【アナリスト水田雅展の銘柄分析】パイプドビッツは目先的な売り一巡、16年2月期大幅増収増益を評価して2月高値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 情報資産プラットフォーム事業のパイプドビッツ<3831>(東1)の株価は、3月31日の15年2月期決算発表で材料出尽くしとして反落した。ただし目先的な売りが一巡したようだ。16年2月期の大幅増収増益見通しを評価して、2月の年初来高値2090円を試す展開だろう。

 国内最大規模の情報資産プラットフォーム「スパイラル」を基盤として、情報資産プラットフォーム事業(データ管理などクラウドサービス提供)、広告事業(アフィリエイトASP一括管理サービス「スパイラルアフィリエイト」など)、ソリューション事業(ネット広告制作、アパレル・ファッションに特化したECサイト構築・運営受託、子会社ペーパーレススタジオジャパンのBIMコンサルティング事業など)を展開している。

 情報資産プラットフォーム事業は「スパイラル」、アパレル特化型ECプラットフォーム「スパイラルEC」、会計クラウド「ネットde会計」「ネットde青色申告」、クラウド型グループウェア×CMS×SNS連携プラットフォーム「スパイラルプレース」などを主力して展開している。

 また薬剤・医療材料共同購入プラットフォーム「JoyPla」、美容関連のヘアカルテ共有サービス「美歴」、地域密着型SNS「I LOVE 下北沢」、政治・選挙プラットフォーム「政治山」、BIM建築情報プラットフォーム「ArchiSymphony」などを展開し、14年3月にはアズベイスを子会社化してコールセンタープラットフォームサービス「BizBase」にも事業領域を広げている。

 15年2月には世界有数のソフトウェアベンダーである米スプリンクラー(SPUSA)の日本法人スプリンクラー・ジャパン(SPJ)が発行するA種優先株式を引き受けると発表した。米SPUSA社およびSPJ社が有する経営資源とのシナジー効果により、ソリューション提案や新サービス提供を実現していくとしている。

 3月1日にはパイプドビッツ綜合研究所を設立した。主に政府の政策に対して情報通信技術の活用や課題、先行事例などさまざまな調査研究や実証実験を行い、公表や提言などを通じて地域や社会の課題解決に貢献するとしている。

 また3月16日にはカレンが実施する第三者割当増資を引き受けると発表した。販売面で協力関係にあった同社との事業連携を強化する目的で、引き受け後の出資比率は39.02%となる。さらに3月31日には米SPUSA社に対する総額約400万米ドル(約4億78百万円)の出資を発表した。純投資目的としている。

 3月31日に発表した前期(15年2月期)の連結業績は、売上高が前々比26.1%増の31億73百万円、営業利益が同10.7%増の6億25百万円、経常利益が同12.2%増の億34百万円、純利益が同8.7%増の3億72百万円で、配当予想は同3円増配の年間16円(第2四半期末7円、期末9円)とした。なおROEは15.9%(前々期は18.1%)だった。

 15期連続増収で営業最高益を更新した。情報資産プラットフォーム事業が契約数増加に伴って契約売上高(月額課金)が順調に増加し、同20.8%増収と好調に推移した。機能改善・強化・アップデートも寄与した。広告事業の営業黒字化も寄与した。期末の有効アカウント数(全事業合計)は同661件増加(同6.5%増加)の1万757件となった。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(3月~5月)7億14百万円、第2四半期(6月~8月)7億98百万円、第3四半期(9月~11月)8億00百万円、第4四半期(12月~2月)8億61百万円、営業利益は第1四半期1億40百万円、第2四半期1億65百万円、第3四半期1億71百万円、第4四半期1億49百万円だった。

 今期(16年2月期)の連結業績見通し(3月31日公表)は、売上高が前期比26.0%増の40億円、営業利益が同31.2%増の8億20百万円、経常利益が同29.2%増の8億20百万円、純利益が同31.6%増の4億90百万円、配当予想が配当性向30%程度で同2円増配の年間18円(第2四半期末8円、期末10円)としている。

 主力の情報資産プラットフォーム事業が引き続き好調に推移して全体を牽引する。積極的な事業・育成・開発投資や人材採用を継続し、国内5拠点目となる名古屋営業所の開設(15年3月営業開始)で中部圏の販売網拡大も寄与する。SPJ社への出資を通じて新規事業領域であるソーシャル分野(Sprinklr事業)へも進出する方針だ。

 14年3月発表の「中期経営計画2017」では、15年2月期から17年2月期を「次世代ITベンダーへと革新する3ヵ年」と位置付けて、目標数値に17年2月期売上高92億円、営業利益28億円を掲げている。ストック型の収益構造であり、情報資産プラットフォーム事業が牽引して中期的にも収益拡大基調だろう。

 なお3月31日に、15年9月1日(予定)付けで株式移転により純粋持株会社パイプドビッツHDを設立すると発表した。純粋持株会社が9月1日(予定)付けで東証1部に上場する。経営効率の向上、組織再編の柔軟性・機動性確保、グループ全体の最適化とガバナンス機能の強化を目的として、中長期の持続的成長および企業価値向上を推進するとしている。

 株価の動きを見ると、3月31日に大幅上昇していたこともあり、15年2月期決算発表で材料出尽くしとして急反落した。ただし1800円近辺で下げ渋る動きだ。目先的な売りが一巡したようだ。

 4月6日の終値1824円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS60円76銭で算出)は30倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間18円で算出)は1.0%近辺、前期実績PBR(前実績の連結BPS326円10銭で算出)は5.6倍近辺である。

 週足チャートで見ると26週移動平均線がサポートラインとなって下値を切り上げる展開だ。目先的な売りが一巡し、16年2月期の大幅増収増益見通しを評価して2月の年初来高値2090円を試す展開だろう。

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