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アスカネットは調整一巡、20年4月期微減益予想だが保守的
- 2019/6/25 08:31
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
アスカネット<2438>(東マ)は遺影写真加工と写真集制作を主力として、葬祭市場をIT化する「葬Tech」や、空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。19年4月期は計画超の増収増益だった。20年4月期は一時的費用発生などで微減益予想だが保守的だろう。AI事業の本格量産・収益化への期待も高まる。株価は調整一巡して出直りを期待したい。
■写真加工関連を主力として、空中結像AIの事業化を推進
葬儀社・写真館向け遺影写真加工のメモリアルデザインサービス(MDS)事業、写真館・コンシューマー向けオリジナル写真集制作のパーソナルパブリッシングサービス(PPS)事業を主力として、既存分野では葬祭市場をIT化する葬Tech、新規分野では空中結像ASKA3Dプレートのエアリアルイメージング(AI)の事業化を推進している。19年4月期の売上構成比はMDS事業40.3%、PPS事業57.5%、AI事業2.2%だった。
なおMDS事業は葬儀関連、PPS事業はウエディング・卒業・入学イベント関連などが主力市場である。いずれも景気変動の影響を受けにくい特性や、下期の構成比が高い季節特性がある。
また17年2月人工知能搭載ソーシャルロボット「unibo」を開発・製造するユニロボットと資本業務提携、18年3月全身高速3Dスキャナーおよび3Dデータ処理システム開発・製造のVRC社と資本業務提携している。
■MDS事業は葬祭市場をIT化する葬Tech推進
MDS事業は1992年に国内初となる遺影写真デジタル加工・出力を開始した。同社で専門オペレータによるデジタル加工を行い、葬儀社に設置されたハード機器に出力する。18年11月には遺影加工実績が累計500万枚を突破した。現在は年間約35万枚の写真画像を提供している。葬儀は年間約110万件施行されているため市場シェアは約30%(1位)となる。19年4月期末のハード設置件数は2484ヶ所、19年4月期の年間加工枚数は新規加工枚数が約35万枚、電照焼増枚数が約14万枚だった。
成長戦略として、葬祭市場における豊富な顧客基盤(葬儀社)を活用し、ASKA3Dプレートを用いた「飛鳥焼香台」や「おうち供養Omokage」の拡販、葬儀社・喪家・会葬者を繋ぐサービス「tsunagoo」の浸透など、葬祭市場をIT化する「葬儀×TECH=葬Tech」を推進している。
■PPS事業はOEMが拡大
PPS事業はオリジナル写真集をネットで受注・製作するサービスで、高度なカラーマネジメント技術を強みとしている。全国の写真館・プロフェッショナル写真家向け「アスカブック」と、一般消費者向け「マイブック」を主力としている。19年4月期時点で約4290社の写真館向けなどに、BtoBとBtoCの合計(OEM除く)で年間約40万冊提供している。19年6月にはプロフォトグラファー向けサービスとして、データ納品システム「Grandpic」をリリースした。
またNTTドコモ<9437>のフォトブック印刷サービス「dフォト」に、フォトブック・プリント商品を独占供給するOEMも拡大している。NTTドコモが台湾で展開するフォトブックサービスOEM提供においても、フォトブック商品の供給と発送を担当する。
なおOEMを中心とする需要拡大に対応するため、本社隣地に新社屋を建設し、生産設備を現社屋から移設するとともに、新設部も導入して能力増強する。19年8月稼働予定である。
■樹脂製ASKA3Dプレートは国内外約200社にサンプル販売
空中結像のAI事業は、プレートだけで空中ディスプレイが可能となるシンプルな構造を特色として、サイネージ、車載、医療、操作パネル、飲食、アミューズメントなど多方面の業界・業種から注目されている。18年1月にはサービスブランドをASKA3D、プレート名をASKA3Dプレートに統一し、本格量産(ファブレス形態で製造、自社ブランドで販売)を目指している。
高品質の空中結像を可能にする小ロット向けの大型ガラス製プレート、および大ロット向けに低コストでの供給が可能な樹脂製プレートの開発・製造・販売を進めている。18年11月リリースした新バージョンの樹脂製ASKA3Dプレートは、国内外合計約200社にサンプル販売し、顧客側で組込製品化の検討を進めている。
生産面では19年5月、一定水準以上の品質の安定と歩留まりの向上を実現できたため、月産3000枚程度の生産能力を有する第1段階の量産化に移行した。さらに一部工程の生産設備を増強することで、比較的容易に生産能力を月産1万枚程度に拡大できるとしている。本格量産・収益化への期待が高まる。
■20年4月期微減益予想だが保守的
19年4月期の非連結業績は、売上高が18年4月期比6.6%増の62億95百万円、営業利益が10.1%増の8億68百万円、経常利益が9.7%増の8億73百万円、純利益が7.5%増の5億98百万円だった。計画超の増収増益で着地し、配当は1円増配の年間11円(期末一括)とした。配当性向は30.9%である。
MDS事業は0.6%増収、4.5%減益だった。売上高が微増にとどまり、画像処理オペレータ増員に伴う人件費の増加、運賃値上げによる発送配達費の増加などで減益だった。PPS事業は10.6%増収、17.8%増益だった。OEM供給が伸長し、プロフェッショナル写真家向け、一般消費者向けも堅調だった。稼働率上昇効果も寄与した。AI事業は24.0%増収で赤字がやや縮小した。
20年4月期非連結業績予想は、売上高が19年4月期比7.0%増の67億38百万円、営業利益が5.1%減の8億24百万円、経常利益が5.1%減の8億29百万円、純利益が9.0%減の5億45百万円としている。配当予想は1円減配の年間10円(期末一括)としている。予想配当性向は30.9%である。
MDS事業、PPS事業とも堅調に推移して増収だが、新社屋稼働(19年8月予定)に伴う設備移設関連の一時的費用が発生し、減価償却費、人件費、開発費などの増加も考慮して微減益予想としている。ただし保守的だろう。
なおセグメント別売上高計画は、MDS事業が3.3%増の26億22百万円、PPS事業が8.2%増の39億16百万円、AI事業が46.0%増の2億円としている。MDS事業は遺影写真加工収入の着実な積み上げや葬儀演出ツールの伸長を見込む。PPS事業はOEMが牽引して増収だが、利益面は設備移設関連の一時的費用や減価償却費などの増加を見込んでいる。AI事業は量産案件受注に向けてサンプル拡販を推進する。計画値には量産案件を含んでいない。
■株主優待制度は毎年4月末の株主対象
株主優待制度は毎年4月30日現在の株主に対して、所有株式数に応じて自社サービス(マイブック)割引利用券を贈呈している。
■株価は調整一巡
株価は4月の年初来高値から反落して安値圏に回帰した形だが、調整一巡して出直りを期待したい。6月24日の終値は1383円、今期予想PER(会社予想のEPS32円36銭で算出)は約43倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は約0.7%、前期実績PBR(前期実績のBPS322円49銭で算出)は約4.3倍、時価総額は約242億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)