ゼリア新薬工業は反発の動き、19年3月期減益予想だが20年3月期収益改善期待、自己株式取得枠拡大

 ゼリア新薬工業<4559>(東1)は、消化器分野が中心の医療用医薬品事業、一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。19年3月期減収減益予想で第3四半期累計は減収減益だった。20年3月期の収益改善を期待したい。なお自己株式取得枠を拡大し、取得期間も延長する。株価は安値圏から反発の動きを強めている。19年3月期減益予想は織り込み済みで、自己株式取得枠拡大を好感したようだ。出直りを期待したい。

■医療用医薬品事業とコンシューマーヘルスケア事業を展開

消化器分野が中心の医療用医薬品事業、および一般用医薬品のコンシューマーヘルスケア事業を展開している。収益面では薬価改定、ライセンス収入・ロイヤリティ収入、研究開発費、広告宣伝費などの影響を受けやすい。

18年3月期のセグメント別売上高構成比は医療用医薬品事業54%、コンシューマーヘルスケア事業46%、その他0%、営業利益構成比(連結調整前)は医療用医薬品事業26%、コンシューマーヘルスケア事業72%、その他3%だった。海外売上比率は26%だった。

医療用医薬品事業は、潰瘍性大腸炎治療剤アサコールを主力として、H2受容体拮抗剤アシノン、亜鉛含有胃潰瘍治療剤プロマック、機能性ディスペプシア治療剤アコファイドなども展開している。子会社ティロッツ社は15年7月アストラゼネカ社から炎症性腸疾患(IBD)治療剤Entocortの米国を除く全世界における権利を取得し、16年11月国内でゼンタコートカプセルを発売した。

コンシューマーヘルスケア事業は、ヘパリーゼ群、コンドロイチン群、ウィズワン群を主力として、日本で初めて月経前症候群の効能を取得した西洋ハーブ・ダイレクトOTC医薬品プレフェミン、連結子会社イオナ インターナショナルの「イオナ」ブランド化粧品なども、全国の薬局・薬店・ドラッグストアなどに販売している。

■消化器分野を最重点領域として新薬開発を推進

消化器分野を最重点領域と位置付けて新薬開発を推進している。新薬パイプラインの状況(19年2月5日現在)は以下の通りである。

国内では、鉄欠乏性貧血を適応症とするZ-213(ビフォーファーマ社からの導入品)を承認申請中(18年3月申請)である。本剤は世界75ヶ国で承認を取得している。子宮頸癌を適応症とするZ-100(自社品)は第3相(日本を含むアジア共同治験)段階である。高カリウム血症を適応症とするZG-801(ビフォーファーマ社からの導入品)は第2相段階である。米国では15年12月販売開始し、欧州では17年7月EMA(欧州医薬品庁)から承認取得している。

海外では、潰瘍性大腸炎を適応症とするZ-206(自社グループオリジナル品)を中国で承認申請中である。機能性ディスペプシアを適応症とするZ-338(自社品)は欧州で第3相段階である。なお潰瘍性大腸炎を適応症とするTP05(自社グループオリジナル品)は18年12月欧州で発売開始した。

■19年3月期減益予想、20年3月期収益改善期待

19年3月期連結業績予想(11月2日に売上高、利益とも下方修正)は、売上高が18年3月期比2.4%減の630億円、営業利益が11.0%減の43億円、経常利益が21.4%減の40億円、純利益が13.4%減の36億円としている。配当予想は18年3月期と同額の年間34円(第2四半期末17円、期末17円)で、予想配当性向は47.4%となる。

第3四半期累計は売上高が前年同期比4.9%減の472億15百万円、営業利益が33.3%減の30億61百万円、経常利益が42.3%減の28億19百万円、純利益が26.7%減の29億円だった。

18年4月の想定以上の薬価引き下げ、競合品・後発品の影響などで減収となり、研究開発費や広告宣伝費の増加なども影響して営業減益だった。営業外費用では為替差損益が悪化した。なお特別利益に受取和解金15億79百万円を計上している。

医療用医薬品事業は9.8%減収だった。Entocort(国内販売名ゼンタコート)は国内、カナダ、北欧を中心に拡大したが、主力のアサコールの国内が薬価改定や競合品・後発品の影響で苦戦した。コンシューマーヘルスケア事業は0.8%増収だった。コンドロイチン群が競争激化で苦戦したが、ヘパリーゼ群が製品ラインアップ強化も寄与して拡大した。

通期ベースでも薬価改定、後発品・競合品の影響で減収となり、研究開発費や広告宣伝費も高水準で推移するため減益予想としている。20年3月期の収益改善を期待したい。

■株主優待は年2回、9月末と3月末の株主対象

株主優待制度は毎年9月末および3月末現在の株主に対して実施している。保有株式数に応じて自社グループ商品を贈呈する。

■株価は反発の動き

自己株式取得(18年11月2日に取得枠を拡大、取得期間を延長して上限200万株・46億円、取得期間18年6月18日~19年2月5日)については、2月5日付で取得枠を拡大(上限380万株・82億円)し、取得期間も延長(18年6月18日~19年5月10日)した。19年2月4日現在の累計取得株式数は181万8400株である。

株価は1月31日に昨年来安値1790円まで下押したが、その後は反発の動きを強めている。2月6日には2025円まで上伸した。19年3月期減益予想は織り込み済みで、自己株式取得枠拡大を好感したようだ。出直りを期待したい。2月8日の終値は1900円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS72円37銭で算出)は約26倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間34円で算出)は約1.8%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1300円88銭で算出)は約1.5倍、時価総額は約1009億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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