【アナリスト水田雅展の銘柄分析】神鋼商事はレンジ下限から切り返し、好業績見通しや指標面の割安感を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 鉄鋼・非鉄金属関連商社の神鋼商事<8075>(東1)の株価は、3月期末の配当権利落ちも影響して戻り高値圏270円台から反落したが、ボックスレンジ下限の255円近辺から切り返す動きだ。好業績見通し、低PERや低PBRといった指標面の割安感を評価して、14年9月高値285円を試す展開だろう。

 鉄鋼製品、鉄鋼原料、非鉄金属、機械・情報、溶接材料・機器などを扱う商社である。13年6月発表の中期経営計画(14年3月期~16年3月期)では、神戸製鋼所<5406>グループの中核となるグローバル商社を目指し、数値目標として16年3月期売上高1兆円、経常利益90億円、海外取引比率40%以上を掲げている。14年7月には筒中金属産業が新設分割で設立した国内卸売事業会社の株式70%を取得して子会社化した。

 また14年9月にはメキシコにおける線材二次加工拠点となる合弁会社を設立した。出資比率は当社40%、メタルワン25%、神戸製鋼所10%、大阪精工10%、メキシコGrupo Simec10%、米O&k American5%で15年末稼働を予定している。メキシコは世界の自動車・自動車部品メーカーの進出で自動車関連産業の成長が期待されており、自動車用ファスナーや冷間鍛造部品などの素材となる冷間圧造用鋼線を製造する。

 前期(15年3月期)の連結業績見通し(1月30日に売上高を減額修正、利益を据え置き)は、売上高が前々期比2.6%増の8630億円、営業利益が同22.0%増の70億円、経常利益が同20.3%増の64億円、純利益が同26.6%増の40億円、配当予想(4月28日公表)が前々期と同額の年間6円(第2四半期末3円、期末3円)としている。

 第3四半期累計(4~12月)は前年同期比2.3%増収、同20.3%営業増益、同27.5%経常増益、同67.0%最終増益だった。鉄鋼原料セグメントは同9.6%減収だが、鉄鋼セグメントが同5.7%増収、非鉄金属セグメントが同16.8%増収、機械・情報セグメントが同13.9%増収、溶材セグメントが同8.1%増収と好調に推移した。純利益は固定資産売却益も寄与した。

 四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)2140億42百万円、第2四半期(7月~9月)2124億16百万円、第3四半期(10月~12月)2140億78百万円で、営業利益は第1四半期14億90百万円、第2四半期15億55百万円、第3四半期18億28百万円と好調に推移している。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高74.2%、営業利益69.6%、経常利益74.1%、純利益76.8%である。設備投資関連は第4四半期(1月~3月)の構成比が高く、ドル高・円安が進行していることなども考慮すれば、通期利益に上振れの可能性があるだろう。

 今期(16年3月期)についても、世界的に自動車生産が高水準であることに加えて、半導体などエレクトロニクス産業の生産回復や、国内の建設需要拡大なども追い風となり、鉄鋼セグメントや非鉄金属セグメントを中心として好調に推移するだろう。グローバル展開の強化で中期的にも収益拡大基調が期待される。

 株価の動きを見ると、3月期末の配当権利落ちも影響して戻り高値圏270円台から反落したが、ボックスレンジ下限の255円近辺から切り返しの動きを強めている。

 4月3日の終値264円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS45円17銭で算出)は5~6倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間6円で算出)は2.3%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS399円53銭で算出)は0.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線を割り込んだが、52週移動平均線がサポートラインの形だ。好業績見通しに加えて、低PERや低PBRといった指標面の割安感を評価して、14年9月高値285円を試す展開だろう。

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