【どう見るこの相場】好材料追撃の昨年12月高値銘柄は「木を見て森を見ない」投資スタンスで再度の逆行高素地

どう見るこの相場

 3連休前の日経平均株価の418円安・・・・・薄気味さを覚えた投資家の方々も少なくなかったのではないだろうか?昨年12月の急落相場と妙に符合したからだ。12月相場も、14日の日経平均株価の441円安が始まりで、そこから窓を開けて下げに拍車がかかって2400円安、26日には一時、1万9000円台を割った。その株価急落は、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、金融正常化政策を固守すると表明したことが引き金となった。同議長はその後、今年1月末のFOMC(公開市場委員会)後の記者会見で、政策金利引き上げは「様子見」と表明し、年明け後にその急落分をほぼリカバーさせたのだが、それにもかかわらずまたまた世界同時株安への警戒感が高まってきているようにもみえる。

 しかも、今回は、この急落の引き金が、ひとり米国要因のみにとどまらないのが頭の痛いところだ。EU(欧州連合)の景気の雲行きが怪しくなり、欧州委員会が、2019年の域内の実質経済成長率を大幅に下方修正してきた。さらにトランプ大統領は、習近平中国国家主席との米中首脳会談の予定はないと表明したことから、米中貿易協議が期限の3月1日までに合意するのは難しく、米国、中国、EUを含め世界景気を下押す可能性さえ危惧されている。パウエル議長は、「様子見」どころか、ことによると政策金利の引き下げに追い込まれるのではないかとの観測も出てきている。

 となると、3連休明け後の相場動向が心配になる。ソフトバンクグループ<9984>(東1)やソニー<6758>(東1)の大量の自己株式取得や、4日連続のストップ安から立ち直ったサンバイオ<4592>(東マ)への資金流入などだけで、神経質になる市場マインドを支え切れるか心許ない。しかしである。結論ありきで独断専行をするのはまだまだ性急すぎる。昨年の12月相場でも、東証第1部の8割~9割の銘柄が急落するなかで逆行高する銘柄はあったのである。ここは、例え相場の先行きが不透明化しようと、パウエル議長に倣って「様子見」と余裕を持ち個別の材料を手掛かりとする「木を見て森を見ない」投資スタンスも一考余地があるのではないか?

 そこでである。今回の当コラムでは、昨年12月に昨年来高値を更新した逆行高銘柄で、年明け後にさらに株価をフォローする業績上方修正や株式分割、増配などの追撃材料が続いた銘柄に再度の逆行高を期待するアプローチを提案したい。もちろん投資セオリーでは、「高値で出る好材料は売り」とされており、あるいは株価に織り込み済みとなる恐れもなきにしもあらずである。しかし、仮に相場全般が先行き不透明感を強めアゲインストとなるとすれば、トライしてみる価値はありそうだ。

■合計3回も業績を上方修正したゴールドウインを先陣に増配権利取り妙味株も

 昨年12月相場で逆行高した銘柄で、年明け後にさらに株価にフォローの材料が出た銘柄の代表株は、ゴールドウイン<8111>(東1)である。同社株は、3連休前の8日大引け後に今2019年3月期の上方修正と期末配当の増配を発表したが、このアスレジャー・ファッション関連のアウトドアブランド商品の好調推移を背景とした上方修正は、第2四半期累計業績も含めると今期3回目で、純利益は大きく過去最高を更新する。株価も、昨年11月の今期通期業績の上方修正で昨年来高値まで5割高と逆行高、足元ではこの急騰幅の半値押し水準を固めており、再騰展開が有力視される。

 同様に昨年10月に今期業績を上方修正したデジタルアーツ<2326>(東1)は、今年1月31日に好調な今期第3四半期決算を発表し、株式分割の権利取りで人気化したリソー教育<4714>(東1)と東証第1部市場への上場で逆行高した未来工業<7931>(東1)は、今年1月にそれぞれ今期配当を増配し、配当の権利取り妙味を示唆した。昨年10月に今期業績を上方修正した幸楽苑ホールディングス<7554>(東1)は、今年1月に業績を再び上方修正し、昨年11月に上ぶれ着地の今3月期第2四半期決算を開示したJ-オイルミルズ<2613>(東1)は、今年2月6日に今期第3四半期の高利益進捗率業績を発表し、電算システム<3630>(東1)は、昨年10月の前期第3四半期の高利益進捗率業績に続き今年1月31日に今12月期の続伸業績を発表し、前田工繊<7821>(東1)は、昨年11月の今9月期の続伸業績に次ぎ、今年2月1日に今期第1四半期の好決算を発表している。

 このほか昨年11月に2018年12月期業績の上方修正を発表して人気化したマイネット<3928>(東1)や株式分割の権利取りで逆行高したチェンジ<3962>(東1)は、今月14日にそれぞれ12月期決算、今9月期第1四半期決算の発表を控えており、動向がクローズアップされよう。

■新興市場でも5月の10連休関連株、高利益進捗株、株式分割株などが続く

 新興市場株でも逆行高再現の素地を孕む昨年12月高値銘柄は、少なくない。まず、今年5月のゴールデンウイークの10連休に関連する海外旅行関連株が上げられる。日本エマージェンシーアシスタンス<EAJ、6063>(JQS)は、昨年11月に上方修正した12月通期業績に対して高利益進捗した第2四半期決算を発表して逆行高したが、今年2月1日に海外旅行客向けの医療アシスタンスサービスが好調に推移したとしてその2018年12月期業績を再上方修正したばかりである。旅工房<6548>(東マ)も、昨年11月の今2019年3月期業績の上方修正に続いて、3連休前の2月8日にその上方修正業績を再上方修正した。また昨年12月25日に新規株式公開(IPO)され、海外体験型のオプショナルツアーのネット予約業態がIPO人気につながったベルトラ<7048>(東マ)も、初決算の2018年12月期業績の発表を今週の14日に予定している。

 ヒビノ<2469>(JQS)は、昨年11月に第2四半期の好決算とM&Aを発表して逆行高したが、今年2月4日に今2019年3月期業績の上方修正と米国企業のM&Aを同時発表した。菊池製作所<3444>(JQS)は、昨年12月21日にIPOされた自律制御システム研究所<ACSL、6232>(東マ)の保有株の売却益により今2019年4月期業績を上方修正したが、ACSLの株価自体が高値で強張っており、第4位の大株主として保有株の含み益はなお逆行高の手掛かりとなりそうだ。

 農業総合研究所<3541>(東マ)は、昨年10月の日本郵政グループの資本提携をテコに逆行高したが、今年2月28日を基準日に株式分割(1株を5株に分割)を予定しており、権利取りが盛り上がりそうだ。リンクバル<6046>(東マ)は、株式分割の権利落ちとともに前2018年9月期業績の上方修正を発表し、今年2月5日に開示した今2019年9月期第1四半期決算も大きく続伸して着地した。精工技研<6834>(JQS)は、昨年来高値更新の引き金となった昨年11月の今2019年3月期の上方修正業績に対して、3連休前の8日に発表した今期第3四半期決算が、90%超の高利益進捗率を達成した。ディーエムエス<9782>(JQS)も、昨年10月に発表した今2019年3月期第2四半期業績が、7月の上方修正値を上ぶれて着地たことを手掛かりに逆行高したが、今年1月28日に開示した今期第3四半期決算は、その通期上方修正値に対して高利益進捗率で着地し、期末配当を増配した。(本誌編集長・浅妻昭治)

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