【アナリスト水田雅展の銘柄分析】インフォコムは戻り歩調、16年3月期増収増益期待で上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 ITサービスや電子書籍配信サービスを展開するインフォコム<4348>(JQS)の株価は戻り歩調の展開だ。4月7日には1090円まで上伸して14年7月1092円に接近した。電子書籍配信サービスの拡大や16年3月期の増収増益を期待して上値を試す展開だろう。13年10月高値1124円も射程圏だ。

 企業向けにITソリューションを提供するITサービス(ヘルスケア、エンタープライズ、サービスビジネス)事業、一般消費者向けに各種デジタルコンテンツを提供するネットビジネス事業(子会社アムタス)を展開している。

 業容拡大や中期成長に向けて戦略的M&A・アライアンスを積極活用している。13年9月に医薬品業界CRM事業強化に向けてミュートスと合弁会社インフォミュートスを設立、BCP(事業継続計画)分野拡大に向けて危機管理関連ソリューションを手掛ける江守商事<9963>と協業した。

 グループ会社統合・再編も進めている。14年3月にEC事業の運営効率化に向けてアムタスグループ内で食品EC事業を展開する持分法適用関連会社のドゥマンを連結子会社化し、連結子会社イー・ビー・エスのアパレルEC事業をドゥマンに統合した。15年2月には米国SYSCOMの株式を譲渡した。

 中期経営計画では、目標数値として17年3月期売上高550億円、営業利益50億円を掲げている。医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、そしてネットビジネス事業(電子書籍配信サービスやソーシャルゲーム)を重点3事業として、クラウドサービス関連、ソーシャルメディア関連、ビッグデータ領域のデータサイエンス関連、農業IT化関連、海外展開なども強化する方針だ。

 14年9月には米国シリコンバレーに連結子会社としてコーポレートファンド(20億円規模、通称インフォコムファンド)を設立した。ヘルスケア関連やネットビジネス関連を中心に、成長が期待される新技術や有力ベンチャーなど投資先候補探索・発掘を推進する。

 06年開始のスマートフォン・ガラケー向け電子コミック配信サービス「めちゃコミック」は、各携帯キャリアのスマートフォン公式キャリアサービス電子書籍カテゴリーで1位(15年2月1日時点)を独占している。13年11月開始したマルチデバイス対応電子書籍配信サービス「ekubostore(エクボストア)」も拡大基調だ。14年10月にはシフトワンと共同で次世代電子コミック「モーションコミック」の提供を開始した。アムタスの電子書籍配信サービス「めちゃコミック」と「ekubostore」の15年3月期売上高は15年1月時点で100億円を突破した。

 15年2月にはアムタスが、中国でコミック関連事業を展開している厦門優莱柏網絡科技有限公司(ユーラボ)、および恋愛・乙女系アプリ配信を展開しているKOYONPLETE(コヨンプリート)(東京都)と業務提携した。ユーラボが制作・保有する電子コミック作品を15年5月から「めちゃコミック」で配信する。コヨンプリートに関しては第三者割当増資も引き受ける。

 また3月30日にはアスリート支援サービス「ATHLETE STORIES(アスリートストーリーズ)」の提供開始を発表した。トップアスリートを目指す人の健康管理、コミュニティ機能のみならず、活動資金援助や就職支援といった引退後のセカンドキャリアに至るまでをサポートする無料サービス(アスリートプラットフォームアプリ)だ。実際に使用するアスリートには費用が発生せず、当社は広告事業、職業紹介事業、およびビッグデータのアスリート向け製品開発に活用する市場調査事業として展開する。

 前期(15年3月期)連結業績見通し(4月24日公表)は売上高が前々期比9.9%増の430億円、営業利益が同8.8%増の40億円、経常利益が同8.5%増の40億円、純利益が同12.6%増の23億円、配当予想が同1円増配の年間18円50銭(期末一括)としている。なお2月26日に米国SYSCOMの株式譲渡に伴う特別利益計上を発表している。

 第3四半期累計(4月~12月)は前年同期比5.0%増収、同21.2%営業減益、同18.4%経常減益、同35.9%最終減益だった。ITサービスの売上構成比変化などが影響して減益だったが、ネットビジネスは電子書籍配信サービスが順調に拡大している。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)81億99百万円、第2四半期(7月~9月)104億98百万円、第3四半期(10月~12月)94億11百万円で、営業利益は第1四半期2億26百万円の赤字、第2四半期8億16百万円の黒字、第3四半期3億99百万円の黒字である。

 通期見通しに対する第3四半期累計の進捗率は売上高65.4%、営業利益24.7%、経常利益25.7%、純利益16.4%と低水準だったが、ITサービス事業は第4四半期(1月~3月)の構成比が高い収益構造である。

 今期(16年3月期)も電子書籍配信サービスの好調が牽引して増収増益が期待される。そして中期的にも、医療機関・製薬企業向けヘルスケア事業、Web-ERPソフト「GRANDIT」のサービスビジネス事業、そしてネットビジネス事業の重点3分野の成長が加速し、eコマース分野の構造改革効果も寄与して収益拡大基調だろう。

 株主優待制度については14年7月に導入を発表した。毎年9月30日現在で1単元(100株)以上保有株主を対象として、連結子会社ドゥマンが運営する食品通信販売サイト「オーガニックサイバーストア」で利用可能なポイント(1ポイントを1円として利用)を保有株数と保有年数に応じて贈呈する。たとえば保有株数1000株以上で保有年数3年以上の場合は6000ポイントを贈呈する。

 株価の動きを見ると、1月の975円を突破して1000円台を回復した。戻り歩調の展開だ。そして4月7日には1090円まで上伸して14年7月の1092円に接近した。電子書籍配信サービスの拡大や16年3月期の増収増益を期待する動きだろう。

 4月10日の終値1023円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想連結EPS84円13銭で算出)は12倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間18円50銭で算出)は1.8%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS698円41銭で算出)は1.5倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線、週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。指標面には割安感があり、電子書籍配信サービスの拡大や16年3月期の増収増益を期待して、14年7月1092円を試す展開だろう。13年10月高値1124円も射程圏だ。

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1.  暖房機器、除雪商品などを展開し割安放置が目立つセクターにホームセンター株がある。PBRが1倍を割…
  2. ■背広の売れ行きが映す街角の景気シグナル  街角の景気実感を分析し、景気実態を明らかにする経済指標…
  3. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  4. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る