フライトホールディングスは戻り試す、20年3月期大幅増収・黒字予想

 フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力として、システム開発・保守やECサイト構築なども展開している。20年3月期は大型案件の売上計上で大幅増収・黒字予想である。7月10日にはラグビーW杯訪日外国人向けNFC決済対応の導入事例を公表した。目白押しの電子決済ソリューション有望案件も期待したい。株価は6月の直近安値から急反発している。戻りを試す展開を期待したい。

■電子決済ソリューションが主力

 子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、イーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。

 19年3月期のセグメント別売上高構成比は、C&S事業が55%、サービス事業が35%、ECソリューション事業が10%だった。サービス事業の大型案件によって変動する特性がある。

 C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。業容拡大に向けてトータル物流システム、新しい楽曲配信サービスシステム、クラウドサービス関連の導入支援サービスを重点領域としている。

 ECソリューション事業の「EC-Rider B2B」は、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。UCCグループのフーヅフリッジ、日東電工CSシステムなどに採用されている。また伝票処理自動化ソリューションの新製品「OCRider」を開発した。

■サービス事業は電子決済ソリューションのマルチ決済端末など展開

 サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist」シリーズと、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」を展開している。電子決済事業に関して複数暗号鍵の切り替えに関する特許、無線を使った複数機器の設定に関する特許、複数加盟店の切り替えに関する特許を取得している。

 スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」は、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末に利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。10年9月に国内初のiPhoneを活用した法人向け決済ソリューションとして提供開始し、高級ホテル・レストラン・観光タクシー・旅行代理店など幅広く導入されている。

 スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist」シリーズは全国のソフトバンクショップ、ドコモショップに導入されている。さらにモバイル型や据置・モバイル兼用型など製品ラインアップを拡充している。

 多機能モバイル決済端末「incredist Premium」は、磁気クレジットカード決済、EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(ICカード国際規格EMV技術を用いた非接触IC決済対応クレジットカード)決済、日本独自の電子マネー決済に対応している。またMastercardなど国際6ブランドのコンタクトレスEMV認定が完了している。

 さらに今後のキャッシュレス決済需要への戦略製品として、18年7月タブレット不要・プリンタ内蔵・バッテリー搭載の据置・モバイル兼用型マルチ決済装置「Incredist Trinity」の出荷を開始、19年5月には「Incredist Trinity」とセットで使用する「Incredist Trinity Mini」の出荷を開始した。ソフトバンクが19年初夏から「Incredist Trinity Mini」のトライアル運用を開始し、20年度にかけて順次導入予定である。なお19年6月には、さらなる品質向上や安定供給に向けて「Incredist Trinity」および「Incredist Trinity Mini」の国内製造を開始した。

 なおコンタクトレスEMVでは三井住友カードと接続している。また国内向け電子マネーでは、NTTドコモの「iD」に対応済みで、交通系電子マネー等のブランド検定も進行中である。

 パートナーやビジネスモデル拡大も推進している。18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、決済金額に応じた手数料収入を得る。従来の決済装置および決済ソリューションに加えて、継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。今後は中堅カード会社との接続など決済パートナーの拡大を目指す。

 19年2月には、飲料自動販売機や駐車場などの無人自動精算機向けマルチ決済端末の新製品を発表した。米国ID TECH社製「VP6800」を日本国内の自動販売機・自動精算機に接続するために必要な各種機能を搭載したIFユニットを共同開発した。

 さらに、訪日外国人旅行客の増加に伴ってキャッシュレス需要が高まっている中小店舗・商店街への展開として、商店街連合会等と協議して決済ソリューションを展開する方針だ。

 なお19年6月、決済端末に関してGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始した。GMO-FGを通じて決済ソリューションの拡販を進める予定で、第一弾として自動精算機向けソリューションを展開する。

 また7月10日にはラグビーW杯訪日外国人向けNFC決済対応の導入事例を公表した。亀の井バス(大分県別府市)の高速バスチケット販売窓口に多機能モバイル決済端末「incredist Premium」およびスマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」を導入した。大分県ではラグビーW杯2019日本大会で準決勝を含めて5試合が行われるため、各国の応援に来訪する訪日外国人向けNFC決済対応が可能となる。

■ロボット関連も強化

 ロボット関連も強化している。17年2月、ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」関連として、ジエナ社と共同で法人向けロボットのコンテンツマネージメントソリューション「Scenaria」を開発した。アプリ開発の経験が無い部署でも簡単にコンテンツの更新ができるソリューションである。18年9月には「Scenaria」が、NTT東日本のロボコネクト用Sota(小型のデスクトップ型ロボット)に対応した。

 医療分野におけるAIとロボットの活用では、東京慈恵医科大学先端医療情報技術研究講座およびジェナ社と、医療機関で「Pepper」を使ったコミュニケーションシステムに関する共同研究も行っている。

 また新規分野として、18年9月には非接触充電機能搭載のビジネス向けIPテレフォニー用ハンドセット「Elite Station」の販売を開始した。各種ビジネスフォンの機能を搭載したタブレット向けIP電話ソフトもリリース予定としている。

■キャッシュレス化の流れが追い風

 電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となる。経済産業省の指針として、訪日観光客の利便性向上も視野に入れて、20年までに日本国内で接触型ICクレジットカード(EMV)決済を100%実現できるよう推進している。

 また18年6月の改正割賦販売法の施行によって、20年3月末までに磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられたため、一般の店舗だけでなく、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキングの精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となる。

■20年3月期大幅増収・黒字予想、目白押しの有望案件も期待

 20年3月期連結業績予想は、売上高が19年3月期比2.4倍の34億円、営業利益が4億円の黒字(19年3月期は4億08百万円の赤字)、経常利益が3億90百万円の黒字(同4億03百万円の赤字)、純利益が2億90百万円の黒字(同4億08百万円の赤字)としている。

 C&S事業の基幹システムリニューアル支援案件、サービス事業の「Incredist Trinity Mini」大口案件など、19年3月期末受注残高21億91百万円(C&S事業4億23百万円、サービス事業17億18百万円など)の売上計上を予定し、大幅増収・黒字予想である。19年6月には、改正割賦販売法に対応した「Incredist Trinity Mini」の大口受注(受注金額は非開示、納期は19年内)を公表している。

 さらに目白押しの電子決済ソリューション有望案件も期待したい。検定中の交通系電子マネー関連、割賦販売法改正に伴うICカード対応案件、19年ラグビーW杯や20年東京五輪など国際イベント関連案件、商店街連合会向けキャッシュレス対応案件、無人自動精算機向け決済端末と日本対応ユニット案件など、商談中の有望案件が目白押しである。

■株価は戻り試す

 株価は6月の直近安値696円から急反発している。7月10日には1000円まで上伸した。戻りを試す展開を期待したい。7月10日の終値は994円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS30円67銭で算出)は約32倍、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS36円77銭で算出)は約27倍、時価総額は約94億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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