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JSPは売り一巡して反発期待、20年3月期大幅増益予想
- 2019/5/27 09:01
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
JSP<7942>(東1)は発泡プラスチック製品大手である。中期成長ドライバーとして自動車部品用ピーブロックなど、高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。19年3月期は大幅減益だったが、20年3月期は原材料価格軟化などで大幅増益予想である。株価は決算発表を機に急反落したが、目先的な売り一巡して反発を期待したい。
■発泡プラスチック製品大手、高機能・高付加価値製品を開発・拡販
発泡プラスチック製品大手である。押出発泡技術をベースとするポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロピレンシートなどの押出事業(産業用包装材、食品用包装材、広告用ディスプレー材、住宅用断熱材など)、ビーズ発泡技術をベースとする発泡ポリプロピレン・発泡ポリエチレン・発泡性ポリスチレン製品などのビーズ事業(自動車衝撃緩衝材、家電製品緩衝材、IT製品輸送用通い函など)、その他事業(一般包材など)を展開している。
19年3月期のセグメント別売上高構成比は押出事業36%、ビーズ事業59%、その他5%、営業利益構成比(連結調整前)は押出事業39%、ビーズ事業59%、その他2%だった。自動車部品用発泡ポリプロピレンのピーブロック(英名ARPRO)など高機能・高付加価値製品の拡販を推進している。
収益は販売数量、為替、原油価格、原料価格と販売価格の差であるスプレッド、プロダクトミックスなどが影響する特性がある。
■20年3月期大幅増益予想
19年3月期連結業績は、売上高が18年3月期比1.6%増の1161億33百万円、営業利益が39.8%減の54億79百万円、経常利益が36.7%減の58億35百万円、純利益が37.1%減の43億09百万円だった。配当は18年3月期と同額の年間50円(第2四半期末25円、期末25円)で配当性向は34.6%となる。
売上面では、自動車部品用「ピーブロック」など高付加価値製品が増加したが、ビーズ事業での韓国における販売減少などで全体として微増収にとどまった。利益面では、原燃料単価・輸送コスト上昇に伴う製品価格改定が遅れ、海外事業の収益構造改善の遅れなども影響して計画を下回り、大幅減益だった。
営業利益36億26百万円減益分析は、増益要因が販売単価(平均単価上昇)17億91百万円、数量増加による限界利益増加25百万円、減益要因が変動費単価(原燃料価格・輸送コスト上昇)35億52百万円、固定費増加(主に欧米での人件費増加、減価償却費増加)18億90百万円としている。なおセグメント別には押出事業が2.8%増収で8.3%減益、ビーズ事業が0.3%増収で47.1%減益、その他が9.0%増収で13.0%増益だった。
20年3月期の連結業績予想は、売上高が19年3月期比2.8%増の1194億円、営業利益が31.4%増の72億円、経常利益が26.8%増の74億円、純利益が26.0%増の54億30百万円としている。配当予想は19年3月期と同額の年間50円(第2四半期末25円、期末25円)で予想配当性向は27.4%となる。
販売数量の増加、国内におけるスチレンモノマーおよびポリスチレン価格軟化による一部製品の利幅改善、米国におけるポリプロピレン価格下落による収益改善などで大幅増益予想としている。前提条件は為替が1米ドル=110円、1ユーロ=125円、1人民元=16円、原油価格(ドバイ)が1バーレル=65米ドルとしている。
営業利益17億21百万円増益分析の見通しは、増益要因が変動費単価(原燃料市況軟化)26億10百万円、数量増加(国内約4%増、海外約7%増)による限界利益増加22億30百万円、為替等20百万円、減益要因が販売単価(平均単価下落)16億10百万円、固定費増加(人件費・減価償却費増加)15億30百万円としている。セグメント別の見通しは押出事業が2.8%増収で12.8%増益、ビーズ事業が3.1%増収で39.3%減益、その他が0.7%減収で27.6%増益としている。収益改善を期待したい。
■自動車部品用ピーブロック拡販など成長戦略推進
中長期の目標数値は、新中期経営計画「Deeper&Higher2020」で21年3月期売上高1380億円、営業利益110億円、営業利益率8%、経常利益113億円、純利益79億円、長期ビジョン「VISION2027」では28年3月期売上高1800億円、営業利益180億円、営業利益率10%を掲げている。
21年3月期目標の前提条件は為替が1米ドル=113円、1ユーロ=133円、1人民元=17円、原油価格(ドバイ)が1バーレル=55米ドルである。セグメント別目標数値は、押出事業の売上高が467億64百万円で営業利益が33億76百万円、ビーズ事業の売上高が850億43百万円で営業利益が83億93百万円、その他事業の売上高が61億93百万円で営業利益が1億80百万円である。新規事業は計画に含めず、外数として売上高30億円を目指す。
基本方針は、差異化戦略(押出事業のスチレンペーパー、ミラボード、FPD関連保護材ミラマットエース、高断熱材ミラフォーム、ビーズ事業のピーブロック、エレンボールNEOなど)の推進、成長戦略(4つの成長エンジン=自動車部品、建築住宅断熱材、FPD関連保護材、新たな事業領域)の推進、人材育成やコーポレートガバナンス強化など経営基盤の強化としている。
3年合計の設備投資額は約300億円、減価償却費は約180億円の計画である。国内外での自動車部品用ピーブロックの拡販・用途開拓を目指し、生産能力を増強する。
自動車部品用ピーブロックは、自動車軽量化要求に対応する製品として需要が急速に拡大し、日系自動車メーカーのリアシートコア材などへの採用が広がっている。その他用途を含めたピーブロック販売数量は、21年3月期に18年3月期比約27%増を見込んでいる。中期成長ドライバーとして期待される。
省エネ基準適合義務化対象拡大で需要拡大している「ミラフォーム」については、19年1月関西工場(兵庫県たつの市)の隣接地に新工場が完成した。これにより東西2大生産拠点体制を構築した。また新製品でミラフォーム畳(衝撃緩和型畳床)「ふわり」を発売した。
■株価は売り一巡して反発期待
株価は決算発表を機に急反落したが、目先的な売り一巡して反発を期待したい。5月24日の終値は2012円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS182円16銭で算出)は約11倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間50円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS2691円76銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約632億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)