- Home
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
- 加賀電子は戻り歩調、20年3月期からの収益性向上期待
加賀電子は戻り歩調、20年3月期からの収益性向上期待
- 2019/2/22 08:33
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
加賀電子<8154>(東1)は独立系の大手エレクトロニクス商社である。富士通エレクトロニクスを19年1月子会社化(19年3月期第4四半期から新規連結、段階的に株式取得して22年1月完全子会社化予定)した。中期目標には22年3月期営業利益130億円(19年3月期予想77億円)を掲げている。19年3月期は営業・経常減益予想(純利益は負ののれん代が寄与して14期ぶりに過去最高予想)だが、20年3月期からの収益性向上を期待したい。株価は12月安値から切り返して戻り歩調だ。出直りを期待したい。
■独立系の大手エレクトロニクス商社でEMSビジネスも展開
独立系の大手エレクトロニクス商社で、半導体・電子部品・情報機器等の商社ビジネス、および電装基板製造受託サービスのEMSビジネスを展開している。
18年3月期のセグメント別売上高構成比は、電子部品事業(半導体・電子部品、EMS)73%、情報機器事業(パソコン・周辺機器、家電・照明器具、写真・映像関連商品)20%、ソフトウェア事業(CGアニメ映像制作、アミューズメント関連商品)1%、その他事業(エレクトロニクス機器修理、アミューズメント機器製造販売、スポーツ用品販売など)6%だった。
17年10月託児機能付ワーキングスペース運営のママスクエア、AI・IoTワンストップサービスのスカイディスク、産業用ドローン開発のスカイロボットに出資した。また住友金属鉱山<5713>とSiC(シリコンカーバイド)基板開発の子会社サイコックスの株式51%譲渡契約および合弁契約を締結した。
18年2月ウェアラブルコミュニケーションデバイス開発のBONXに出資、18年3月出資先の米HARMONUS(ハーモナス)社の前立腺癌生検および治療用システム「ProBx」が米国食品医薬品局(FDA)から承認を取得、18年6月スマートセキュリティサービスのSecualに出資、18年8月ソフトバンクグループで保育クラウドサービスを展開するhugmoに出資、18年10月AIソフトウェア開発のハカルスに出資した。
なお前中期経営計画2018で掲げたベンチャー投資(3年間で50億円)では、18年10月現在、合計21社を対象に10.9億円の出資を実行している。
■富士通エレクトロニクスを子会社化してシナジー効果目指す
19年1月富士通エレクトロニクスを子会社化(富士通セミコンダクターから株式70%取得完了、19年3月期第4四半期から新規連結)した。この後20年12月15%、21年12月15%を段階的に追加取得し、22年1月完全子会社化予定である。買収総額は205億円(アドバイザリー費用等含む)の見込みで、18年12月には金融機関4社から合計230憶円の借入を行うと発表した。1年以内に中長期資金への借り換えを実施予定としている。
この買収によって売上高5000億円級の企業グループとなる。取り扱い商材の拡大や顧客基盤の共有によって電子部品事業における業界NO.1規模を目指す。現状は富士通エレクトロニクスの利益水準が低いため短期的な目標は商社ビジネスの量的拡大だが、中期的な目標として商社ビジネスとEMSビジネスのシナジー効果による収益性向上(利益額の拡大と利益率の向上)を目指す。さらにグローバル競争に勝ち残るため「世界に通用する企業」を目指す方針だ。
■19年3月期第4四半期から富士通エレクトロニクスを新規連結
19年3月期連結業績予想は、第4四半期から富士通エレクトロニクスを新規連結し、売上高が18年3月期比22.9%増の2900億円、営業利益が5.2%減の77億円、経常利益が8.5%減の80億円、純利益が12.5%増の73億円としている。純利益は負ののれん代が寄与して14期ぶりに最高を更新する見込みだ。
富士通エレクトロニクスについては、当面の利益寄与は限定的だが、第4四半期の売上寄与580億円、および子会社化に伴う負ののれん代21億円を織り込んだ。また大口顧客倒産に伴う損失引当も織り込んだ。セグメント別営業利益(連結調整前)計画は、電子部品が2%減の52億円、情報機器が23%減の17億円、ソフトウェアが74%増の3億円、その他が62%増の5億円としている。
配当予想(11月6日に上方修正、第2四半期末に創立50周年記念配当5円を増額)し、年間75円(第2四半期末35円、期末40円)としている。18年3月期の年間70円(特別配当10円含む)との比較で5円増配となる。
なお第3四半期累計は売上高が前年同期比0.2%減の1737億82百万円、営業利益が13.1%減の57億48百万円、経常利益が15.4%減の60億円、純利益が11.5%減の48億75百万円だった。売上高はEMSビジネスの車載向けや空調向けが順調に推移して概ね前年並みだったが、EMSビジネスにおける主要顧客の製品切り替えに伴う生産調整や、立ち上げ期の海外EMS新拠点の費用先行などで減益だった。ただし計画水準としている。
19年3月期は営業・経常減益予想(純利益は負ののれん代が寄与して過去最高予想)だが、20年3月期からの収益性向上を期待したい。
■22年3月期営業利益130億円目指す
18年11月発表した中期経営計画2021では、基本方針に収益基盤強化、経営基盤安定化、新規事業創出、経営目標値に22年3月期売上高5000億円、営業利益130億円、ROE8%以上を掲げている。為替前提は1米ドル=110円、売上高構成比(20年3月期からセグメント変更)は電子部品60%、EMS28%、CSI(コンシューマ&システムインテグレータ)10%、その他2%である。株主還元は連結配当性向25~35%を確保しつつ安定的な配当を実施する方針だ。
収益基盤強化では、成長分野(車載、通信、環境、産業機器、医療・ヘルスケア)への取り組み、EMSビジネスおよび海外ビジネスの強化・拡大を推進する。経営基盤安定化では、富士通エレクトロニクスをグループ化した後の効率性・財務健全性の早期改善に向けて、グループ横断的なコスト削減、組織体制整備によるグループ経営効率化、コーポレートガバナンス強化を推進する。新規事業創出ではM&Aも積極活用して、保育・福祉・介護等の社会課題ビジネスや素材ビジネスへの取り組み、ベンチャー投資によるオープンイノベーションを推進する。
EMSビジネスの成長シナリオは、オーガニック成長として、既存の中国、アセアン、欧州の生産拠点に加えて、新拠点で18年1月稼働のメキシコ、18年3月稼働のベトナム、18年10月稼働のトルコ、19年春稼働予定のインドが順次、収益寄与が本格化する。そして今後は車載、産業機械、空調、医療・ヘルスケア分野を成長ドライバーとして事業拡大を推進する。また富士通エレクトロニクスが持つ有力顧客に対して「キーデバイス+EMS」のアプローチを展開してシナジー効果を目指す。さらにEMSビジネス拡大に向けて新たなM&A機会に挑戦するとしている。
■株価は戻り歩調
株価は12月安値1726円から切り返して戻り歩調だ。2月19日には2170円まで上伸した。出直りを期待したい。2月21日の終値は2122円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS266円04銭で算出)は約8倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間75円で算出)は約3.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2571円79銭で算出)は約0.8倍、時価総額は約609億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)