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ジーニーは底固め完了、20年3月期営業黒字化予想
- 2019/10/25 11:24
- アナリスト水田雅展の銘柄分析
ジーニー<6562>(東マ)はネット媒体の広告枠を自動売買するアドテクノロジーをベースとして、事業領域をマーケティングテクノロジー領域に拡大し、マーケティングテクノロジー事業を展開している。20年3月期営業黒字化予想である。収益改善を期待したい。株価は安値圏でモミ合う形だが、底固め完了して出直りを期待したい。なお11月13日に第2四半期決算発表を予定している。
■マーケティングテクノロジー事業を展開
インターネットメディアの広告収益最大化を図る独自のアドテクノロジー(ウェブサイトやスマートフォンアプリ等に各々の閲覧者に合った広告を瞬時に選択して表示させる技術)をベースとして、事業領域拡大およびサービス提供地域の拡大戦略を推進し、マーケティングテクノロジー事業(アド・プラットフォーム事業、マーケティングソリューション事業、海外事業)を展開している。
19年3月期の事業別売上構成比は、アド・プラットフォーム事業84%、マーケティングソリューション事業8%、海外事業8%だった。収益面の季節特性として、広告主の予算配分の影響を受けるため、12月および年度末の3月に売上が集中する傾向がある。また近年は、ストック型ビジネスのマーケティングソリューション事業に注力している。
なお14年にソフトバンク(現ソフトバンクグループ)と資本業務提携し、現在はソフトバンク<9434>の持分法適用会社である。業務提携によって多数のビジネスメリットが得られている。
■アド・プラットフォーム事業はDOOH領域にも積極展開
アド・プラットフォーム事業は、ネットメディア向けサプライサイドビジネスプラットフォーム「GenieeSSP」を主力として、広告主向けデマンドサイドビジネスプラットフォーム「GenieeDSP」や「GenieeDMP」も展開している。
ネット広告取引市場では、RTB(広告枠を自動で瞬時にオークション形式で取引するシステム)によって取引されるが、同社独自の広告配信最適化アルゴリズムで効果的な広告配信を実現している。さらにビッグデータやAIを活用して、広告配信の精度向上や自動化に取り組んでいる。
また事業領域拡大戦略の一環として、DOOH(交通広告や屋外広告など自宅以外の場所で接触する屋外デジタル広告)領域にも積極展開している。
18年11月タクシー後部座席に設置されたデジタルサイネージ向け広告配信プラットフォームを開発し、19年2月DeNA<2432>が提供するタクシー配車サービスでの本格運用を開始した。
19年8月には、ジオネクサスが提供する動画再生機能付呼び出しベルで放映される「ブレイクキャスト」に、DOOH広告配信プラットフォームをOEM提供した。全国200店舗のフードコート呼び出しベル3500台(19年7月現在)に、デジタルサイネージ広告を配信する。
■マーケティングソリューション事業と海外事業も拡大
マーケティングソリューション事業は、CRM(顧客管理)/SFA(営業管理)システム「ちきゅう」、マーケティングオートメーション「MAJIN」、チャット接客ツール「chamo」を展開している。アドテクノロジー領域にとどまらず、マーケティングテクノロジー領域に拡大する戦略だ。
CRM/SFAシステム「ちきゅう」は、顧客管理のためのCRMシステムおよび商談管理のためのSFAシステムを一体化させたクラウド型サービスである。マーケティングオートメーション「MAJIN」は、企業のマーケティング活動を自動化し、効率的に潜在顧客の集客や購買意欲等の向上、購買・契約等を行うためのプラットフォームである。今後はプロダクト間のクロスセルを積極展開する。
海外事業は東南アジアを中心に「GenieeSSP」などを展開し、19年3月期にはインドへ事業領域を拡大した。さらに今後は、ソフトバンクと共同提供するクロスボーダーサービスを強化・拡大する方針だ。
■20年3月期営業黒字化予想
20年3月期連結業績予想は、売上高が19年3月期比4.1%増の155億72百万円、営業利益が23百万円の黒字(19年3月期は3億10百万円の赤字)、経常利益が7百万円の黒字(同3億30百万円の赤字)、EBITDAが3億59百万円の黒字(同19百万円の黒字)、純利益が39百万円の赤字(同5億44百万円の赤字)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比15.7%減の33億93百万円、営業利益が1億62百万円の赤字(前年同期は2百万円の黒字)、経常利益が1億69百万円の赤字(同4百万円の赤字)、EBITDAが87百万円の赤字(同84百万円の黒字)、純利益が1億51百万円の赤字(同11百万円の黒字)だった。
売上面では、マーケティングソリューションが新規受注などで43.0%増の3億63百万円、海外が大手化粧品会社の大型キャンペーン案件受注などで44.6%増の3億69百万円と大幅伸長した。アド・プラットフォームは24.4%減の27億04百万円と大幅減収だったが、取引先アドネットワーク事業者の方針変更の影響が一段落し、ほぼ計画水準だった。
利益については、期初時点で上期は低水準を見込み、下期偏重の計画としている。通期の売上総利益は33.1%増の見込みだ。取引先アドネットワーク事業者の方針変更の影響が下期には一巡し、コスト管理も徹底して通期営業黒字予想である。通期ベースで収益改善を期待したい。
■22年3月期EBITDA30億円超目標
19年6月策定の中期経営計画では、目標値に22年3月期売上高250億円、売上総利益60億円、EBITDA30億円超(20年3月期予想売上高155億円、売上総利益25億円、EBITDA3億円)を掲げている。
軸足を置く市場は拡大基調であり、事業ポーフォリオマネジメントとKPI管理を強化しつつ、事業領域(事業軸)とサービス提供地域(地域軸)の拡大戦略を推進する方針だ。マーケティングソリューションなど、利益率の高いプロダクトやストック型収益の構成比も高まる見込みだ。中期的に収益拡大を期待したい。
■株価は底固め完了
株価は安値圏でモミ合う形だが、底固め完了して出直りを期待したい。10月24日の終値は585円、前期実績連結PBR(前期実績連結BPS151円54銭で算出)は約3.9倍、時価総額は約105億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)