世の中と相場には噂がつきもの=犬丸正寛の相場格言

■世の中と相場には噂がつきもの

 人のいるところには、良いこと、悪いことの噂(風評)はつきものです。もちろん、度が過ぎると風評被害で生活が脅かされることにもなるので節度は大切です。とくに、噂の怖いところは、噂に尾がついて大きくなってしまうことです。

 ただ、噂は庶民の生活防衛の一端を担っているところもあるといえます。電波、新聞等が発達する前の昔は口伝えが情報の中心で、まさに、噂の全盛時代だったはずです。戦時中は、大本営発表の都合のよい情報だけが流されていたはずです。こうした、情報に制約のある時代では庶民が身を護るには噂(風評)が重要だったと言えるのではないでしょうか。

 原子力発電所問題でも、風評被害が強調されているところがあります。風評の出る原因に国内の情報より先に外国で情報が流れていたこともあったと思います。情報公開時代とはいうものの、必ずしも適切にタイミングよく情報が公開されているかどうかは分かりません。

 「火のないところに煙は立たない」ともいわれます。悪意を持った噂は別としても、自然に発生する噂(風評)には、なんらかの火種があるはずです。庶民が、「どこかおかしい」と感じているからです。仮に、事を起こした当事者が責任をそらすために風評被害を強調するとしたら間違いです。厳しく、辛いことであっても明確に情報を知らせることがコストは少なくてすむはずです。

 現在のマーケットでは、当局のタイムリー・ディスクローズ(情報公開)制度によって、噂は、以前に比べると格段に少なくなっています。それでも、噂は駆けめぐります。噂には、新しい出来事が起きるかどうかだけでなく、出来事に対する「見方、考え方、視点」という内容も含んでいるからです。見方、視点まで否定することはできません。株価の動きから経営不安を感じて早めの売却で紙屑になるリスクを避けることができたという事例も多いのです。原子力問題を、「人の噂も75日」を、逆手にとって先延ばしすることは避けてほしいものです。

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