【アナリスト水田雅展の銘柄分析】IBJは中期成長力を評価して上値追い、ネット大手の参入は追い風

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

IBJ<6071>(東2)に注目したい。日本最大規模の集客力と会員数を誇る婚活サービス企業である。株価はネット大手の参入報道を受けて競争激化懸念で4月8日の上場来高値1347円から一旦反落したが、目先的な過熱感が解消して適度な調整となった。15年12月期は大幅増収増益見通しであり、ネット大手の参入によって業界に対する社会的イメージが高まる追い風効果も期待される。中期成長力を評価して上値追いの展開だろう。

12年12月JASDAQ市場に新規上場、14年12月東証2部に市場変更した。00年に日本初のインターネット結婚情報サービス(婚活サイト)を本格開始して、結婚相談から街コン、さらにライフデザインサービスや地方自治体の婚活支援研修まで、ネットとリアルを最大限に活用して各事業のシナジー効果を高めながら婚活に関するサービスを幅広く展開している。03年には「Yahoo!JAPAN」の婚活サービスを構築し、04年には国家公務員共済組合連合会(KKR)の福利厚生サービスを受託した実績を持つ。

主力事業は、日本で最初の婚活サイト「ブライダルネット」を運営するコミュニティ事業、婚活パーティー「PARTY☆PARTY」や合コン・街コン「Rush」を運営するイベント事業、IBJ直営9店舗で展開する婚活ラウンジ「IBJメンバーズ」のラウンジ事業、IBJ正規加盟店「日本結婚相談所連盟」に加盟する全国1000社以上の結婚相談所にお見合いシステムを提供する連盟事業である。ラウンジ事業の成婚率は約52%、日本結婚相談所連盟に加盟する結婚相談所を始め、IBJグループ全体で創出する年間成婚数は約2500組に達している。またビッグデータも活用した婚活会員向け広告サービスや、婚礼関連企業へ会員カップルを送客(紹介)するライフデザインメディア事業も展開している。

コミュニティ事業は「ブライダルネット」月会費課金者からの月会費、イベント事業はイベント参加費、ラウンジ事業は登録料・活動サポート費・月会費および成果報酬の成婚料、連盟事業は加盟金および月額システム利用料、ライフデザインメディア事業は広告収入および婚礼関連企業からの手数料収入、というビジネスモデルである。

14年12月期末の各事業の指標について見てみたい。コミュニティ事業のブライダルネット会員数は12万3384名(うち月会費課金者数1万481名)、イベント事業の動員数は28万5742名(14年1月~12月累計)、開催数は2万4119回(同)、ラウンジ事業の会員数は3951名、成婚数は803名(同)、連盟事業の登録会員数は5万3316名、そしてIBJ主要サイトの月間PV数は4028万PVに達している。

中期的には日本の国策や市場ニーズに貢献する企業として、年間6000組(日本の成婚組数の1%)の成婚をIBJグループで創出することを目指している。成長戦略としては、クオリティ向上によるIBJブランド力の強化、既存事業の一段の強化に加えて、行政・地方自治体との連携強化、ライフデザインメディア事業での事業領域拡大などを推進する方針だ。

行政・地方自治体との連携では、国家公務員共済組合連合会(KKR)からの福利厚生サービス受託に加えて、結婚支援研修・セミナーや相談員育成サービスなどで山形・山梨・富山・岐阜・和歌山・高知の6県と連携し、京都府との連携も予定している。さらに全国自治体からの問い合わせが増加しているようだ。

ライフデザインメディア事業では現在、結婚式場やジュエリーなどのブライダル分野で11社と提携して会員カップルを送客(紹介)し、送客数が増加基調である。さらに不動産や保険などライフデザイン分野も企業とも提携して送客領域を拡大する計画だ。

海外については14年4月、台湾最大のオンラインマッチングサービス会社であるSunfun Info社と台湾に合弁会社IBTを設立した。14年8月に自社店舗でのパーティー運用を開始して、動員数が急速に増加しているようだ。

