フライトホールディングスはSuica対応決定して有望案件への展開加速

 フライトホールディングス<3753>(東2)は電子決済ソリューションを主力としている。DeNAの次世代タクシー配車アプリに採用され、Suicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が決定した。電子決済ソリューションの展開加速を期待したい。20年3月期第1四半期は赤字だったが、第2四半期以降に順次大型案件を売上計上して通期黒字予想である。下期偏重となるが、通期ベースで収益改題を期待したい。株価は目先的な売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。

■電子決済ソリューションが主力

 子会社のフライトシステムコンサルティングがシステム開発・保守などのコンサルティング&ソリューション(C&S)事業、および電子決済ソリューションなどのサービス事業、イーシー・ライダーがB2B(企業間取引)ECサイト構築システムのECソリューション事業を展開している。

 19年3月期のセグメント別売上高構成比は、C&S事業が55%、サービス事業が35%、ECソリューション事業が10%だった。収益はサービス事業の大型案件によって変動する特性が強い。

■サービス事業は電子決済ソリューションを展開

 サービス事業は電子決済ソリューション分野で、スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」と、スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist」シリーズを展開している。

 スマートデバイス決済専用アプリ「ペイメント・マイスター」は、iPhoneやiPadをクレジットカード決済端末に利用する大企業向けBtoB決済ソリューションである。10年9月に国内初のiPhoneを活用した法人向け決済ソリューションとして提供開始し、高級ホテル・レストラン・観光タクシー・旅行代理店など幅広く導入されている。

 スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist」は、EMV(接触型ICクレジットカード)決済、コンタクトレスEMV(非接触型ICクレジットカード)決済に対応し、コンタクトレスEMVはMastercardなど国際6ブランドの認定が全て完了している。また日本国内の電子マネー決済ではNTTドコモ「iD」に対応し、19年7月にはSuicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が決定した。

 スマートデバイス決済専用マルチ電子決済端末「incredist Premium」は、すでに全国のソフトバンクショップおよびドコモショップに導入されている。

 今後の戦略製品として、据置・モバイル兼用型マルチ決済装置「Incredist Trinity」と「Incredist Trinity Mini」の出荷を開始している。ソフトバンク向け「Incredist Trinity Mini」は19年度~20年度に順次導入予定である。なお「Incredist Trinity」シリーズの製造を19年6月、国内に移管(東京エレクトロンデバイス長崎に製造委託)した。品質向上や安定供給を目指す。

 また19年2月には、米国ID TECH社製「VP6800」を、日本国内の飲料自動販売機や駐車場無人自動精算機などに接続するマルチ決済端末「VP6800・IFC」を発表した。

■電子決済ソリューションの展開加速

 電子決済ソリューションはキャッシュレス化の流れが追い風となる。18年6月改正割賦販売法施行によって、20年3月末までに磁気カード対応からICカード対応に移行することが義務付けられたため、一般の店舗、タクシーや電車の券売機、屋外に設置されている自動販売機やコインパーキング精算機など、クレジットカードを取り扱う全ての業種で対応が必要となる。

 また20年東京五輪や25年大阪万博などの国際イベントを控えて、訪日観光客の決済利便性を向上させるため、日本国内でも非接触クレジットカード決済(正式名称コンタクトレスEMV、通称NFC決済)の普及が迫られている。

 こうした状況も背景として、決済種類・ブランドの拡大、決済端末製品ラインアップの拡充と拡販、決済パートナーの拡大、ストック型ビジネスモデルの拡大などを推進する方針だ。

 18年5月には三井住友カードと包括加盟店契約を締結した。三井住友カードの代行として加盟店開拓・契約締結・管理を行い、決済金額に応じた手数料収入を得る。継続的に手数料収入が得られるストック型収益となる。今後は中堅カード会社との接続など決済パートナーの拡大を目指す。

 19年6月にはGMOフィナンシャルゲート(GMO-FG)と接続開始した。GMO-FGを通じて決済ソリューションの拡販を進める予定で、第一弾として自動精算機向けソリューションを展開する。

 19年7月には、ラグビーW杯訪日外国人向けNFC決済対応の導入事例として、亀の井バス(大分県別府市)の高速バスチケット販売窓口への導入を公表した。大分県ではラグビーW杯2019日本大会で準決勝を含めて5試合が行われるため、各国の応援に来訪する訪日外国人向けNFC決済対応が可能となる。

 そして19年7月には、ディー・エヌ・エー(DeNA)<2432>の次世代タクシー配車アプリ「MOV」のタクシー車内決済システムとして「incredist Premium」が採用され、Suicaなど10種類の交通系ICカード決済への対応が決定した。

 またキャッシュレス決済需要が高まっている中小店舗・商店街への対応として、商店街連合会等と協議して決済ソリューションを展開する方針だ。

 今後も電子マネーブランドの拡大を予定しており、電子決済ソリューションの展開加速を期待したい。

■ロボット関連も強化

 C&S事業は、公共系・音楽配信系・金融系・物流系・放送系などのシステム開発を展開している。業容拡大に向けてトータル物流システム、新しい楽曲配信サービスシステム、クラウドサービス関連の導入支援サービスを重点領域としている。

 サービス事業との融合でロボット関連も強化している。ジエナ社と共同開発した法人向けロボットコンテンツ制作・コンテンツマネージメントサービス「Scenaria」は、アプリ開発の経験が無い部署でも簡単にコンテンツの更新ができるソリューションである。ソフトバンクロボティクスの人型ロボット「Pepper」や、NTT東日本のデスクトップ型ロボット「Sota」に対応している。

 また新規分野として、18年9月には非接触充電機能搭載のビジネス向けIPテレフォニー用ハンドセット「Elite Station」の販売を開始した。各種ビジネスフォンの機能を搭載したタブレット向けIP電話ソフトもリリース予定としている。

 ECソリューション事業の「EC-Rider B2B」は、卸売・企業間取引に特化したECサイト構築システムである。また伝票処理自動化ソリューションの新製品「OCRider」の拡販も推進する。

■20年3月期1Q赤字だが、通期は大型案件計上して黒字予想

 20年3月期連結業績予想は、売上高が19年3月期比2.4倍の34億円、営業利益が4億円の黒字(19年3月期は4億08百万円の赤字)、経常利益が3億90百万円の黒字(同4億03百万円の赤字)、純利益が2億90百万円の黒字(同4億08百万円の赤字)としている。

 C&S事業の基幹システムリニューアル支援案件、サービス事業の「Incredist Trinity Mini」大口案件など、19年3月期末受注残高21億91百万円(C&S事業4億23百万円、サービス事業17億18百万円など)の売上計上を予定し、大幅増収・黒字予想である。19年6月には、改正割賦販売法に対応した「Incredist Trinity Mini」の大口受注(受注金額は非開示、納期は19年内)を公表している。

 第1四半期は開発費増加で赤字だったが、通期は大幅増収・黒字予想である。なお大型案件の売上は第2四半期以降、顧客の検収完了に合わせて順次計上予定としている。下期偏重となるが、通期ベースで収益改題を期待したい。

■株価は戻り試す

 株価は第1四半期の赤字を嫌気する形となったが、目先的な売り一巡して戻りを試す展開を期待したい。8月9日の終値は897円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS30円67銭で算出)は約29倍、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS36円77銭で算出)は約24倍、時価総額は約85億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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