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三洋貿易は戻り試す、19年9月期2桁増益予想で20年9月期も収益拡大期待
- 2019/10/23 05:30
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
三洋貿易<3176>(東1)は自動車向けゴム・化学関連商品やシート部品を主力とする専門商社である。19年9月期2桁増益・大幅増配予想である。20年9月期も収益拡大を期待したい。株価は下値を切り上げる動きだ。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。なお11月6日に19年9月期決算発表を予定している。
■自動車向けゴム・化学関連製品やシート部品が主力の専門商社
ゴム関連商品、化学品関連商品、産業資材関連商品、科学機器関連商品、機械・資材関連商品の5分野に展開する専門商社である。
18年9月期セグメント別(連結調整前)営業利益構成比は化成品29%、機械資材49%、海外現地法人15%、国内子会社8%、その他0%だった。業種別売上構成比(単体ベース)は自動車向けが5割強を占め、その他化学、OA・家電、塗料・インキなどが続いている。なお19年9月期から国内子会社セグメントを廃止し、ケムインターを化成品へ、コスモス商事を機械資材に振り分けている。
自動車関連は合成ゴム・添加剤、タイヤ用特殊クレー、防振ゴム・ホース原料、自動車用シート部品(レザーシート、シートヒーター、ランバーサポート、シートセンサー)といった高付加価値品を中心に展開している。シートヒーター(Gentherm社製)はカーボンファイバー仕様市場を独占し、ランバーサポート(L&P Group社製)は世界市場6割を占有している。
メーカー並みの技術サポート力に加えて、財務面で実質無借金経営であることも特徴だ。なお収益面では設備投資関連商材を含むため、3月期決算企業の期末にあたる第2四半期の構成比が高くなりやすい特性がある。
■業容拡大・グローバル戦略を推進
M&Aも活用して業容拡大・グローバル戦略を推進している。17年6月精密鋳造用副資材輸入販売の日本フリーマンを子会社化、17年10月化学品専門商社のアズロを子会社化、18年4月工業化学薬品輸入販売の子会社ソートを吸収合併、18年8月大日本コンサルタント<9797>と合弁で静岡県・湯船原地区の木質バイオマス発電所を管理運営する合同会社ふじおやまパワーエナジーを設立、19年5月ゴムライニング製ポンプで世界首位の新東洋機械工業を子会社化した。
19年10月には、日本ルフト(16年7月子会社化)の科学機器事業を譲り受けた。日本フルトは医療機器事業に経営資源を集中する。また畜産機能性原料の輸入専門商社ワイピーテックを子会社化(10月31日予定)する。
海外は米国、メキシコ、中国、タイ、ベトナム、インド、インドネシア、シンガポール、ドイツに展開している。
■長期経営計画の経営スローガン「最適解への挑戦」
長期経営計画「VISION2023」では、数値目標を23年9月期の経常利益75億円、ROE15%、海外拠点成長率(売上高、年率)10%としている。
経営スローガンに「最適解への挑戦」を掲げ、基本戦略として企業体質の強化で最適解への挑戦、企業基盤の強化、人材への投資、収益基盤の強化で事業領域の深化、新規ビジネスの開拓、グローバル展開の加速、新規投資案件の推進に取り組む。
事業領域の深化では注力ドメインを、自動車部材(内装材、ゴム部材)、ファインケミカル(高機能化学品、ゴム添加剤)、ライフサイエンス(医薬中間体、医療機器、ゴム部材)、サステナブル(木質バイオマス、地熱発電)、畜産関連(ペレットミル機械、畜産部材)、科学分析機器(先端計測・分析機器)とした。
また今後の成長ドライバーとして木質バイオマス関連、自動車関連、および海外への展開を加速する方針だ。
木質バイオマス関連は、実績豊富な木質ペレット製造装置(CPM社製)やガス化熱電併給装置(ブルクハルト社製)のプロジェクト受注を積み上げて、将来的には部品更新やメンテナンスを中心とするストック型収益の構築を目指す。自動車関連はEV化や自動運転化に対応し、モビリティ分野での移動環境の快適化・高付加価値化の流れを踏まえた商品開発を推進する。海外はアセアン+インド、中国、北中米の3拠点を主軸としてグローバル展開を加速する。
■19年9月期2桁増益予想、20年9月期も収益拡大期待
19年9月期の連結業績予想(5月13日に売上高、利益とも上方修正)は、売上高が18年9月期比9.6%増の860億円、営業利益が12.1%増の59億円、経常利益が11.2%増の62億円、純利益が15.5%増の42億円としている。配当予想(5月13日に第2四半期末3円上方修正、期末2円上方修正)は、10円増配の年間74円(第2四半期末37円、期末37円)としている。予想配当性向は25.2%となる。
第3四半期累計は売上高が前年同期比8.1%増の641億05百万円、営業利益が14.8%増の49億02百万円、経常利益が14.8%増の50億97百万円、純利益が16.1%増の34億40百万円だった。自動車関連が牽引して2桁増益だった。
化成品は1.7%増収で18.4%減益だった。仕入値上昇や中国景気減速の影響で自動車・家電・情報機器関連向け合成ゴムや副資材の採算が低調だった。また中国での環境規制に起因して塗料・インク関連の高付加価値商材やフィルム関連が低調だった。機械資材は18.8%増収で31.8%増益だった。産業用資材関連で自動車シート部品が好調に推移した。機械・環境関連では木質バイオマス熱電併給施設が本格稼働した。海外現地法人は2.6%増収で7.6%増益だった。米国が米中貿易摩擦の影響で減収減益となり、ベトナムも塗料用中心に化学品が伸び悩んだが、タイと上海の自動車関連が好調に推移し、新規連結のメキシコも寄与した。
通期も自動車関連ビジネスやバイオマス関連ビジネスが伸長し、原料高や継続的に実施する成長投資を吸収して2桁増益・大幅増配予想である。第3四半期累計の進捗率は売上高が74.5%、営業利益が83.1%、経常利益が82.2%、純利益が81.9%だった。第2四半期の構成比が高い収益特性を考慮しても順調である。さらに20年9月期も収益拡大を期待したい。
■株価は戻り試す
株価は下値を切り上げる動きだ。調整一巡して戻りを試す展開を期待したい。10月21日の終値は2173円、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS293円38銭で算出)は約7倍、前期推定配当利回り(会社予想の年間74円で算出)は約3.4%、前々期実績連結PBR(前々期実績連結BPS1845円34銭で算出)は約1.2倍、時価総額は約315億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)