【小倉正男の経済コラム】RIZAPグループは社内役員2人体制、執行と監督を分離

■社内役員は9人から2人に大幅削減

RIZAPグループの改革がとてつもなく迅速に進んでいる。RIZAPは、昨年末に今後にとってきわめて重要と思われる経営改革を行った。

松本晃構造改革担当が代表権を自ら返上した。RIZAPは、M&A(買収・合併)ラッシュで業績が急悪化し、“経営危機”に陥っている。RIZAPとしては、赤字に陥っているグループ企業の撤収・売却などを実施しないと生き残りは果たせない状況だ。

“隗より始めよ”、松本構造改革担当はその経営危機の責任を取る形で代表権を返上した。

それだけではなかった。9人いた社内役員は7人が退任となり、役員に残ったのは瀬戸健代表取締役社長と松本取締役構造改革担当のふたりになった。社内役員は、瀬戸社長と松本構造改革担当の1対1という構成である。

社外役員3人の監査等委員は役員会に残ることになった。役員会は、従来の12人体制から5人の構成に大幅削減となった。

これだけでも驚愕といえる人事なのだが、さらにそれだけではなかった。役員を退任した社内取締役7人のうち5人は執行役員となった。つまり、速攻で執行役員制度を導入し、経営における執行と監督の分離を行ったのである。

■経営の執行責任と監督責任を分離

今回はとりあえず暫定措置で、19年6月の定時株主総会などに本格的に経営組織改革を断行するとみられていた。時間的に無理だろうと思われていたわけである。
だが、改革は始まると意表を突くほどの迅速なスピードで進んでいる。布石は着々と打たれ、今回でほとんど経営組織改革の骨格は作られたようなものである。

とくに松本構造改革担当が問題としていたのが社外取締役、経営の執行と監督などコーポ-レートガバナンス=チェック&バランスだった。

このガバナンス問題は、瀬戸社長と松本構造改革担当との間で最終決着がついていないことが“公開“されていた。松本構造改革担当は、「ガバナンスはアグリーを得ていない」というニュアンスを漏らしていたが、これもなかば決着がつけられた格好である。

役員会は5人で構成され、うち3人は社外監査等委員である。社長を取り巻いて情実などを絡ませて役員会決定を行うなどという日本的なやり方に歯止めがかけられるとみられる。
従来の社内役員9人が社内役員2人の体制になり、経営の「見える化」は格段に促進される。語弊はあるが、山頂(トップ)を覆う雲(クラウド)が取り払われた。

新たにつくられた執行役員は5人であり、経営の執行責任を負うことになる。役員会は、経営の方向性を決めて、経営執行を監督する責任を持つ。経営の執行責任と監督責任を分担し、チェック&バランスを実現するという枠組みができたことになる。

■構造改革第一弾はガバナンス改革

こうした迅速なガバナンス改革をみると、松本構造改革担当の豪腕・辣腕はあらためて凄いなと思わないではいられない。
松本構造改革担当は、「RIZAPはワンダー体質を変えればやっていける」と第2四半期決算説明会で話している。松本構造改革担当は、ぽつんと核心に触れるスピーチをする。

RIZAPの構造改革では、ガバナンス改革が第一弾となる。これは想定を大きく上回るスピードで実現された。次は赤字を出しているグループ企業の撤収・売却になる。これが構造改革の第二弾にほかならない。

松本構造改革担当は、「大きく赤字を出している企業と向き合うしかない」と話している。
ワンダーコーポレーション、ジャパンゲートウェイ、サンケイリビングなどのグループ各社が撤収対象にならざるをえない。大幅赤字に陥っている投資キャッシュフロー(今19年3月期第2四半期35億円の赤字・前18年3月期29億円の黒字)を改善するのが緊急命題ということになる。

あとは瀬戸社長が判断を間違うことなく改革を断行するばかりである。元をたどれば瀬戸社長がカルビーから松本構造改革担当を招聘したわけであり、それがなければこうした展開はなかった。

トップと補佐役、あるいはトップと参謀役というのは、よい形で化学反応を起こすという事例はほとんど少ない。トップがトップたらず、参謀が参謀たらず、が一般的である。
その逆でトップと参謀がよいコラボレーションで事をなすのはごく稀少だ。RIZAPの場合、これから先もおそらく簡単ではない。だが、企業再生に稀少な事例をつくってほしいと思わせるのは、一体どうしたことなのだろうか。

(『M&A資本主義』『トヨタとイトーヨーカ堂』(ともに東洋経済新報社刊)、『日本の時短革命』『倒れない経営―クライシスマネジメントとは何か』『第四次産業の衝撃』(ともにPHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長・中部経済倶楽部専務理事(1971年~2005年)を経て現職。2012年から「経済コラム」連載。)

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