【アナリスト水田雅展の銘柄分析】アートスパークHDは日柄調整一巡、自動走行関連や収益改善基調を評価

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 電子書籍ビューアやグラフィクス制作支援ソフトのアートスパークホールディングス<3663>(東2)の株価は、2月の上場来高値1350円から反落したが1000円近辺で下げ渋りの動きを強めている。日柄調整が一巡して再動意のタイミングのようだ。自動車の自動走行関連というテーマ性や収益改善基調を評価して2月高値を試す展開だろう。

 グラフィクス技術のセルシスとエイチアイが12年4月に統合した持株会社である。電子書籍ビューア「BS Reader」やグラフィクスソリューションなどのコンテンツソリューション事業、マンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO」などグラフィクスコンテンツ制作支援ツールのクリエイターサポート事業、3Dグラフィックス描画エンジンなどのUI/UX事業を展開している。

 セルシスが提供するマルチデバイス対応電子書籍ビューア「BS Reader」は、インフォコム<4348>グループのアムタスの電子書籍配信サービス「ekubostore」や、ソフトバンクモバイルのスマートフォン向け総合電子書籍サービス「スマートブックストア」など897以上の電子書籍配信サービスで利用されている。

 セルシスが提供するマンガ・イラスト制作ソフト「CLIP STUDIO PAINT」について3月23日に出荷本数が100万本を超えたと発表し、4月3日にはセルシスが運営するクリエイターの創作活動応援サイト「CLIP」におけるクリエイター登録者数が50万人を超えたと発表している。

 UI/UX事業では、エイチアイの組み込み機器向けUI開発環境「UIコンダクター」が、14年11月にマツダ<7261>のHMI(ヒューマン・マシン・インターフェース=人間と機械が情報をやり取りするための手段・装置・ソフトウェアなどの総称)先行開発環境に採用されている。

 戦略分野に対して積極投資を推進し、13年12月にエイチアイが自動走行関連ベンチャーのZMPの第三者割当増資の一部を引き受けた。また14年2月にエイチアイがエイチアイ関西の株式を取得、14年4月にエイチアイが組み込み機器向けソフトウェア開発のユーアイズデザインの株式を取得した。

 なおエイチアイは、15年1月の自動車次世代技術専門展「オートモーティブ ワールド2015:第3回コネクティッド・カー EXPO」に、次世代車載HMIや自動走行関連ベンチャーのZMPとのコラボレーションデモを展示した。また米国で開催された世界最大規模の家電見本市CESにおいても次世代車載HMIをデモ展示した。

 今期(15年12月期)の連結業績見通し(2月6日公表)は、売上高が前期比13.7%増の43億49百万円、営業利益が同81.5%増の1億81百万円、経常利益が同58.1%増の1億48百万円、純利益が同2.1倍の1億25百万円の大幅増収増益としている。配当については無配継続としている。

 今期の主要施策として、グループ共通コアエンジン開発と製品化への展開、コンテンツソリューション事業における「CLIP STUDIO」技術ノウハウを生かした法人向けグラフィクス関連分野の強化、クリエイターサポート事業における「CLIP STUDIO」シリーズの拡販、国内市場の直販率拡大および海外マーケット立ち上げ、UI/UX事業における市場拡大戦略を掲げている。製品開発の効率化や原価管理の徹底も寄与して収益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、急伸した2月23日と24日の上場来高値1350円から反落して調整局面だったが、1000円近辺で下げ渋りの動きを強めている。日柄調整が一巡したようだ。

 4月3日の終値1030円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS18円80銭で算出)は55倍近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS348円84銭で算出)は3.0倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線突破の動きを強めている。また週足チャートで見るとサポートラインの13週移動平均線が接近して過熱感が解消した。再動意のタイミングのようだ。自動車の自動走行関連というテーマ性や収益改善基調を評価して2月高値を試す展開だろう。

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