「もう」か「まだ」かの狭間で株式分割含みの超値がさ株にトライして値幅効果を期待=浅妻昭治

<マーケットセンサー>

「禍福は糾える縄の如し」で、株高が、かえってまたまた投資家を戸惑わせている。今度は、日経平均株が、「カウントダウン」、「秒読み」といわれていた2万円台に前週末10日の寄り付き直後にようやくタッチしたことが口火となった。珠玉の相場格言の「もうはまだなり まだはもうなり」が教える通りに、「もう」で、2万円台タッチはまだ一通過点に過ぎないのか、それとも「まだ」で、もう目標株価を達成してしまったのか判断に苦しむことになった。

10日の東証第1部で値上がり銘柄数より値下がり銘柄数が多かったことや、テレビのニュース番組では、強気と弱気のマーケット・コメントが同時並行的に流され、甘利経済担当大臣が、ミニバブルと認めた上で、「ミニバブルは制御可能」などと発言する姿がテレビ画面に放映されるのを目にすると余計に思い悩むことになる。日経平均株価の2万円台は、あのITバブル時の2000年4月高値以来15年ぶりの株価水準で、当時の高値2万833円を引き比べれば天井近しを懸念させるし、当時と現在の上場会社の企業価値、経営ガバナンスとの格差を考慮すれば、まだまだ上値拡大余地はあると楽観観測に傾くことになる。

個別銘柄でも「もうはまだなり まだはもうなり」で判断を迷う銘柄が出てきている。その代表が、クスリのアオキ<3398>(東1)である。同社株は、今年4月6日に1万円の大々台に乗せたが、これと間髪を入れず4月9日に株式分割(1対2、基準日5月20日)を発表、株価はさらに上値を追ったが、この権利を取るか取らないか難しい判断を迫られているからだ。

株価の急騰、当面の目標株価達成とともに株価分割を発表したのは、クスリのアオキのみにとどまらない。オリエンタルランド<OLC、4661>(東1)は、3万7950円の上場来高値をつけてほどなくディズニーファン待望の株式分割(1対4)を発表し、昨年2014年の東証1部年間上昇率ランキングのトップに躍り出た神戸物産<3038>(東1)も、今年1月31日割り当てで株式分割(1対2)を実施した。

この超値がさ株の相次ぐ株式分割は、多分にNISA(少額投資非課税制度)を意識したものとみられている。NISAの年間非課税枠の上限は100万円であり、売買単位100株でこの非課税限度枠の収めるように株式分割に踏み切ったとされた。OLCの株式分割が、1対4と大幅になったことで、ディズニーフアンは、めでたくNISAの枠内で株主優待取りに専念できることになった。

こうした3社の先行事例からは、新たな有望株を発掘する投資ヒントが示唆されることになる。超値がさ株が、大々台クリアに向けてさらに値幅効果を発揮し、さらに大々台達成とともに株式分割のおまけの好材料がフォローしてくれるかもしれないということである。こうした観点で超値がさ株を見直してみると、思い当たるフシのある銘柄もある。

例えばゲンキー<2772>(東1)である。同社は、クスリのアオキと同様に北陸新幹線開業関連のドラックストア・チェーン店で、クスリのアオキが、株式分割発表とともに急伸したのと軌を一つにして上値を伸ばして1万2160円と上場来高値を更新したが、これも多分に株式分割の催促相場の色合いが濃かった。この観測が、当たらずとも遠からずとなるとすれば、超値がさ株のなかには、第2、第3のOLC、神戸物産、クスリのアオキが飛び出して値幅効果を発揮してくる銘柄が浮上してくることになり、ぜひマークして置きたいところだ。(本紙編集長・浅妻昭治)

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