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生化学工業は反発の動き、20年3月期減益予想だが保守的
- 2019/10/2 05:15
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
生化学工業<4548>(東1)は関節機能改善剤アルツが主力の医薬品メーカーである。20年3月期は原価率上昇や基幹業務システム更新費用で減益予想だが、第1四半期は大幅営業増益と順調だった。通期予想は保守的だろう。19年11月には次期中期経営計画を公表予定としている。株価は年初来安値圏から反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。なお11月8日に第2四半期決算発表を予定している。
■関節機能改善剤アルツなど糖質科学分野が主力の医薬品メーカー
糖質科学分野が主力の医薬品メーカーで、国内医薬品(関節機能改善剤アルツ、白内障手術補助剤オペガン、内視鏡用粘膜下注入材ムコアップ)、海外医薬品(米国向け単回投与関節機能改善剤Gel-One、米国向け3回投与関節機能改善剤VISCO-3、米国向け5回投与関節機能改善剤SUPARTZ-FX、中国向けアルツ)、医薬品原体(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸)、LAL事業(エンドトキシン測定用試薬関連)を展開している。
19年3月期の事業別売上構成比は、医薬品事業が77%(国内医薬品50%、海外医薬品23%、医薬品原体が4%)で、LAL事業が23%だった。
■新薬開発は糖質科学分野に焦点
研究開発は糖質科学分野(糖鎖や複合糖質を研究する科学分野)に焦点を絞り、開発パイプラインには腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603、変形性膝関節症改善剤SI-613、腱・靱帯付着部症を対象としたSI-613-ETP、ドライアイ治療剤SI-614、癒着防止材SI-449がある。
SI-6603は日本では18年3月製造販売承認を取得し、日本における独占的販売契約を締結している科研製薬<4521>が18年8月販売開始(腰椎椎間板ヘルニア治療剤ヘルニコア)した。また16年8月にはスイスのフェリング社とSI-6603の日本を除く全世界におけるライセンス契約を締結している。フェリング社から最大90百万米ドルのマイルストーン型ロイヤルティを受領する。
なお米国で実施したSI-6603第3相臨床試験について、17年11月に下肢痛軽減において統計学的に有意な改善効果が認められなかったと発表したが、18年2月第3相臨床の追加試験を開始した。
SI-613は17年2月日本で第3相臨床試験を開始、17年6月米国で第2相臨床試験を開始した。17年9月には小野薬品工業<4528>と日本における共同開発・販売提携に関する契約を締結している。小野薬品工業から契約締結一時金として20億円を受領するとともに、最大で総額100億円のマイルストーン型ロイヤルティを受領する。また17年9月には日本でSI-613-ETPの後期第2相臨床試験を開始した。
19年2月には、小野薬品工業と日本で共同開発中の変形性膝関節症治療剤ONO-5704/SI-613の第3相臨床試験において、変形性膝関節症を対象とした検証的試験で良好な結果を得たと発表した。20年前半の承認申請を目指すとしている。
SI-614は米国・欧州で15年1月第2・3相試験が終了し、次相試験について検討中である。SI-449は18年5月、日本でパイロット試験を開始した。
■20年3月期減益予想だが保守的
20年3月期連結業績予想は売上高が19年3月期比0.5%減の282億50百万円、営業利益が59.1%減の4億円、経常利益が19.6%減の23億円、純利益が10.9%減の20億円としている。配当予想は19年3月期と同額の年間26円(第2四半期末13円、期末13円)で、予想配当性向は73.3%となる。
事業別売上高の計画は、医薬品事業が1.3%減収(国内医薬品1.1%減収、海外医薬品2.1%増収、医薬品原体22.1%減収)で、LAL事業が2.4%増収としている。想定為替レートは1米ドル=105円で、為替感応度(1円変動時の影響額)は売上高で約1億10百万円、営業利益で約55百万円としている。
SI―613臨床試費用減少などで研究開発費は減少(4.9%減の68億円)するが、薬価改定や為替影響などで微減収となり、売上原価率上昇、基幹業務システム更新費用やヘルコニア市販後調査費用など販管費増加で営業減益予想としている。なお営業外収益では受取ロイヤリティー、特別利益では投資有価証券売却益を見込んでいる。
第1四半期は、売上高が前年同期比5.8%増の76億49百万円で、営業利益が81.7%増の9億64百万円、経常利益が19.5%減の12億51百万円、純利益が18.6%減の9億80百万円だった。
医薬品事業が6.8%増収(国内医薬品が6.8%増収、海外医薬品が8.4%増収、医薬品原体が14.4%増収)、LAL事業が2.8%増収と堅調に推移した。コスト面では海外医薬品の販売単価下落で原価率が上昇したが、増収効果と研究開発費減少で大幅営業増益だった。ただし営業外収益で受取ロイヤリティーがなく、投資有価証券売却益も減少したため経常減益、最終減益だった。
第1四半期の営業利益は通期予想を超過達成したが、通期では基幹業務システム更新費用やヘルコニア市販後調査費用など販管費の増加を見込み、通期減益予想を据え置いた。ただし第1四半期が順調であり、通期予想はやや保守的だろう。
■株価は反発の動き
株価は9月の年初来安値圏から反発の動きを強めている。調整一巡して出直りを期待したい。10月1日の終値は1161円、今期予想連結PER(会社予想連結EPS35円46銭で算出)は約33倍、今期予想配当利回り(会社予想の年間26円で算出)は約2.2%、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS1294円88銭で算出)は約0.9倍、時価総額は約660億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)