TACは下値固め完了

 TAC<4319>(東1)は「資格の学校」を運営し、中期成長に向けて新事業領域への展開も強化している。20年3月期減益予想だが、中期的に収益改善を期待したい。株価は下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。

■財務・会計分野を中心に「資格の学校」を運営、新規事業領域も展開

 財務・会計分野(簿記検定・公認会計士など)、経営・税務分野(税理士・中小企業診断士など)、金融・不動産分野(宅建・不動産鑑定士・FPなど)、法律分野(司法試験・司法書士など)、公務員・労務分野(社会保険労務士・国家総合職など)、その他分野(情報・国際、医療・福祉など)といった幅広い分野で「資格の学校」を運営している。また法人研修事業、出版事業、人材事業も展開している。

 19年3月期のセグメント別売上高構成比は、個人教育事業58%、法人研修事業21%、出版事業18%、人材事業3%だった。

 また19年3月期の教育事業の受講者数は1.8%減の21万5569人(個人が3.8%減の13万1119人、法人が1.4%増の8万4450人)だった。分野別構成比は財務・会計分野15.9%、経営・税務分野11.7%、金融・不動産分野25.9%、法律分野5.8%、公務員・労務分野26.6%、情報・国際/医療・福祉/その他分野14.1%だった。

 新事業領域への展開も強化している。18年5月には千葉大学病院と連携して教育事業を開始すると発表した。病院経営の司令塔を育てる「ちば医経塾」でWeb教材などを開発する。なお19年6月、中国・大連市の持分法適用関連会社の持分を譲渡した。業績への影響は軽微としている。

■四半期業績に季節変動要因

 四半期業績は資格講座の本試験実施・合格発表の時期との関係などで季節変動の特徴がある。第2四半期(7~9月)と第3四半期(10~12月)の公認会計士・税理士講座は、翌年受験のための受講申込が集中する時期となるため、現金ベース売上高が突出して多くなるとともに、翌四半期に向かって前受け金として繰り越されることから、発生ベース売上高の増加が少なくなる傾向がある。

 また第4四半期(1~3月)から第1四半期(4~6月)にかけては、夏・秋の本試験時期に向けて全コースが出揃う時期にあたり、稼働率の上昇から前受金戻入額が増加することを通じて発生ベース売上高が増加する傾向にある。こうした売上の傾向に対して、売上原価や営業費用は毎月一定額計上されるため、四半期ごとの営業利益が変動しやすい。

 なお前受金を信託勘定で分別管理している前受金保全信託制度について、学習期間の短期化や受講料の分割払い利用者の増加で信託残高が減少しているため、19年8月末日をもって終了する。

■20年3月期減益予想だが1Qは2桁経常増益

 20年3月期連結業績予想は売上高が19年3月期比0.2%減の204億30百万円、営業利益が6.1%減の3億20百万円、経常利益が21.4%減の3億22百万円、純利益が67.7%減の1億円としている。配当予想は3円減配の年間5円(第2四半期末2円、期末3円)で、予想配当性向は92.5%となる。

 第1四半期は、売上高が前年同期比1.1%減の55億47百万円で、営業利益が1.8%減の5億51百万円、経常利益が15.9%増の6億49百万円、純利益が12.1%減の3億38百万円だった。売上高、営業利益は概ね横ばいだったが、営業外収益での受取保険金計上などで経常利益は2桁増益だった。教育事業の受講者数は3.5%減の7万7123人(個人が5.1%減の4万8396人、法人が0.7%増の2万8727人)だった。

 20年3月期は教育事業が低調で厳しい状況だが、新規事業・講座の解説、コスト構造の抜本的改革、M&A・業務提携の推進に取り組むとしている。中期的に収益改善を期待したい。

■株価は下値固め完了

 株価は下値固め完了感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。9月17日の終値は197円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS5円40銭で算出)は約36倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は約2.5%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS296円83銭で算出)は約0.7倍、時価総額は約36億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)

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