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アイリッジは売り一巡、事業領域拡大して20年3月期収益改善期待
- 2019/5/29 08:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アイリッジ<3917>(東マ)はO2Oソリューション事業をベースとして、フィジカルマーケティング領域や電子地域通貨事業など事業領域拡大戦略を推進している。19年3月期(連結決算に移行、8ヶ月決算)は利益が計画未達で着地したが、20年3月期の収益改善を期待したい。株価は安値圏だが、売り一巡して出直りを期待したい。
■O2Oソリューション事業をベースに事業領域拡大
位置情報連動型プッシュ通知popinfo提供、popinfo搭載O2Oアプリ企画・開発、集客・販促など、企業のO2Oマーケティングを支援するO2Oソリューション事業を展開している。
popinfoはスマホアプリに組み込み、アプリユーザーに伝えたい商品・イベント・クーポンなどの情報をプッシュ通知によって配信できるO2Oソリューションである。導入アプリ数は300超に達し、19年3月期末の利用ユーザー数(ID発行数)は18年7月期末比2491万増加の1億4496万となった。利用ユーザー数に応じた従量課金型月額報酬(popinfoサービスのライセンス収入)のストック収益となる。
成長戦略としてO2O事業の進化、新規事業・サービスによる事業領域拡大を推進している。18年5月デジタルガレージ<4819>と資本業務提携し、デジタルガレージが当社の第2位株主となった。そして18年8月デジタルガレージからセールスプロモーション主力のDGマーケティングデザインの株式80%を取得(連結子会社化)した。
O2Oマーケティングの「効果を創出する」プロダクトとしてpopinfoのアプリデータマーケティング機能を一段と強化するとともに、DGマーケティングデザインとの連携によってフィジカルマーケティング領域に展開し、オンライン・オフライン双方において、広告~購買~決済~SRMまで消費者の行動プロセス全てをカバーするトータルソリューションを推進する。
■電子地域通貨事業も展開加速
電子地域通貨事業は18年8月子会社フィノバレーを設立し、電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」をベースに展開を加速している。
電子地域通貨プラットフォーム「MoneyEasy」は、電子通貨運営会社が短期間で安価に開始できるプラットフォームである。支払方法としてQRコード読取方式を採用し、スマホアプリを使ってチャージから決済まで可能にしている。popinfoと組み合わせてマーケティング機能を融合した決済基盤を構築できる。
17年12月飛騨信用組合「さるぼぼコイン」商用利用開始、18年2月伊予銀行「IYOGIN CO-in」実証実験開始、18年7月小田急電鉄「新宿シネバルコイン」実証実験開始、18年10月木更津市役所・君津信用組合「アクアコイン」商用利用開始した。また九州全域のキャッシュレス決済インフラ整備を目的とした九州キャッシュレス観光アイランド推進コンソーシアムに参画した。
■新規事業も育成
新規事業では18年8月、デジタルガレージの子会社で分譲マンションのチラシ制作など、不動産マーケティング大手のDGコミュニケーションズの株式14%を取得した。従来は流通・小売・鉄道・金融分野が主力だったO2Oソリューションを、DGコミュニケーションズと連携して、不動産・住まい・街づくりなどライフデザイン領域にも展開する。
また18年9月にはスマートスピーカー(AIスピーカー)向けアプリ開発プラットフォーム「NOID」を提供開始した。プログラミング不要で簡単にスマートスピーカーアプリが作れるクラウドサービスである。
■20年3月期収益改善期待
19年3月期(連結決算に移行、決算期変更で18年8月~19年3月の8ヶ月決算)の連結業績は、売上高が32億61百万円、営業利益が12百万円、経常利益が15百万円、純利益が26百万円の赤字だった。連結子会社は電子地域通貨事業のフィノバレー、セールスプロモーションのDGマーケティングデザインである。
売上高は月額報酬、アプリ開発、コンサル、プロモーションが順調に推移して概ね計画水準だったが、アプリ開発の受注ボリューム拡大に伴う外注費増加、グループ拡大に伴う販管費増加で利益は計画未達だった。
売上高の内訳は月額報酬4億10百万円、アプリ開発・コンサル・プロモーション等28億51百万円だった。なおアプリ開発およびDGマーケティングデザインの売上は3月に偏重する特性がある。
20年3月期連結業績予想は、売上高が55億円、営業利益が2億50百万円、経常利益が2億50百万円、純利益が1億20百万円としている。開発体制強化による生産性向上と内製割合上昇、高付加価値案件への取り組み拡大による粗利率改善、ストック型ソリューションの展開・開発強化、販管費の適正化などを推進する。収益改善を期待したい。
■中期成長に向けてトータル・エンゲージメント・ソリューションを推進
今後の重点取り組みとしては、収益性改善、顧客データ分析プラットフォームFANSHIPを軸としたストック型ソリューションの展開・開発強化、グループのシナジー拡大と新規事業・サービスの強化、成長を支える基盤の整備・強化などを推進する。3つの事業領域(O2Oマーケティングなどのデジタル・フィジカルマーケティング領域、電子地域通貨などのフィンテック領域、不動産テックなどのライフデザイン領域)において、各々の成長を進める方針だ。
中期経営計画の目標値としては、22年3月期売上高70億円、営業利益5億円、EBITDA7億50百万円を掲げている。中長期的に収益拡大を期待したい。
■株価は売り一巡
株価は安値圏だが、売り一巡して出直りを期待したい。5月28日の終値は909円、今期予想連結PER(会社予想のEPS18円19銭で算出)は約50倍、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS385円29銭で算出)は約2.4倍、時価総額は約60億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)