【アナリスト水田雅展の銘柄診断】DNAチップ研究所は15年3月期減額に対する反応は限定的、今期収益改善期待でモミ合い上放れ

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 バイオベンチャーのDNAチップ研究所<2397>(東マ)の株価は、安値圏でのモミ合い展開だが調整一巡感も強めている。10日に15年3月期業績の減額修正を発表したがネガティブ反応は限定的のようだ。16年3月期の収益改善期待でモミ合い上放れのタイミングだろう。

 将来の個人化医療や未病社会の実現を見据えた遺伝子発現プロファイル収集・統計受託解析など、DNAチップ(DNAマイクロアレイ)技術の事業化を目指す研究開発企業である。現在は研究受託事業(大学病院・研究機関や製薬・食品メーカー向けDNAチップ関連の受託実験・解析・統計処理サービスなど)を主力として、商品販売事業も展開している。

 時々刻々と変化する体調変化や加齢とともに起こる免疫変化などを遺伝子検査するRNAチェック(血液細胞遺伝子発現マーカー検査)に強みを持ち、中期成長に向けて次世代シークエンス受託解析サービスなど研究受託メニューを充実させるとともに、RNAチェックによる遺伝子解析検査サービス、独自開発パッケージソフトウェアによる診断支援サービス、健康モニタリングサービスなどの診断関連事業を収益柱に育成する方針だ。

 診断サービスでは「リウマチェック」(関節リウマチの薬剤効果予測検査)による多剤効果予測検査サービスの拡充、「免疫年齢診断」サービスの拡充、新規サービスの「超高感度バリアント検出サービス(仮称)」(肺がん患者を対象とした組織由来DNA変異検出)を強化する。

 商品販売事業では高校・大学生教育用DNAチップ教材「ハイブリ先生」、乳癌再発リスクを予測する乳癌予後予測キット「MammaPrint」(導入商品)、問診パッケージソフト「iRIS:関節リウマチ問診システム」、DNA鑑定向け硬組織(歯牙・骨)からのDNA抽出キット「Tbone EX Kit」などの受注拡大を推進している。

 戦略商品に関しては中長期的に一般健康診断への採用拡大を目指す方針だ。さらに大腸がん・悪性神経膠腫の術後予後予測、免疫年齢・肥満・うつ病・疲労・アルツハイマーなどの診断関連マーカーの開発・事業化、医薬品開発と一体化した診断マーカー開発(コンパニオン診断薬開発支援)、再生医療支援事業(培養細胞の安全性評価系)なども強化して業容を拡大する。14年3月には「神経膠腫予後予測方法、およびそれに用いるキット」に関する国内特許を取得した。

 14年11月に第三者割当増資および新株予約権発行で、エンジニアリングプラスチック事業のエンプラス<6961>と資本業務提携した。バイオ事業における業界ネットワークの補完、新製品開発能力の強化、海外インフラの利用などでシナジー効果を目指すとしている。

 15年3月には、愛媛大学、北海道大学とともにJST研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)に採択された共同研究で、脳腫瘍の一種であるグリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAを発見したと発表している。本研究は癌の根治療法を生み出すと期待されている。

 4月10日に前期(15年3月期)業績(非連結)見通しの減額修正を発表した。前回予想(14年4月24日公表)に対して、売上高は82百万円減額して前々期比2.3%増の3億57百万円、営業利益は1億01百万円減額して99百万円の赤字(前期は44百万円の赤字)、経常利益は1億21百万円減額して1億19百万円の赤字(同44百万円の赤字)、純利益は1億40百万円減額して1億39百万円の赤字(同45百万円の赤字)とした。

 研究受託事業における大型案件の受注がずれ込んだため売上高が計画を下回った。また診断サービスの新規メニュー開発に向けた研究開発費の増加、営業外での新株発行費用の発生、および横浜市鶴見区に保有する本社および研究施設の減損損失18百万円の計上などで各利益は赤字見通しとなった。

 前期(15年3月期)は計画を下回り赤字だったが、今期(16年3月期)はマイクロアレイ受託解析サービス、次世代シークエンス受託解析サービス、診断サービスなどの拡大による増収効果に加えて、受託解析や診断サービスの売上構成比上昇、採算性の高いメニューの重点拡販、作業効率の改善などで粗利益率が上昇して営業黒字化が期待される。

 中期的な業績改善推進プランとして「研究開発から事業化への加速」を掲げている。提案型研究受託メニューの強化(マイクロアレイ解析と新規受託サービス)、診断関連サービスの拡充(リウマチ多剤効果判定、臨床研究用データベース「iCIS」、診断マーカー、RNAチェックなど)、販売促進のためのアライアンス強化、さらに海外展開(米国の大学との共同研究)などを推進する方針だ。エンプラスとの資本業務提携効果も寄与して収益改善が期待される。

 株価の動きを見ると、グリオーマ(神経膠腫)の機能を抑制するマイクロRNAの発見を材料視した3月の戻り高値1000円から反落し、安値圏800円台でモミ合う展開だ。ただし800円台を割り込んで1月安値760円まで下押す動きは見られない。

 4月13日の終値は823円だった。15年3月期業績減額修正に対するネガティブ反応も限定的のようだ。週足チャートで見ると26週移動平均線を挟んでモミ合う展開だが、800円近辺が下値支持線の形だ。16年3月期の収益改善期待でモミ合い上放れのタイミングだろう。

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