【小倉正男の経済コラム】文在寅大統領 親書の中身は「全面降伏」

小倉正男の経済コラム

■「コリア・ファティーグ」(韓国疲れ)どころかウンザリ

 「コリア・ファティーグ」(韓国疲れ)という言葉があるが、いまではそれを超えてウンザリというか付き合いたくないという感が強い。

 ファティーグ=疲れというものを知らない韓国だが、日本が無視して、かまってくれないので怒ったり寂しがったりしているようだ。

 日韓議員連盟総会というのが東京で開かれたようだが、日本メディアはまともには取り上げなかった。
韓国メディアの一部は、阿倍晋三首相から総会に祝辞が届かなかったと怒りと嘆きの報道をした。韓国メディアは何しろ「反阿倍」だ。
しかし、日本のメディアはそうしたことも含めてほとんど無視したようなものだった。

 「GSOMIA(軍事情報包括保護協定)復帰は日本次第だ」
文在寅大統領の韓国政府高官はそう主張している。文大統領は、自らは発言せず、それを配下にわざわざ言わせている。

 日本が輸出管理強化を解除すれば、“GSOMIAに復帰してやる”といった調子である。
おつかれさまなことに「警告する」「盗っ人猛々しい」とかと同じで、まだ上から目線を続けている。

 どこかのイカサマな商人のように売値をぬけぬけと高く吊り上げているようなものだ。
本音は、輸出管理強化をなんとか緩めてくれというものだが、ブラフっぽい言葉で弱みを隠すといういつものやり方だ。
これでは日本としては、韓国を信頼できる相手にすることはできない。

■親書の中身は文大統領の「全面降伏」

 韓国の文大統領から安倍首相に親書なるものが送られてきた。これだけ挑発めいた言動を多発して関係を悪化するだけ悪化させて、親書で何を語るのだろうか。

 日本政府側は、親書ということで中身については明らかにしなかった。日本側は、「韓国には、健全な関係に戻すには具体的な行動できっかけをつくってほしい」という立場を表明。関係改善を急ぐ姿勢はみせていない。

 親書の中身は、案外なことに、韓国国会で明らかにされた。「懸案が克服され、首脳同士が会えれば良いという希望を表した」、と韓国・康京和外相がさらりと答弁した。

 文大統領としては、親書の中身は隠しておきたかったのではないか。「反日」「反阿倍」と声高に国民や配下に挑発しまくってきたが、これでは文大統領の「全面降伏」ではないか。

 康京和外相が、それをさらりとディスクローズしたのは少し興味深い。与党内の文大統領一派の専横に一矢を報いたのではないかとすら思われる。

■文大統領が自画自賛の「所得主導経済」はすでに破綻

 韓国経済は火の車だ。米中貿易戦争の長期化で、中国経済が冷えている。韓国は中国などの外需に依存して輸出で稼ぐ加工貿易型経済だが、肝心の輸出は1年近く減少が続いている。しかも米中貿易戦争は解決のメドがつかず、想定を超える長期化も懸念されている。

 そのうえ文大統領が導入し自画自賛している「所得主導経済」はすでに破綻している。
最低賃金の大幅アップ、労働時間の68時間から52時間への大幅短縮は、組合に守られている正規労働者には絶大な恩恵を与えている。ただ、企業側には急激な人件費コスト増になる。

 しかし、労働コストが大きく上がれば、企業は正規労働者を増やそうとはしない。失業が増加し、特に若者の失業が深刻化しているのが実体だ。

 韓国は、企業でいえば売り上げが大きく減っているのに、人件費コストが大幅に上がっているような状態にほかならない。減収なのに原価高だ――。しかも法人税は上げられている。財閥など大企業は22%から25%の法人税に変更された。少なくなった利益に法人税が重たく課されている。

 それらは文大統領の社会主義をベースにした「反サプライサイダー政策」である。企業は文大統領の過大な「労働規制」に縛られている。さらに法人税など税金でも痛められている。

■韓国メディアすらも文大統領の経済破綻を報道

 文大統領としては、自らの手で招いた経済低迷だが、それは認めることはできない。
得意の問題スリ替えで「反日」を叫んでも、長期に及べば国民にも見透かされることになる。「反日」をやれば、格安航空券(ソウルー東京)3000円で最安値更新中ではないが、韓国経済には手酷い痛みが出る。

 アメリカのトランプ大統領からは、「文大統領は信用できない。金正恩委員長は、文氏は嘘をつく人だと言っていた」と酷評されている。
文大統領は、人権派弁護士だというが、北朝鮮には北朝鮮国内の惨い人権問題に目をつぶってスリ寄った。それでも金委員長からは「あのように図々しい人は珍しい」と突き放されている。四面楚歌、これほど嫌われているのはレアケースだ。

 韓国メディアは、文大統領の政権にベッタリで、文大統領の味方に終始してきたが、ここにきてようやく経済の惨めな失敗を報道し始めている。
世の移ろいというか、文大統領のレームダック化がいよいよ始まっているのではないかと思われる。

(小倉正男=「M&A資本主義」「トヨタとイトーヨーカ堂」(東洋経済新報社刊)、「日本の時短革命」「倒れない経営~クライシスマネジメントとは何か」(PHP研究所刊)など著書多数。東洋経済新報社で企業情報部長、金融証券部長、名古屋支社長などを経て経済ジャーナリスト。2012年から当「経済コラム」を担当)

関連記事


手軽に読めるアナリストレポート
手軽に読めるアナリストレポート

最新記事

カテゴリー別記事情報

ピックアップ記事

  1. ■シスルナ経済圏構築に向け、グローバルなパートナーシップを強化  ispace(アイスペース)<9…
  2. 【先人の教えを格言で解説!】 (犬丸正寛=株式評論家・平成28年:2016年)没・享年72歳。生前に…
  3. ■物価高・人手不足が直撃、倒産件数29カ月連続で増加  帝国データバンクの調査によると、倒産件数が…
2024年11月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930  

ピックアップ記事

  1. ■化粧品大手は業績下方修正も、電鉄各社は上方修正で活況  トランプ次期大統領の影響を受けない純内需…
  2. どう見るこの相場
    ■金利敏感株の次は円安メリット株?!インバウンド関連株に「トランプ・トレード」ローテーション  米…
  3. ■金利上昇追い風に地銀株が躍進、政策期待も後押し  金利上昇の影響を受けて銀行株、特に地方銀行株の…
  4. ■トリプルセット行、ダブルセット行も相次ぐ地銀銀株は決算プレイで「トランプトレード」へキャッチアップ…

アーカイブ

「日本インタビュ新聞社」が提供する株式投資情報は投資の勧誘を目的としたものではなく、投資の参考となる情報の提供を目的としたものです。投資に関する最終的な決定はご自身の判断でなさいますようお願いいたします。
また、当社が提供する情報の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、予告なく削除・変更する場合があります。これらの情報に基づいて被ったいかなる損害についても、一切責任を負いかねます。
ページ上部へ戻る