なお15年1月、大手企業による少子化対策プロジェクトとして民間事業者協議会「婚活サポートコンソーシアム」を発足させた。日本の少子化問題に対する社会意識向上を目的として、婚活サポートの立場から調査・分析に基づいた情報発信などを行う。4月13日には活動の一環として、青山商事<8219>と当社が実施した「婚活における身だしなみとファッション」についての意識調査結果を発表した。発足時の参画企業は9社だが、順次参画企業を増やす方針であり、大規模シンポジウムの開催も近々に予定しているようだ。

今期(15年12月期)の業績(非連結)見通し(2月13日公表)は、売上高が前期比16.4%増の38億61百万円、営業利益が同22.1%増の7億85百万円、経常利益が同19.8%増の7億54百万円、そして純利益が同18.4%増の4億79百万円としている。配当予想については未定としているが増配の可能性が高いだろう。

事業別売上高(内部取引調整前)の計画はコミュニティ事業が同19.3%増の4億33百万円、イベント事業が同18.6%増の14億37百万円、ラウンジ事業が同16.1%増の12億93百万円、連盟事業が同22.0%増の4億94百万円、ライフデザインメディア事業が同4.9%増の2億36百万円としている。

オンライン・オフライン婚活会員数、ブライダルネット月会費課金者数、PARTY☆PARTYやRushの参加者数、日本結婚相談所連盟の加盟相談所数、そして成婚数が増加基調であり、ライフデザインメディア事業における送客ビジネスの拡大も寄与する。人件費増加などを吸収して大幅増収増益見通しだ。

月次データによると、15年3月末時点の婚活会員数(オンライン会員数+オフライン会員数)は14年12月末比2.4万人増加の34.2万人、オンライン会員数(ブライダルネット+PARTY☆PARTY+Rush+KKRブライダルネット)は同2.3万人増加の28.8万人、オフライン会員数(日本結婚相談所連盟会員)は同0.1万人増加の5.4万人、日本結婚相談所連盟加盟相談所数は同42社増加の1031社、ブライダルネット月会費課金者数は同0.3万人増加の1.3万人となった。

また15年3月の婚活イベント動員数は2.8万人、IBJ主要サイトPV数は4489万PVだった。いずれも順調に増加しているため15年12月期業績見通しに増額の可能性もあるだろう。

未婚化・晩婚化による婚姻数の減少、生涯未婚率の上昇、出生率の低下で日本の少子化問題が深刻化しているため、一般的に婚活・ウェディング市場の縮小懸念があり、婚活ブームのピークアウトを指摘する見方もあるようだ。

しかし一方では、若者層の間に「いずれは結婚したい」という声が多く、婚活サービスの潜在市場規模は約1兆円とされる有望市場だ。そして女性活用・子育て支援・少子化対策はアベノミクス成長戦略の重点分野に位置づけられる国策であり、結婚・出産・子育て支援関連ビジネスの前段階の婚活サービスに対する期待感も高まる。

また婚活サービス市場では中小規模事業者が多いため、サービス内容・情報に対する信頼感や料金体系に対する不透明感なども指摘されている。しかし一部で報道されたネット大手の参入によって、婚活サービス業界に対する信頼感や社会的認知度・イメージが高まり、サービス利用者が増加して市場が拡大する効果が期待される。ネット大手の参入は中小規模事業者を淘汰する一方で、規模の大きい優良事業者にとっては追い風となりそうだ。日本最大規模の会員数を誇る優位性を活かして中期的に収益拡大基調だろう。

株価の動き(14年4月1日付で株式3分割、15年1月1日付で株式2分割)を見ると、15年12月期増収増益見通しを評価して1000円近辺での短期モミ合いから上放れの展開となり、14年5月の1249円を突破して4月8日の上場来高値1347円まで上伸した。ネット大手の参入報道を受けて競争激化懸念で10日の1151円まで一旦反落したが、15日と16日は終値で1200円台に戻している。ネガティブ反応は一時的で、結果的には目先的な過熱感が解消して適度な調整となった。

4月16日の終値1206円を指標面で見ると、今期予想PER(会社予想のEPS38円48銭で算出)は31~32倍近辺、前期実績PBR(前期実績のBPS116円37銭で算出)は10~11倍近辺である。

週足チャートで見ると13週移動平均線がサポートラインとなって強基調の形だ。また日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して目先的な過熱感が解消した。15年12月期業績増額の可能性や中期成長力を評価すれば指標面に割高感はなく上値追いの展開だろう。

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