【決算記事情報】科研製薬は20年3月期1Q2桁増益だが通期減収減益予想据え置き
- 2019/9/2 09:20
- 決算発表記事情報
科研製薬<4521>(東1)は整形外科・皮膚科領域を主力とする医薬品メーカーである。20年3月期第1四半期は研究開発費の減少で2桁増益だったが、第2四半期以降に研究開発費が増加するため通期の減収減益予想を据え置いた。なお19年5月9日発表の自己株式取得(上限80万株・45億円、取得期間19年5月10日~19年12月27日)は19年7月26日時点で累計80万株を取得して終了した。
■整形外科・皮膚科領域を主力とする医薬品メーカー
整形外科・皮膚科領域を主力とする医薬品メーカーで、農業薬品や飼料添加物、不動産賃貸(文京グリーンコート関連賃貸)なども展開している。
医療用医薬品・医療機器は、生化学工業<4548>からの仕入品である関節機能改善剤アルツ、14年9月国内販売開始した日本初の外用爪白癬治療剤クレナフィンを主力として、癒着防止吸収性バリアのセプラフィルム、創傷治癒促進剤のフィブラストスプレー、高脂血症治療剤のリピディル、ジェネリック医薬品も展開している。
歯周組織再生剤リグロスは18年3月期から国内販売を本格化した。18年8月には生化学工業が製造販売承認取得した腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコアの販売を開始した。
■開発パイプライン充実やクレナフィン海外導出を推進
成長基盤整備として開発パイプラインの充実、外用爪白癬治療剤クレナフィンの海外導出を推進している。
原発性腋窩多汗症を適応症とするBBI-4000(外用抗コリン剤、15年3月米ブリッケル・バイオテック社から日本とアジア主要国におけるライセンス導入)は第3相段階である。熱傷焼痂除去剤KMW-1(海外商品名NexoBrid、16年4月イスラエルのメディウンド社から日本におけるライセンス導入)は第3相段階である。ポスト・クレナフィンの位置付けで爪白癬症を適応症とする自社創薬のKP-607は第1相段階である。
アタマジラミ症を適応症とするKAR(米国で販売中のイベルメクチン、19年2月米アーバー社から日本におけるライセンス導入)は治験準備中である。レナバサム(19年1月米国コーバス社から日本におけるライセンス導入)は、コーバス社が全身性強皮症を対象として国際共同第3相試験を実施中、皮膚筋炎を対象として国際共同第3相試験を計画中(米国では開始)である。尋常性乾癬を適応症とする自社創薬のKP-470は導出先のボシュ・ヘルス社がカナダで治験実施中である。
クレナフィンの海外導出については、米国・カナダでボシュ・ヘルス社が、韓国で東亞STが、台湾で台田薬品(田辺三菱製薬の子会社)がそれぞれJubliaの商品名で販売している。18年10月には香港・マカオで中国メイン・ライフ社と独占的供給契約を締結し、20年発売を目指している。19年2月には中国AIM社と、中国における独占的ライセンス実施許諾および供給契約を締結した。
■20年3月期1Q2桁増益だが通期減収減益予想据え置き
20年3月期連結業績予想は、売上高が19年3月期比1.3%減の929億円、営業利益が9.3%減の223億円、経常利益が9.1%減の227億円、純利益が9.4%減の161億円としている。配当予想は19年3月期と同額の年間150円(第2四半期末75円、期末75円)で、19年5月9日公表の予想配当性向は36.7%である。
医薬品輸出や特許料収入の減少、研究開発費の増加(3.3%増の106億円)や減価償却費の増加(11.5%増の24億円)などで減収減益予想としている。主要医薬品の売上計画はアルツが0.3%増、クレナフィンが2.7%増、セプラフィルムが0.8%増、フィブラストスプレーが2.4%増、リピディルが20.8%減、ジェネリック医薬品が1.2%増としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比7.5%減の223億35百万円、営業利益が18.7%増の67億05百万円、経常利益が18.6%増の68億98百万円、純利益が19.6%増の48億26百万円だった。
売上面では主力のアルツが0.6%減、クレナフィンが0.1%減と伸び悩み、セプラフィルムは競合品の影響等により4.9%減だった。フィブラストスプレーは0.6%増、リピディルは41.0%減、ジェネリック医薬品は5.1%減だった。海外売上も減少し、全体として減収だが、利益面は研究開発費の減少(55.0%減の16億09百万円)で2桁増益となった。
第1四半期は研究開発費の減少で2桁増益だったが、第2四半期以降に研究開発費が増加するため通期の減収減益予想を据え置いた。
なお中期経営計画では、目標数値に21年度売上高945億円、営業利益250億円、ROE12%以上を掲げている。免疫系、神経系、感染症の3領域を柱として自社創薬基盤を拡充・融合し、開発パイプライン充実を推進する方針だ。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)