【アナリスト水田雅展の銘柄分析】日本マニュファクチャリングやや乱高下したが16年3月期の収益改善基調を評価して上値試す

【アナリスト水田雅展の銘柄分析

 製造請負大手の日本マニュファクチャリングサービス<2162>(JQS)の株価は、兼松との資本・業務提携を好感して4月7日の789円、15年3月期業績増額修正を好感して4月22日の730円まで急伸した。やや乱高下して目先的な過熱感を残しているが、16年3月期の収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。なお5月15日に15年3月期決算発表を予定している。

 製造請負・派遣のIS(インラインソリューション)事業、修理・検査受託のCS(カスタマーサービス)事業、技術者派遣のGE(グローバルエンジニアリング)事業、子会社の志摩グループとTKRグループが展開する開発・製造受託のEMS(エレクトロニクス・マニュファクチャリング・サービス)事業を展開している。15年3月期からIS、CS、GEを総称してHS(ヒューマンソリューション)事業にセグメント区分を変更した。

 基本コンセプトとして、日本、中国、アセアン諸国における人材ビジネス事業とEMS事業の融合によるトータルソリューションサービス「neo EMS」を掲げている。製造アウトソーシング企業NO.1を目指すとともに、サービスの一段の高付加価値化に向けて開発・設計といった製造業の上流プロセス分野の機能を強化している。単なる製造アウトソーサーから、キーテクノロジーを有して技術競争力を備えた企業グループへの変革を推進する戦略だ。

 13年10月に子会社TKRが日立メディアエレクトロニクス(日立ME)の電源事業、トランス事業、車載チューナー事業、映像ボード事業を譲り受け、水沢工場(岩手県)を取得した。14年10月にはパナソニック<6752>から車載向けを除く電源・電源関連部品事業(高圧電源、低圧電源、マグネットロール、トランス)を譲り受け、受け皿会社のパワーサプライテクノロジー(PST)が新たに操業を開始した。パナソニックから引き継いだ取引社数は海外111社および国内90社である。

 日立MEおよびパナソニックからの事業譲受により、当社グループの電源事業は国内電源メーカー上位に匹敵する規模となった。電源に関する技術ノウハウの蓄積・融合を図り、電源関連事業を当社グループのキーテクノロジー分野として、LED照明、空気清浄器、エアコン、複写機向けなどに新規顧客開拓を推進し、EMS事業の高付加価値化も推進する方針だ。なお14年9月には子会社TKRが検査工程の自動化・省力化装置のカスタマイズ受託生産を本格的に開始している。

 14年10月には日本通運<9062>と、国内外の製造業務と物流業務を組み合わせた新たなワンストップサービスの構築に向けて業務提携した。製造業をターゲットに物流分野のサービスを拡充し、19年度に売上高300億円を目指すとしている。

 中国での事業展開に関しては、14年3月施行の「中国労務派遣暫定規定」によって中国の労働政策が派遣から請負に転換する見込みとなり、14年5月には当社と子会社の北京中基衆合国際技術服務有限公司が、中国労務派遣専門委員会において発足した承欖(製造請負)研究プロジェクトに参画した。16年3月の承欖(製造請負)法制化を目指しており、中国の製造業において製造請負の市場拡大が予想されるとともに、プロジェクトに参画している当社の競争優位性が期待されている。

 アジアへの展開では14年9月に子会社nmsタイランドを設立し、カンボジアの人材エージェントと連携して製造業向けにタイ人とカンボジア人の派遣を開始した。14年10月には子会社nmsベトナムがNMSIRと事業提携してベトナムでの労働派遣ライセンスを取得した。14年12月には子会社nmsタイランドがカンボジアの人材会社SOKおよびUNGの2社と、カンボジア人材のタイへの派遣事業について業務提携した。今後3年間でカンボジア人派遣在籍数1万人を目指すとしている。

 3月30日に兼松<8020>に対して第三者割当による自己株式処分を実施(払込4月15日)して資本・業務提携すると発表した。兼松の部材調達力および販売力、当社の技術・製造ノウハウを相互活用することで、EMS事業拡大、戦略的部材調達、海外事業展開などで大きなシナジー効果が見込まれるとしている。なお兼松は当社の発行済株式総数の10.0%(総株主の議決権数に対する割合10.9%)を保有する第3位株主となった。

 4月20日に前期(15年3月期)連結業績見通しの増額修正を発表した。前回予想(5月15日公表)に対して売上高は4億50百万円増額して前々期比17.5%増の492億50百万円、営業利益は10百万円増額して5億円(前期は6億43百万円の赤字)、経常利益は2億30百万円増額して7億40百万円(同1億75百万円の赤字)、そして純利益は2億50百万円増額して同12.0%減の5億70百万円とした。

 パナソニックから譲り受けた一般電源事業の子会社PSTが第4四半期(1月~3月)からPS事業として連結対象となったことに加えて、円安に伴う為替差益の発生、子会社TKRの株式追加取得(グループ連携を一段と強化するため保有比率を約87%から約95%に引き上げ)に伴う負ののれん発生益も寄与した。

 配当予想(3月19日に増額修正)は、期末に創業30周年記念配当2円を実施して、前期比2円増配の年間5円(期末一括=普通配当3円+記念配当2円)としている。

 なお第3四半期累計(4月~12月)を四半期別に見ると、売上高は第1四半期(4月~6月)116億30百万円、第2四半期(7月~9月)121億57百万円、第3四半期(10月~12月)108億15百万円で、営業利益は第1四半期87百万円、第2四半期1億49百万円、第3四半期1億10百万円の赤字である。

 今期(16年3月期)は、EMS事業における既存案件の増産効果やオペレーション改善効果、パナソニックから譲り受けたPS事業の収益寄与本格化などで収益改善基調だろう。

 株価の動きを見ると、3月30日の兼松との資本・業務提携発表を好感して4月7日の789円まで急伸し、その後一旦反落したが4月20日発表の15年3月期業績増額修正を好感して4月22日の730円まで急伸した。やや乱高下したが収益改善を評価する流れだろう。

 4月23日の終値634円を指標面で見ると、前期推定連結PER(会社予想の連結EPS64円79銭で算出)は9~10倍近辺、前期推定配当利回り(会社予想の年間5円で算出)は0.8%近辺、前々期実績PBR(前々期実績の連結BPS451円79銭で算出)は1.4倍近辺である。

 日足チャートで見ると25日移動平均線がサポートラインの形となった。また週足チャートで見ると13週移動平均線と26週移動平均線が上向きに転じた。目先的にはやや過熱感を残しているが強基調に転換したようだ。16年3月期の収益改善基調を評価して上値を試す展開だろう。

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