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アイリッジは出直り期待、電子地域通貨など事業領域拡大を加速
- 2019/4/22 07:00
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)はO2Oソリューション事業をベースとして、電子地域通貨事業など事業領域拡大戦略を加速している。19年3月期(連結決算に移行して8ヶ月決算)は月額報酬伸長やM&A効果で実質増収増益予想である。中期的も成長が期待される。株価は反発力が鈍く安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。
■O2Oソリューション事業が主力
位置情報連動型プッシュ通知popinfo提供から、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促を中心としたO2Oマーケティング企画・運用支援まで、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を主力としている。
09年サービス開始したpopinfoはスマホアプリに組み込み、アプリユーザーに伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報をプッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。導入アプリ数およびアプリ利用ユーザー数とも増加基調である。導入アプリ数は300超に達し、利用ユーザー数(ID発行数)は18年12月末時点で1億3000万ユーザーを突破した。
■O2O事業の進化と事業領域拡大目指す
成長戦略としてO2O事業の進化、新規事業・サービスによる事業領域拡大を加速している。18年6月にはクロスロケーションズと業務提携して同社株式の一部を取得した。
また18年5月にはデジタルガレージ<4819>と資本業務提携し、デジタルガレージが当社の第2位株主となった。そして18年8月デジタルガレージからセールスプロモーション主力のDGマーケティングデザインの株式80%を取得(連結子会社化)した。
O2Oマーケティングの「効果を創出する」プロダクトとしてpopinfoのアプリデータマーケティング機能を一段と強化するとともに、DGマーケティングデザインとの連携によってフィジカルマーケティング領域に展開し、オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~SRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。
19年3月にはDGマーケティングデザインとともに、NTTデータ<9613>が三井不動産<8801>「三井ショッピングパークららぽーと海老名」で実証実験開始したデジタル接客ストアのプロジェクト企画および店舗企画を支援した。
■電子地域通貨事業の展開加速
電子地域通貨事業は18年8月子会社フィノバレーを設立し、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースに展開を加速している。
電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」は、電子通貨運営会社が短期間で安価に開始できるプラットフォームである。支払方法としてQRコード読取方式を採用し、スマホアプリを使ってチャージから決済まで可能にしている。popinfoと組み合わせてマーケティング機能を融合した決済基盤を構築できる。
17年12月飛騨信用組合「さるぼぼコイン」商用利用開始、18年2月伊予銀行「IYOGIN CO-in」実証実験開始、18年7月小田急電鉄「新宿シネバルコイン」実証実験開始、18年10月木更津市役所・君津信用組合「アクアコイン」商用利用開始した。また九州全域のキャッシュレス決済インフラ整備を目的とした九州キャッシュレス観光アイランド推進コンソーシアムに参画した。
また三井物産<8031>が中心となって広島市で19年2月実証実験開始した共通ポイントプログラム「ウェルちょ」に、フィノバレーがアプリ開発技術と電子通貨活用に関する知見を提供している。
■新規事業も育成
新規事業では18年8月、デジタルガレージの子会社で分譲マンションのチラシ制作など、不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して、不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。
18年9月にはスマートスピーカー(AIスピーカー)向けアプリ開発プラットフォーム「NOID」を提供開始した。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。18年12月には「NOID」を使ってノンプログラミングで作られたAlexaスキルの延べ利用ユーザー数が5000を突破、延べ発話数が3万3000を突破した。
■ストック型収益の構成比上昇、事業領域拡大効果も期待
収益はアプリ利用ユーザー数に応じた従量課金型の月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)、およびアプリ開発・コンサル等(popinfoを組み込んだO2Oアプリ開発に係る収入、O2O促進マーケティングに係る収入)である。月額報酬はpopinfo利用ユーザー数増加に伴って収益が積み上がるストック型収益である。
現在はアプリ開発・コンサル等の売上高構成比が高いため、多くの取引先の決算月(3月)を含む第3四半期(2月~4月)の構成比が高い特性がある。また案件の大型化に伴ってアプリ開発・コンサル等の売上が変動しやすい特性がある。ただしpopinfo ID数が増加基調であり、今後はストック型収益の月額報酬の構成比上昇と事業領域拡大効果が期待される。
■19年3月期(連結決算に移行して8ヶ月決算)増収増益予想
19年3月期(連結決算に移行、決算期変更で18年8月~19年3月の8ヶ月決算)の連結業績予想は、売上高が32億円~34億円、営業利益が65百万円~1億05百万円、経常利益が65百万円~1億05百万円、純利益が20百万円~45百万円のレンジ予想としている。連結子会社は電子地域通貨事業のフィノバレー、セールスプロモーションのDGマーケティングデザインである。
第1四半期は売上高が10億04百万円、営業利益が41百万円の赤字、経常利益が39百万円の赤字、純利益が43百万円の赤字だった。売上高はDGマーケティングデザイン新規連結も寄与して前年同期の単体実績比大幅増収だが、販管費増加などで営業利益、EBITDAは減益だった。ただし概ね計画水準としている。
通期(8ヶ月決算)は月額報酬の伸長やM&Aの効果で実質増収増益予想である。第1四半期の進捗率は低水準だが、親会社アイリッジ、および連結子会社DGマーケティングデザインとも、3月を含む第3四半期の売上構成比が大きいという季節要因があるため、ネガティブ要因とはならない。通期ベースで好業績を期待したい。
■中期成長に向けてトータル・エンゲージメント・ソリューションを推進
中期経営計画では目標値に、21年3月期連結売上高65億円、営業利益4~5億円、EBITDA5~6億円を掲げている。18年7月期の単体実績は売上高15億40百万円、営業利益49百万円、EBITDA1億14百万円だった。
基本戦略として、企業・ユーザー間のコミュニケーション&エンゲージメントを高めるソリューションにフォーカスし、トータル・エンゲージメント・ソリューションを推進する。3つの事業領域(O2Oマーケティングなどのデジタル・フィジカルマーケティング領域、電子地域通貨などのフィンテック領域、不動産テックなどのライフデザイン領域)において、各々の成長を進めるとともに、有機的な事業融合によってシナジーや新規事業の創出も推進する。中期成長を期待したい。
■株価は出直り期待
株価は反発力が鈍く安値圏だが、調整一巡して出直りを期待したい。4月19日の終値は844円、時価総額は約56億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)