【アナリスト水田雅展の銘柄分析】Jトラスト出直り本格化、16年3月期の収益改善期待

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 Jトラスト<8508>(東2)の株価は下値固めが完了して出直りの動きが本格化している。4月22日は前日比79円高の1276円まで急伸する場面があった。トレンド好転を確認した形であり、16年3月期の収益改善期待で水準切り上げの展開だろう。なお5月14日に15年3月期決算発表を予定している。

 M&Aや債権承継などを積極活用して業容拡大戦略を推進し、金融サービス事業(事業者向け貸付、消費者向け貸付、クレジット・信販、信用保証、債権買取)、不動産事業、アミューズメント事業、海外金融事業(消費者金融業、貯蓄銀行業)、その他事業(システム開発など)を展開している。

 国内金融分野では、日本保証(12年3月ロプロが武富士の消費者金融事業を承継、12年9月ロプロと日本保証が合併)、Jトラストカード(11年8月楽天KCを子会社化、15年1月「KCブランド」事業を譲渡、14年3月子会社化した個品割賦事業NUCSの「NUCSブランド」事業を承継、商号をJトラストカードに変更)など、国内不動産分野・アミューズメント分野ではアドアーズ<4712>(12年6月子会社化)を傘下に置いている。

 海外金融分野では韓国での事業基盤確立を推進している。12年10月に貯蓄銀行認可を受けた韓国・親愛貯蓄銀行は、未来貯蓄銀行の一部資産・負債を承継し、13年1月韓国・ソロモン貯蓄銀行から、13年6月韓国・エイチケー貯蓄銀行から消費者信用貸付債権の一部を譲り受けた。

 14年3月に韓国・ハイキャピタル貸付および韓国・ケージェイアイ貸付を子会社化、14年8月に韓国・ハイキャピタル貸付、韓国・ケージェイアイ貸付、および韓国・ネオラインクレジット貸付(11年4月子会社化)の貸付事業を韓国・親愛貯蓄銀行に譲渡した。韓国・親愛貯蓄銀行の相対的に低金利の預金を原資として事業を運営し、グループ全体として収益構造改善を進める。

 14年6月に発表した韓国スタンダードチャータードキャピタル(SCキャピタル)および韓国スタンダードチャータード貯蓄銀行(SC貯蓄銀行)の買収については、15年1月にSC貯蓄銀行の全株式を取得(JT貯蓄銀行に名称変更)した。今後は親愛貯蓄銀行とJT貯蓄銀行の合併を進める。また3月30日にはSCキャピタルの全株式を取得(JTキャピタルに名称変更)した。

 アジアへの展開については、13年12月に子会社Jトラスト・アジア(シンガポール)がマヤパダ銀行(インドネシア)と資本業務提携し、14年11月にはムティアラ銀行(インドネシア)を連結子会社化(出資比率99%)した。15年3月にはJトラスト・アジアを通じてオートバイ販売金融事業のGL(タイ)の転換社債引き受け契約を締結した。さらに4月9日にはJトラスト・アジアがJTインベストメント・インドネシアを設立すると発表した。ムティアラ銀行の残りの1%を取得する。

 なおアジアの不動産分野では、14年9月にシンガポールの不動産開発会社LCDの株式29.5%を取得して筆頭株主となったが、15年2月にLCDの大株主グループの1社であるAFグローバルが実施するTOBに応募して所有する全株式を譲渡した。投資有価証券売却益約10億円計上する見込みだ。

 アミューズメント分野では14年9月、子会社アドアーズが韓国でカジノ事業を展開するJBアミューズメント(JBA)の第三者割当増資を引き受けて第2位株主となった。またアドアーズは14年11月に日本介護福祉グループを子会社化して介護事業に進出した。

 連結子会社のJトラストベンチャーキャピタル合同会社は、15年3月にSmartEbook<2330>が発行する第1回無担保転換社債型新株予約権付社債および第6回新株予約権を引き受け、SmartEbookの株式借入を行った。企業ニーズに応えるファイナンス支援や事業支援などを通じて支援先企業の企業価値向上を追求し、グループ成長に繋げる方針だ。

 なお3月30日には子会社の日本保証において、スリムで筋肉質の経営体質への転換を目指す事業構造改革の一環として希望退職を募集すると発表した。特別退職金や再就職支援に伴う一時的費用約9億円を15年3月期の特別損失に計上する予定としている。

 また3月30日には、選択と集中の観点から子会社化クレディアの全株式を4月1日付で売却すると発表した。16年3月期第1四半期の個別決算で特別利益として関係会社売却益約7億円を計上するが、連結業績への影響は軽微としている。

 前期(15年3月期)連結業績見通し(8月13日公表)は営業収益が前々期比11.9%増の692億91百万円、営業利益が同80.7%減の26億56百万円、経常利益が同79.5%減の27億38百万円、そして純利益が同0.8%増の112億39百万円としている。配当予想(5月14日公表)は前々期と同額の年間10円(第2四半期末5円、期末5円)としている。

 事業基盤強化に向けた一時的営業費用の増加などで営業減益、経常減益の見通しだ。純利益については韓国JT貯蓄銀行および韓国JTキャピタルの株式取得に伴う負ののれん発生益が寄与する。

 なお第3四半期累計(4月~12月)を四半期別に見ると、営業収益は第1四半期(4月~6月)159億28百万円、第2四半期(7月~9月)160億51百万円、第3四半期(10月~12月)161億41百万円、営業利益は第1四半期3億58百万円の赤字、第2四半期22億74百万円の赤字、第3四半期6億89百万円の赤字である。

 中期成長向けてM&Aや事業再編を活用したグループの事業基盤構築・強化に取り組んでいるため、当面はM&A・事業再編、一時的利益・費用の計上などに伴って収益が大幅に変動するようだ。ただしクレジットカード事業の再構築、韓国事業の収益改善、アジアへの積極的な業容拡大、グループシナジーなどの効果で、今期(16年3月期)の収益改善と中期的な収益拡大が期待される。

 株価の動きを見ると、1000円近辺での下値固めが完了して出直りの動きが本格化している。4月22日は前日比79円(6.60%)高の1276円まで急伸する場面があった。

 4月22日の終値1246円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS95円24銭で算出)は13倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間10円で算出)は0.8%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS1502円54銭で算出)は0.8倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線に対するプラス乖離率が10%強に拡大して目先的な過熱感を強めているが、週足チャートで見ると52週移動平均線を突破し、13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じた。トレンド好転を確認した形であり、16年3月期の収益改善期待で水準切り上げの展開だろう。

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