【アナリスト水田雅展の銘柄診断】ティー・ワイ・オー高値更新の展開、15年7月期増収増益見通しを評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 TV-CM制作大手のティー・ワイ・オー<4358>(東1)の株価は高値更新の展開だ。4月8日には216円まで上伸した。その後は上げ一服の形だが自律調整の範囲であり、15年7月期の増収増益見通しを評価して上値を試す展開だろう。08年5月の220円が射程圏だ。

 広告事業(広告代理店向けのTV-CM企画・制作およびポスト・プロダクション業務、広告主向けWEB広告およびプロモーションメディア広告の企画・制作、クロスメディア広告業務)、映像関連事業(アニメーションおよびミュージックビデオの企画・制作)を展開している。

 3月6日には民事再生手続き中のスカイマークに対してブランド再生に関する業務支援を行うことが正式決定したと発表している。投融資は行わずに、スカイマークのブランド再生に必要であると判断される領域のクリエイター、関連スタッフ、ノウハウなどを無償で提供する。スカイマークの再生後は広告受注に繋がると期待される。

 また3月20日に海外事業の統括管理会社としてシンガポールにTYO-ASIAを設立し、4月1日にインドネシアの広告会社The First Editionの代表Uli氏と、インドネシアに合弁会社PT TYO FIRST EDITIONの設立で合意(15年7月設立予定)した。アジアにおける戦略的M&Aの第一弾としてThe First Editionの事業を合弁会社に順次継承していく予定で、インドネシアにおける日系企業との取引拡大も目指すとしている。

 今期(15年7月期)の連結業績見通し(9月11日公表)は売上高が前期比7.3%増の285億円、営業利益が同8.0%増の18億50百万円、経常利益が同12.6%増の17億円、純利益が同50.9%増の9億円としている。14年9月に連結子会社TYOアニメーションズに対する債権放棄を発表したが、過年度において全額引当済みのため今期業績に与える影響は軽微としている。

 配当予想は同2円減配の年間4円(期末一括)としている。ただし前期の年間6円には上場市場変更記念配当3円を含んでいるため、普通配当ベースでは1円増配となる。

 第2四半期累計(8月~1月)は前年同期比7.2%増収、同12.0%営業増益、同24.3%経常増益、同67.7%最終増益だった。既存の大型得意先からの受注が好調に推移し、新規案件の獲得も寄与した。期末受注残高は同4.2%増加の74億円だった。収益管理徹底や人員最適配置などの効果に加えて、販管費で前期計上した上場市場変更費用・株式売出し関連費用などの一巡も寄与した。

 四半期別の推移を見ると、売上高は第1四半期(8月~10月)52億99百万円、第2四半期(11月~1月)72億97百万円、営業利益は第1四半期3億38百万円、第2四半期3億83百万円と拡大基調である。

 受注は電気・情報通信、衣料、自動車、飲料関連を中心に好調を持続している。広告代理店経由の大型案件、大口広告主との直接取引案件とも増加基調であり、映像関連事業では高利益率のライブ映像案件が拡大基調のようだ。

 通期ベースでも広告事業の好調が牽引し、売上原価管理の徹底も寄与して売上総利益率が上昇し、特別損失の一巡も寄与する。通期見通しに対する第2四半期累計の進捗率は売上高が44.2%、営業利益が39.0%、経常利益が41.7%、純利益が48.8%とやや低水準の形だが、広告主直接取引案件が下期に集中しているため通期ベースでも好業績が期待される。

 中期経営計画では目標数値として17年7月期売上高400億円、営業利益27億円を掲げ、株主還元として配当性向25%以上目標と株主優待の継続実施の方針を示している。

 広告市場は拡大基調であり、国内TV-CM制作業界では当社を含む大手制作3社による寡占化傾向を強めているようだ。国内の景気回復や20年東京夏季五輪開催も追い風となるため事業環境は中期的に良好だろう。海外展開も寄与して中期的に収益拡大基調が期待される。

 なお14年10月に株主優待制度の拡充を発表している。15年7月期については、通常株主優待であるクオカード贈呈(毎年1月31日現在500株以上保有株主に対してクオカード1000円相当、2500株以上保有株主に対してクオカード3000円相当、5000株以上保有株主に対してクオカード5000円相当を贈呈)に加えて、当社オリジナル株主優待を継続する。

 オリジナル株主優待の内容(14年12月発表)は、15年1月31日現在500株以上保有株主を対象として、応募者の中から抽選で3名にオリジナルミュージックビデオ「株主様!あなたがアーティスト」を制作して贈呈する。

 株価の動きを見ると、15年1月の186円、14年7月の195円、14年1月の209円を突破して高値更新の展開だ。4月8日には216円まで上伸した。その後は上げ一服の形だが自律調整の範囲だろう。

 4月20日の終値207円を指標面で見ると、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS14円87銭で算出)は14倍近辺、今期予想配当利回り(会社予想の年間4円で算出)は1.9%近辺、前期実績PBR(前期実績の連結BPS77円18銭で算出)は2.7倍近辺である。

 週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じて強基調への転換を確認した。また日足チャートで見ると25日移動平均線が接近して再動意のタイミングだ。15年7月期の増収増益見通しを評価して上値を試す展開だろう。08年5月の220円が射程圏だ。

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