【小倉正男の経済コラム】紙袋の復活:脱プラが本格化

小倉正男の経済コラム

■脱プラで紙袋が復活

 紙袋が復活している。脱プラの顕在化で再び脚光を浴びているのが手提げ紙袋である。

 手提げ紙袋の需要先は、百貨店が代表的である。それだけに紙袋は、百貨店の閉店・退店などで成長がほとんど止まったビジネス分野とみられてきた。

 「大閉店時代」――、百貨店は首都圏近郊でも閉店などが相次いでおり、それとともに紙袋が姿を消していた。需要はどんどん細っていた。

 かつて百貨店は個人消費の主役だったが、いまでは首都圏でも都心部にしか存続できない業態になっている。三越、高島屋、松屋など有力百貨店のそれぞれの紙袋は風物詩だった。しかし、「大閉店時代」ということで紙袋もマーケット喪失の危機にあったわけである。

 そこに降って湧いたのが世界的な脱プラスチック、すなわち脱プラの規制強化やトレンドの本格化である。脱プラの受け皿として再び蘇ったのが紙袋にほかならない。

■紙袋の復活に手応え

 紙袋の最大手企業は、ザ・パック<3950>(東1)である。ザ・パックについてもう少し詳しくいうと、紙袋だけではなくeコマース用の紙器の双方に強みがあるパッケージの総合企業にほかならない。

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 ザ・パックは大阪に本社があり関西発祥だが、近年では売り上げの60%が首都圏を中心とする東日本となっている。百貨店、専門店、アパレル、食品――やはり、ビジネスの集積の厚みは首都圏が圧倒的なためである。

 「脱プラというか、紙袋への切り替えは外資系アパレルが速かった。ここにきては紙袋の商談は活発化していろいろなところから来ている。商談先については話できないが、手応えはこれまでにないものだ」
 ザ・パックの藤井道久・常務コーポレート本部長は、紙袋の需要復活についてそう語っている。

 ザ・パックのこの数年は、主力商品の紙袋は売り上げで横ばい圏維持が精一杯だった。しかし、eコマース用の紙器の成長率が凄まじかった。eコマースは、一般の生活者の消費プラットフォームとして定着し、包装用の紙器が新しい主力商品に躍進していたのである。

 しかし、紙器の好調は相変わらずだが、そこに紙袋の復活がトレンドになりそうな現状となっている。ザ・パックには、思わぬというか、追い風が吹くかもしれない。

■「無印良品 銀座」などが紙袋を採用

 脱プラは世界的なトレンドで欧州が先行し、アメリカ、中国まで走り出している。

 トランプ政権のアメリカでも、ニューヨーク州、カリフォルニア州などがプラスチック製レジ袋、プラスチック製ストローなどの規制に乗り出している。スーパー、ドラッグストア、カフェなどが軒並みに脱プラに走り出している。

 アメリカでもそうだが、さらに中国でも上海、北京など大都市部で紙袋が復活しているというのである。
 日本はむしろ少し出遅れている部類なのだが、ようやく本格化しようとしている。

 この19年4月に「無印良品 銀座」が東京・銀座並木通りにオープンしたが、同店は脱プラを実行して紙袋を採用した。また最近、首都圏や関西圏で人気化している高級食パンなどのお店も軒並み紙袋を使っている。
 こうしたお洒落なお店が紙袋を使っていることは、今後のトレンドに大きく影響を与えるといって間違いない。

 紙袋は、プラスチック製包装袋に比べれば、店舗サイドにとってコストは割高だが、この流れは止まりそうもない。
 それにしても脱プラの機運が紙袋の復活につながるとは、数年前まで誰も想像しなかった現象であることは確かである。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

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