【アナリスト水田雅展の銘柄分析】生化学工業は2月高値に接近、16年3月期の増収増益期待で上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 関節機能改善剤アルツが主力の生化学工業<4548>(東1)の株価は、自律調整が一巡して水準を切り上げている。9日は2322円まで上伸して2月高値2396円に接近してきた。16年3月期の増収増益期待で上値を試す展開だろう。

 国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け関節機能改善剤スパルツ、米国向け単回投与関節機能改善剤ジェル・ワン、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、およびLAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。高齢者人口増加を背景に関節機能改善剤の需要拡大が期待される。

 09年3月策定の「生化学工業10年ビジョン」に基づいて、研究開発は糖質科学分野に焦点を絞っている。開発中の新薬としては、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603(コンドリアーゼ)、アルツの腱・靭帯付着部症の国内適応症追加SI-657、変形性膝関節症改善剤SI-613、ドライアイ治療剤SI-614、関節リウマチ治療剤SI-615(導入品)などがある。

 SI-6603は14年1月に国内で製造販売承認申請し、米国では第Ⅲ相臨床試験を実施中である。SI-657の国内第Ⅲ相臨床試験は14年10月に完了した。SI-613は国内第Ⅱ相臨床試験を実施中である。SI-614は14年5月に米国で第Ⅱ・Ⅲ相臨床試験を開始した。SI-615は国内第Ⅰ相臨床試験を実施中である。

 14年10月には米国ニュージャージー州に駐在員事務所を開設した。ジェル・ワンおよびスパルツの拡販に向けて現地販売員への製品教育を推進し、米国市場に関する情報収集なども強化する。

 15年1月にはアルツディスポ新製剤設備(高萩工場第5製剤棟)が稼働した。第5製剤棟および第4製剤棟にアルツディスポの生産を集約することで効率化を推進するとともに、アルツディスポの中長期的な安定供給を図る。

 前期(15年3月期)連結業績見通し(5月13日公表)は売上高が前々期比1.6%減の291億50百万円、営業利益が同44.3%減の27億50百万円、経常利益が同28.5%減の42億円、そして純利益が同27.3%減の34億50百万円としている。想定為替レートは1米ドル=102円である。配当予想については前々期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)としている。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比4.5%減収、同54.3%営業減益、同33.8%経常減益、同34.6%最終減益だった。国内での薬価引き下げの影響、前期高水準だった米国向けスパルツ出荷の反動減、新生産設備稼働に伴う減価償却費の増加、開発テーマ進展に伴う研究開発費の増加などで減収減益だった。

 なお四半期別推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)75億77百万円、第2四半期(7月~9月)66億70百万円、第3四半期(10月~12月)78億28百万円、営業利益は第1四半期11億87百万円、第2四半期3億77百万円、第3四半期7億09百万円である。

 通期ベースでも、売上面では国内が薬価引き下げの影響、米国向けスパルツが前期の販売提携先での在庫積み増しの反動影響を受け、利益面では減価償却費の増加や研究開発の増加も影響して減収減益見通しだ。

 ただし通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高が75.7%、営業利益が82.7%、経常利益が90.2%、純利益が88.2%と高水準だった。今期(16年3月期)は米国向けスパルツ出荷の反動影響が一巡し、ドル高・円安進行メリットも寄与して増収増益が期待される。

 株価の動きを見ると、3月上旬~中旬の2000円近辺から切り返しの展開となった。自律調整が一巡したようだ。そして4月9日は2322円まで上伸して2月高値2396円に接近してきた。

 4月9日の終値2301円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS60円73銭で算出)は38倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は1.1%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS1140円48銭で算出)は2.0倍近辺である。

 日足チャートで見ると一旦割り込んだ25日移動平均線を突破して上伸し、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインの強基調の形となった。16年3月期の増収増益期待で2月高値2396円を試す展開だろう。

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