方針の中で(日銀の)「為替操作阻止」を公式に表明した。

商務書は自動車・部品について19年2月末までに大統領に調査結果を大統領に報告する。貿易交渉中は停止している日本製自動車・部品に対する輸入関税2.5%を25%への引き上げは、米国の要求(米国製自動車の輸入拡大など)を日本が飲まなければ、追加関税の実施となる。合意しても、しなくても自動車・部品産業は打撃で、輸出台数を削減、米国で増産となれば、日本最大の輸出産業、外貨獲得産業、国内総生産(GDP)を押し上げている産業の縮小、国内雇用減少となり、景気後退の引き金(米国には雇用増加)となり、株価は調整を迎えるだろう。

その対抗策として、牛肉、大豆、トウモロコシなど米国農産物や長期契約が基本の天然ガス、シェールオイルなど資源の恒久的大量輸入がある。金額的にジェット戦闘機では間に合わないし、選挙を前に兵器購入では世論の反発もある。安い米国農産物の流入拡大は外食産業や倉庫物流産業には恩恵大だろう。

国内景気はいつ腰折れ

経済協力開発機構(OECD)は11月21日、19年の世界経済成長率(GDP)が3.5%に鈍化するとの見通しを発表(9月発表予測3.7%)。貿易摩擦と米国の金利上昇が背景。米国の段階的な利上げで新興国から資本が流出する可能性が高いとし、ブラジル、ロシア、トルコ、アルゼンチン、南アフリカなどの予測を下方修正し、世界経済の「先行きには陰りが見え始めている」と強調した。英国離脱を控える欧州連合(EU)やイラン問題などを抱える中東も地政学リスクとした。OECD景気先行指数は100を割り込み下向きで世界景気の減速を示している。

日本は輸出が停滞すると指摘、19年は1.0%と9月時点の予測より0.2ポイント引き下げ、20年は19年10月の消費税増税後に消費が減退し0.7%成長とした。19年1月に日本の景気拡張期間は74カ月と「いざなみ景気」の73カ月を抜いて過去最長となり、いつ景気後退しても不思議はない。株価は景気の先行指標であり、足元の株価急落も踏まえ、GDPと株式時価総額には相関性があり警戒したい。日銀の18年11月の経済・物価レポートでは経済成長率(物価上昇率)は18年度1.4%(0.9%)、19年度0.8%(1.4%:消費税2%増税)である。不景気に強い公益株に安心感である。

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