【どう見るこの相場】平成最後の期末相場は期末事情が働くなら不遇の2018年IPO株にリバーサル高も期待

どう見るこの相場

いよいよ3月、年度末、最近は何にでも常套句の「平成最後」が前置きされる平成最後の期末相場である。しかし、平成だろうと昭和だろうと、「株価は材料より需給」といわれるように、期末の配当権利取りや機関投資家の益出し売り、お化粧買い、さらには配当の再投資などのプラスとマイナスの需給要因が交錯し、この期末事情が株高と出れば目出度し目出度しだが、株安へ転ぶ気掛かりも少なからずある。

需給の次にポイントとなる材料の方も、期待と期待外れが交錯しそうで一筋縄の決め打ちが難しい。中国の景気浮揚策発動効果も、米中貿易協議が、合意が見送りとなった米朝首脳会談とは逆にトランプ米大統領の目論見通りのディール(取引)として成立するのかどうかで追い風にも冷や水にもなり、トランプ米大統領のロシア疑惑も、元顧問弁護士の議会公聴会証言がさらに不測の事態にエスカレートしないか心配だし、円安・ドル高要因となっている米国の長期金利がこのまま上昇を続けるのかなどなど、心許なく神経質にならざるを得ない。

となると期末相場は、主力株への強弱感が綱引きになる一方で、全般相場の影響が軽微な個別銘柄物色が増勢となることも想定される。バイオ株祭り、IPO(新規株式公開)株祭り、さらには米朝首脳会談物別れに伴う地政学リスク関連株買いなどでヒット・アンド・アウェイする相場シナリオである。この相場シナリオが進むとしたら、その一環として注目しておきたいのが2018年のIPO株である。2018年は、90社がIPOされ、このなかには公開日の高値が上場来高値となってその後下値追いを強いられ、典型的な寄り付き天井となった不遇の銘柄も含まれている。それが「平成最後の期末相場」を迎え、コーポレート・ガバナンス上からも株価復元の宿題を果たす期末事情が働き何らかの株価対策を打ち出してくる可能性があり、これを「リターン・リバーサル」の投資チャンスとして先取する期末戦術である。

この可能性を先行実証している銘柄も出てきている。例えばプロパティデータバンク<4389>(東マ)である。同社株は、昨年6月27日に公開価格1780円でIPOされ初値を4100円でつけ、IPO時の上場来高値4140円から上場来安値1575円まで下げ一方だったが、前週末1日に2日連続のストップ高と続急伸した。これは、今年2月27日に今2019年3月期業績の上方修正と期末配当の増配、さらに3月31日を基準日とする株式分割を一挙に発表したことが要因となった。また昨年3月16日に公開価格1400円でIPOされ3200円で初値をつけたフェイスネットワーク<3489>(東マ)も、寄り付き天井から上場来安値727円まで大きく調整したが、今年2月8日に今2019年3月期期末配当の30円への増配を発表したあと、2月14日にはクオカード3000円分を贈呈する株主優待制度の新設を発表して1412円まで底上げ、ようやく公開価格をクリアした。

「平成最後の期末相場」では、残り1カ月、この2銘柄を追撃するリバーサル高銘柄の続出の期待も高まるところで、公開価格を割り不遇をかこっている2018年IPO株は、要マークとなるはずだ。

――――直接上場株はソフトバンクなどに一部証券が強気の目標株価で新規カバーも――――

「リバーサル高」期待の一番手は、何といっても東証第1部への直接上場株や大型IPO株である。ソフトバンク<9434>(東1)は、IPO時の資金調達額が2兆6460億円にも達し、初値を1463円でつけたあと約2カ月半、一度も公開価格の1500円に到達したことがない。年間換算の75円配当の配当利回りが公開価格で5%に達することが下値の固さにつながっている面はあるものの、親会社のソフトバンクグループ<9984>(東1)の会長・社長の「孫正義神話」が、「平成最後の期末相場」で機能するか期待する向きもあり、今年2月に入って一部証券会社では、目標株価を1650円として新規にカバーを開始する動きも出ている。

直接上場株では、ワールド<3612>(東1)、アルテリア・ネットワークス<4423>(東1)、キュービーネットホールディングス<6571>(東1)、国際紙パルプ商事<9274>(東1)が、がいずれも公開価格を下回っており、このうちキュービーネットHDは、今年2月1日からヘアカット専門店「QBハウス」のサービス価格を1080円から1200円に値上げ、これによる客数や売り上げの動向が期末にかけ明らかになる方向にある。またワールドは、幹事証券筋が、今年2月末に投資判断「Buy」、目標株価3000円で、またアルテリア・ネットワークスは、外資系証券が同じく「Buy」、1500円でそれぞれ新規カバーを開始した。大型IPOのメルカリ<4385>(東マ)は、スマホ決済委サービス「メルペイ」人気で公開価格を上回っているものの初値には1850円もギャップがあり、MTG<7806>(東マ)は、一部証券の投資判断・目標株価引き下げも重なって公開価格の半値以下と低迷しており、何らかのリカバリー策を期待したくなる。

――――新興市場株は割安不動産株のほか働き方改革、元号改元関連などの時流性人気――――

新興市場株では、不動産関連株の不遇が目立つ。スルガ銀行<8358>(東1)、TATERU<1435>(東1)、レオパレス21<8848>(東1)など不動産セクターで不祥事が相次いだことが逆風になった面もあるが、前述した前週末に連続ストップ高を演じたプロパティデータバンクは、このセクターの一角に位置する。キャンディル<1446>(東マ)、田中建設工業<1450>(JQS)、グッドライフカンパニー<2970>(JQS)、アズ企画設計<3490>(JQS)、マリオン<3494>(JQS)、香陵住販<3495>(JQS)、リーガル不動産<3497>(東マ)などが該当し、今2月期業績を下方修正したアズ企画設計を含まれるが、PERがわずか4倍台と超割安な銘柄も少ないないだけに、プロパティデータバンクと同様のもう一押しを期待したい。

人手不足や働き方改革関連で時流に乗るはずの人材関連株でも不遇なIPO株があり、SERIOホールディングス<6567>(東マ)、ヒューマン・アソシエイツ・ホールディングス<6575>(東マ)、CRGホールディングス<7041>(東マ)、ツクイスタッフ<7045>(JQS)などは、4月1日の働き方改革関連法の施行を先取りする動きも想定される。また一時、元号関連で買われたインターネット経由の印刷物の受注販売を展開しているプリントネット<7805>(JQS)も、もう一度、元号改元関連株として買い直し公開価格1400円のクリアから初値2041円奪回に再人気化する展開も想定したい。(本紙編集長・浅妻昭治)

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